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猪野由紀夫

介護福祉事業の利益拡大を応援する経営コンサルタント

猪野由紀夫(いのゆきお) / 税理士

DCC株式会社

コラム

介護事業を始めるときに必要な指定基準ってなに?

2019年8月28日 公開 / 2020年1月22日更新

テーマ:介護

コラムカテゴリ:ビジネス

介護事業を開業するためには、サービスの種類ごとに定められた「指定基準」を満たしている必要があります。
事業に必要な人員数と資格を定めた「人員基準」と、事業所や施設の広さ、設備・備品などについて定めた「設備基準」の2つの基準があり、両方を満たしていなければ事業者指定の申請が行えません。

指定基準とは?


介護事業を開業するためには、法人として登記が完了していることに加えて、決められた指定基準を満たしていることが必要です。

基準は介護サービスの種類によって異なり、指定基準を満たして初めて、事業者指定の申請が可能になります。

指定基準には、必要な人員数と資格を定めた「人員基準」と、必要な事業所や施設の広さ、設備・備品などを定めた「設備基準」の2つがあります。

こうした基準は、申請時に満たしていればよいというわけではありません。指定を受けて事業を開始した後でも、基準に満たない内容があれば指定を取り消されてしまいます。また、指定基準に違反すると、行政処分を受けることもあります。

指定基準を満たすだけでなく、その基準を維持できるかどうか客観的に判断することが大切です。


サービス種類別人員基準 
通所介護、訪問介護、訪問看護のそれぞれについて、人員基準を見てみましょう。

【通所介護サービスの人員基準】
通所介護サービスを開業するためには、下記の人員が必要です。
1.管理者/常勤1名
資格は特に必要ありません。2.生活相談員〜5.介護職員との兼務が可能です。

2.生活相談員/常勤1名以上
社会福祉士、社会福祉主事、精神保健福祉士のいずれかの資格を保有している必要があります。生活相談員か介護職員のうち1名が常勤でなければなりません。

3.機能訓練指導員/常勤1名以上
看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格が必要です。同じ事業所の他の職種との兼務が可能です。

4.看護職員/1名以上
施設の利用定員が10名を超える場合は、サービスの提供時間帯に事業所と密接かつ適切に連携が取れる人が1名以上必要です。利用定員が10名以下の場合は、専従の看護職員か介護職員のいずれか1名以上が必要です。なお、生活相談員、看護職員、介護職員のうち1名は常勤であることが必要です。

5.介護職員 /1名以上
施設の利用定員が15人以下の場合は1名以上、16人以上の場合は15人を超えた分の人数を5で割った数に1を加えた人数が必要です。

【訪問介護サービスの人員基準】
訪問介護サービスを開業するためには下記の人員が必要です。
1.管理者/常勤1名
業務に支障のない場合に限り、同じ事業所内の他の職務、または同一敷地内の他の事業所の職務との兼務が可能です。

2.訪問介護員/常勤換算で2.5人以上※
次のいずれかの資格を保有していることが必要です。
介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者、旧介護職員基礎研修課程修了者、旧ホームヘルパー1級課程修了者、旧ホームヘルパー2級課程修了者、看護師・准看護師
※常勤換算は「勤務延べ時間数」÷「常勤従事者の勤務時間数」で算出できます。

3.サービス提供責任者/常勤1名以上
次のいずれかの資格を保有していることが必要です。
介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修課程修了者、旧ホームヘルパー1級課程修了者、実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級課程修了者)

常勤職員で訪問介護業務に専門的に従事する者のうち、1名以上をサービス提供責任者として配置しなければなりません。

ただし、前3カ月間の平均利用者数(新規事業所の場合は推定数)が40人を超えるごとに1人以上追加、配置する必要があります。なお、実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者、またはホームヘルパー2級課程修了者が責任者となった場合は減算になります。

【訪問看護サービスの人的基準】
訪問看護事業には、医療機関以外が運営する訪問看護ステーションと医療機関による訪問看護の2種類があり、基準が異なります。

□訪問看護ステーションの場合
1.保健士または看護士の管理者/常勤1名
看護士、保健士との兼務が可能です。

2.保健師、看護師または准看護師/常勤換算で2.5名以上
1名以上は常勤でなければなりません。

□医療機関の場合
保健師、看護師、准看護師などを適当人数配置する必要があります。


サービス種類別設備基準
設置基準では用途に適した設備の広さのほか、消火設備についても施設にあったものを備えることが定められています。

【通所介護サービスの設備基準】
・食堂、機能訓練を行う場所
食事を行う場所と機能訓練を行う場所は兼用可能ですが、合計面積が利用者1人あたり3㎡以上であることが条件です。 


・相談室
プライバシー保護のため個室にするか、パーテーションで仕切る必要があります。

・事務室
広さの規定はないものの、他の部屋の一画ではなく専用区画が必要です(パーテーションによる仕切りでも可)。

・静養室
専用のベッドを設置します。

・トイレ
車いすで使用できる広さを確保して複数設置します。

・浴室
サービスで使用する場合は設置が必要です。

上記のほか、機能訓練のための器具、緊急時呼び出しボタン、送迎車なども必要です。

【訪問介護サービスの設置基準】
・事務室
職員、設備備品が収容できる広さを確保した専用の区画が必要です(パーテーションによる仕切りでも可)。

・相談室
プライバシー保護のため個室にするか、パーテーションで仕切る必要があります。

上記のほか、事務機器、感染症予防用の毒液、鍵付き金庫・書庫、会議室、専用自動車なども必要です。

【訪問看護サービスの設置基準】
□訪問看護ステーションの場合
・事務室
事業の運営に必要な広さの事務室を設け、設備および備品を備えなければなりません。ただし、同一敷地内に関連の事業所、施設などがある場合は、必要な広さの専用区画を設けるのみでも可です。

□医療機関の場合
・専用区画
事業の運営に必要な広さの区画を設け、設備および備品を備えなければなりません。

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