訪問介護事業開業に必要な指定基準とは
概要
介護事業を失敗させないためには、収支を管理することが大切です。また、人材の定着を目指すための環境づくりも欠かせません。
事業として成功させるためのポイントを確認してみましょう。
本文
介護報酬の流れ
介護事業の継続のためには安定的な「収入」が必要です。そして、介護事業の収入は何かと言えば「介護報酬(介護給付費)」ということになります。
介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者または要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に対して支払われる報酬のことです。原則として、報酬の1割は利用者負担、9割は保険料と公費で賄う介護保険から支払われます。
介護報酬の額から利用者の自己負担分を除いた分(保険給付の分)は、サービス提供事業所が毎月、国保連合会(国民健康保険団体連合会)に請求します。
国保連合会とは、市区町村からの委託を受けて国保事業の目的を達成するために必要な事業を行うことを目的に設立された公法人です。
国保連合会はサービス提供事業所の請求を審査し、その後、国保連合会からサービス提供事業所へ介護報酬が支払われることになります。
ただ、請求から支払いまで通常2カ月かかり、介護事業の起業直後は大きな問題になります。この点もふくめ、以下、介護事業を失敗させないためのポイントを見てみましょう。
介護事業を失敗させないために
①開業資金
どんな事業でも、起業にあたって開業資金が潤沢であるにこしたことはありません。しかし、介護事業は特に開業資金が重要になります。というのも、介護事業の収入となる介護報酬は請求後、2カ月たって支払われるからです。
一般のお店の場合、お客さまが来店して商品を購入すれば、その時点で報酬、つまり、収入が得られます。お店の運営には家賃や光熱費、そして、人件費などがかかりますが、その支払いに充てる収入が開業と同時に得られるわけです。
ところが、介護事業の場合、介護報酬が入るまで2カ月間は無収入ということになります。介護事業も当然、家賃や光熱費、そして、人件費がかかります。そして、その経費は毎月、支払いが生じます。つまり、潤沢な開業資金が必要になるわけです。
②基準を満たす
介護事業は、人員・設備・運営について「基準」が定められています。比較的起業しやすいと言われる訪問介護(ホームヘルプサービス)においても、ヘルパーの資格を持った人を1事業所あたりに配置する人数、事務所の事務スペースや相談スペースの設置、感染症予防のための設備(洗面台など)の設置が指定されています。この基準を満たしていなければ、介護保険事業所として認められません。
③人材の確保・定着
介護業界は人手不足を指摘されて久しい業界です。人材募集においても大変ですが、事業を継続させるためには、いかに「採用したスタッフが辞めない職場」にするかが大切になります。
介護スタッフの離職は一般に「重労働であるのに収入が少ないこと」が大きな理由と考えられていますが、実は「職場の人間関係」や「事業所の理念や運営のあり方への不満」という理由のほうが多いとも言われています。
人手不足や給料については、事業者にとって早急に対応できる面、できない面がありますが、「職場の人間関係」や「事業所の理念や運営のあり方への不満」については、スタッフとコミュニケーションを図り、そのうえで対応策を講じることができるはずです。
人材の確保・定着は介護事業を失敗させないための大きなポイントです。
介護事業によくある失敗(管理者の育成)
介護事業の運営にあたっては、各事業所に「管理者」を1名配置することになっています。管理者の役割は「事業所の従業者及び業務の管理を、一元的に行い、従業者に規定を遵守させるために必要な指揮命令を行うこと」です。
管理者の役割は重要です。その介護事業所が利用者にとって魅力的な場所になるかどうか、その介護事業所で働くスタッフにとってやりがいのある職場になるかどうかは、管理者次第とも言えるのです。
管理者が自ら現場に出て指示を出すこともあると思いますが、管理者の主たる役割は事業所のマネジメントです。現場に出る際もこの点を十分意識する必要があります。
つまり、現場と適度な距離感を保つということです。このあたりがうまくいっていないと、管理者が現場の一員となってしまい、本来の役割であるマネジメントを果たすことが難しくなってしまいます。介護事業の失敗によく見られるケースです。
介護は、現場が大切であることは言うまでもありません。現場の介護スタッフを確保する、その育成に力を入れる、これは介護事業を成功させる上で非常に大切です。
しかし、管理者の育成もまた介護事業を成功させる上で欠かせません。この点を意識している事業所とそうではない事業所では、大きな違いが出てくるでしょう。
管理者の役割を十分に認識し、そのマネジメントスキルの向上を図ることが介護事業を成功させる大きな鍵になるのです。