介護会計を行う場合の処理手順
介護保険サービスにおいて、原則として消費税は非課税です。介護事業を行う上で知っておきたい、介護保険事業収入の消費税についてお話ししましょう。
<介護保険事業収入の消費税について>
介護保険サービスは原則として消費税は非課税です。その理由は、介護保険サービスが、社会政策的に課税は適当でないと判断されているからです。
そのため訪問介護や通所介護などの居宅サービス、特養や老健などの施設サービス、グループホームや複合型サービスなどの地域密着型サービスにおいては、消費税は非課税です。
指定居宅サービス事業者によって行われる居宅サービスで、非課税とされる一覧を見てみましょう。
●訪問系のサービス
訪問介護/訪問入浴介護/訪問看護/訪問リハビリテーション/定期巡回・随時対応型訪問介護看護/夜間対応型訪問介護
●通所系のサービス
通所介護/通所リハビリテーション/認知症対応型通所介護/域密着型通所介護
●短期入所系のサービス
短期入所生活介護/短期入所療養介護
●施設系のサービス
特定施設入居者生活介護/介護福祉施設サービス(特養)/介護保健施設サービス(老健)/認知症対応型共同生活介護/介護療養施設サービス
●複合系のサービス
小規模多機能型居宅介護
ただし、「利用者の選定に基づき特別に提供されるサービス」は「消費税の課税取引」となります。つまり、消費税が発生するということです。
例えば、介護保険サービスでは事業者がサービスを提供する区域が定められています。それゆえ、利用者が送迎区域外のデイサービスを選定し、そこに通いたいと望んだ場合、サービス提供のために必要となった交通費については、利用者が負担することになります。そして、この交通費には消費税がかかることになります。
あるいはショートステイで、利用者の希望によって特別な部屋や特別な食事などを提供した場合、通常のサービスを利用した場合の費用との差額部分が課税対象となります。
特別な居室、介護、食費、送迎、ぜいたく品などについては消費税の課税対象になるということです。
次に、いくつかのケースにおける消費税の取り扱いについて見てみましょう。
日常生活費に要する費用
ここで言う「日常生活に要する費用」は、国税庁の説明では「通所先又は入所先において、看護・介護の提供と同時にサービス事業者側から提供されることが一般に想定されるサービスであって、利用者もそのサービスを日常的に受けることを期待していると考えられるものに係る費用」となっています。
利用者の選択によらない食材費やおむつ代などがこれに該当し、非課税となります。
施設サービスにかかる消費税
介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)、介護保険施設サービス(介護老人保健施設)、介護施設サービス(介護療養型医療施設)に入所する要介護者に対して行われる施設サービスは、利用者の選定に特別なサービスを除き、消費税の非課税収入になります。
ただし、利用者の選定による特別な居室または療養室、病室や食事、趣味、ぜいたく品、私物のクリーニング代などは消費税の課税収入になります。
居宅介護支援、介護予防支援にかかる消費税の取り扱い
居宅介護支援、介護予防支援(ケアプランの作成等)に係る収入についても消費税は非課税とされています。しかし、要介護認定調査委託手数料や主治医の意見書作成料は、消費税の課税収入になります。
ファクタリング手数料について
介護サービス事業者は、利用者に介護サービスを提供した場合、介護報酬を国保連(国民健康保険団体連合会)に請求します。事業者にお金が入るまでには通常2カ月かかります。
しかし、その間にも購入した備品の支払い、事業所の家賃、スタッフの給料の支払いなどがあります。
ファクタリングサービスは、事業所が国保連へ請求する介護報酬(売掛債権)をファクタリング会社に譲渡することで、早期に現金を受け取ることができるサービスです。しかし、ここでファクタリングにともなう手数料が発生します(介護事業でのファクタリング手数料は月0.5%~3.0%と言われます)。
このファクタリングの手数料について消費税がかかるかどうかですが、結論を言えば、債権の買い取り手数料は消費税の非課税取引になります。
福祉用具貸与・購入にかかる消費税
福祉用具の貸与・購入は、特定の福祉用具について自己負担1~3割でレンタルもしくは購入できる介護保険サービスですが、これには消費税がかかります。
ただ、当該福祉用具が身体障害者用物品に該当する場合には、その福祉用具貸与や譲渡に係るものは、消費税の非課税取引となります。
介護事業を安定的に運営するためには経理が大事になりますが、その法人が分類される会計基準に基づいて会計処理を行わなければなりません。
今回お話しした消費税についてもそうですが、介護事業の経理は一般業種にくらべると手間がかかります。介護事業に通じた専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。