訪問介護事業を成功させるための、必要な準備
概要
訪問介護事業の指定を受けるためには、人員基準、設備基準、運営基準と定められた指定基準を満たす必要があります。
また、居宅介護・重度訪問介護事業においても同様です。なお、訪問介護が介護保険法に基づくサービスであるのに対し、居宅介護・重度訪問介護事業は障害者自立支援法に基づくサービス事業で法律が異なります。
本文
訪問介護事業の人員・設備・運営基準
訪問介護事業の指定を受けるためには、人員・設備・運営基準を満たす必要があります。
①人員基準
人員基準として、指定されているのは次のとおりです。
・管理者(常勤)1人
・サービス提供責任者(常勤)1人以上
・訪問介護員(非常勤可)
管理者には介護福祉士などの資格要件はありませんが、「原則として専ら当該事業所の管理業務に従事」する人とあり、その役割についても「従業者に規定を遵守させるために必要な指揮命令を行う」など、果たすべき役割が示されています。
サービス提供責任者の役割は、訪問看護員(ホームヘルパー)のまとめ役で資格要件が定められています。
介護福祉士、実務者研修修了者、旧・介護職員基礎研修課程修了者、旧・ホームヘルパー1級課程修了者、3年以上介護等の業務に従事した介護職員初任者研修課程修了者(旧・ホームヘルパー2級課程修了者を含む)。このいずれかの資格が必要です。
訪問介護員(ホームヘルパー)については、介護職員初任者研修課程修了者(旧・ホームヘルパー2級課程修了者を含む)以上の資格が必要です。
そして、訪問介護員の人員は「常勤換算法」で2.5人以上の配置が必要とされています。
常勤換算の計算式は「常勤職員の人数+(非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間)」です。
例えば、常勤のヘルパーさんが2名、そのほかに非常勤のヘルパーさんが1名いるとしましょう。常勤のヘルパーさんが週5日、1日8時間働くとすると、常勤のヘルパーさんの1週間の労働時間は40時間になります。
非常勤のヘルパーさん1名の週の労働時間を20時間として、常勤換算の計算式にあてはめてみると、
「常勤職員の人数(2人)+(非常勤職員の勤務時間=20時間÷常勤職員が勤務すべき時間=40時間)=2.5」となり、常勤換算で2.5人ということになります。
②設備基準
デイサービスなどには「食堂及び機能訓練室は、それぞれ必要な広さを有するものとし、その合計した面積は、三平方メートルに利用定員を乗じて得た面積以上とすること」という基準がありますが、訪問介護事業については広さの基準などはありません。
しかし、通常の業務に必要なデスク、通信機器、利用者の記録ファイルを収納する書棚などは当然必要になります。また一室を必要とはしませんが、パーテーションで事業スペースを区切る、利用相談に訪れた方のプライバシー保護のため、相談スペースをパーテーションで区切るなどの配慮が求められています。
③運営基準
運営基準は多岐にわたります。まず示されているのは、訪問介護サービスの提供の開始に際しては、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他についてわかりやすく説明し、同意を得ること、とされています。
また、サービスを提供するに当たって、利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止のために、その目標を設定し、計画的に行うことなども明確に示されています。
人員、設備、運営の指定基準については、各自治体で「運営の手引き」類を作成しています。各自治体の担当窓口、あるいはインターネットで入手し、内容を確認するようにしてください。
居宅介護・重度訪問介護の指定基準
居宅介護・重度訪問介護事業は、ホームヘルパーなどが利用者の自宅を訪問し入浴・排泄・食事などの介護、調理・洗濯・掃除、家事や生活に関する相談・助言などを行うサービス事業です。
ただ、訪問介護が介護保険法に基づくサービスであるのに対し、居宅介護・重度訪問介護事業は、障害者自立支援法に基づくサービス事業です。つまり、根拠となる法律が異なります。
開業にあたっては居宅介護・重度訪問介護事業ともに訪問介護事業と同じく、法人格を取得していること、そして人員、設備、運営の指定基準を満たすことが必要です。
人員基準については、管理者(常勤)1人、サービス提供責任者(常勤)1人以上、訪問介護員は常勤換算で2.5人以上とされています。設備については訪問介護と同様と考えていいでしょう。
ただ、「人員基準の特例」があります。介護保険の訪問介護事業者が、障害者自立支援法の居宅介護と重度訪問介護事業を行う場合、介護保険法上の指定を受けていることをもって居宅介護と重度訪問介護の指定基準のうちの人員基準を満たすことになる、というものです。
居宅介護または重度訪問介護の指定取得を受けるのであれば、介護保険法の訪問介護の指定取得を受けておくと有利ということになります。
なお、居宅介護・重度訪問介護事業ともに実際に提供するサービスは訪問介護とほぼ同じ内容ですが、給付体系等に違いがあります。各自治体の「運営の手引き」類でよく確認しましょう。