デイサービス開業に必要な準備から手続きまで
介護会計では「会計の区分」として、各事業所、部門、事業サービスの内容ごとに収支状況を明らかにすることが求められます。
そのため、すべての収支を勘定科目、補助科目を使ってきちんと仕訳するとともに、共通費については合理的な基準・比率で按分することが必要となります。
介護会計の処理の手順
介護会計の処理の手順
前回は介護会計の基本知識について紹介しました。今回は、実際に介護会計処理を行う際の手順や注意すべきポイントについて解説します。
介護会計では事業所や部門ごとに収支を仕訳する必要があります。どの事業所、部門のものか区分が難しい分については、介護サービスごとに部門を設定した上で部門共通費などの科目でいったん処理を行い、合理的な按分基準でそれぞれの部門に振り分けます。
また、介護保険利用者の料金についても、国保連に請求する分と利用者に請求する分をきちんと管理し、回収状況を記録する必要があります。
そのため、たとえ規模が小さな事業者でも、日常のお金の流れは部門ごとに会計ソフトなどに入力する必要があります。居宅介護支援と障害者総合支援を併設している居宅介護事業所などの場合は、サービスごとの区分けも行わなければなりません。
売上・入金の処理手順
通所介護や訪問介護事業の場合、売上は入金時ではなくサービスの提供日(月)に計上します。ほとんどの介護事業者は営利法人なので、科目は売掛金・売上でよいでしょう。前述のように、サービスの内容や部門ごと、国保連請求分と利用者請求分ごとに仕訳を行います。また、介護報酬の入金は発生月より2カ月遅れとなり、入金の際には返戻も生じるので注意してください。
一方、利用者からの回収は口座振替が中心ですが、一部現金回収になって小口現金が生じた場合も、必ず入金記録をつけてください。小口現金出納帳に入金日・入金額・入金相手などを入力して、あわせて預金口座への入金も忘れないようにしましょう。
共通費は按分比率に基づいて処理
介護事業所を運営していると、どの部門で発生したのか明確に決められない経費が生じます。
訪問介護を専門に行うヘルパーの給料は、明らかにその訪問介護を提供している事業所、部門の経費です。しかし、各部門を統括する経営者の賃金や、共用している施設・設備の経費などは、複数の事業所、部門にまたがっているので容易に区別できません。
こうした場合は、「共通費」など分かりやすい項目で処理した上で、科目ごとに決定した合理的な按分基準・比率によって振り分ける必要があります。
按分基準には、建物床面積割合や使用割合などがあり、最も多いのは延利用者数割合です。
厚生労働省の「介護保険の給付対象事業における会計の区分について」で例示されているものを使用するほか、各事業者の事情を考慮した合理的な基準・比率を決定することもできます。
ただし、どの事業所、部門で発生したのか明らかな費用については共通費にはせずに、補助科目を設定して忘れず記帳してください。
自費部分との区分を明確にする
介護サービス事業所のなかには、介護保険の受給対象ではないサービス、いわゆる自費サービスを提供しているケースがあります。こうした場合、介護保険の対象外の事業については「その他の事業」として、介護保険受給のサービスと明確に区分けして会計処理を行う必要があります。
多くの会計ソフトは、勘定科目ごとに補助科目を設定できるので、明らかに自費(その他の事業)で発生した金額だとわかる補助科目名で入力してください。
一方、介護保険事業によって発生した費用については、明らかにどの介護事業サービスから発生したのかがわかっている場合は、費用ごとに補助科目を設定して、こまめに入力しておくことをおすすめします。
補助科目の設定を確認しよう
決算期を迎えると、損益計算書などの決算書類を作成する必要があります。
作成の手順は通常の企業と同様です。ただし、決算整理仕訳は介護会計の「会計の区分」に関わってくるので、勘定科目の補助科目が正しく設定されているかどうかを確認する必要があります。
確認するためには、各費用の補助科目別の残高を会計ソフトから抽出します。その上で、エクセルで介護保険の給付対象事業ごとに残高を集計・計算してください。一般的な業務用の会計ソフトは、エクセルなどにデータ出力できるものがほとんどです。
各費用の共通費は、あらかじめ設定した共通費の按分基準・比率に従って振り分けます。費用項目によって按分基準は異なるとは思いますが、介護保険の給付対象事業では「延利用者数割合」が、多くの費用で合理的な按分基準とされています。
そのため、できるだけ多くの共通費を、延利用者数割合に基づいて按分することで、作業を効率化することが可能です。延利用者数割合は、国保連に対する介護の実績データを確認すればすぐにわかるので、チェックしてみてください。
介護会計では、上記のように各事業所、部門ごとに収支状況を明らかにすることを求めています。部門ごとに収支、損益を按分するのは実際にはかなり手間が必要で、また、どのように按分を行ったのか記録しておくことが求められています。
こうした要求をクリアするためには、事業、サービスの種類ごとの介護報酬の発生額と、その回収状況に関する資料をしっかりと整理しておくこと、必要な場合にその資料を提供できるように整えておくことが大切です。