網戸の網の色

先日、あるシニア向けイベントで、
一人の男性が披露してくださった五行歌に心を動かされました。
終活の
文箱の底の
ラブレター
そっとそのまま
仕舞けり
五行歌とは、五行で自由に思いを表現する短詩です。
文字数や季語の制約がなく、
その人の想いや人生の一場面が、静かに映し出されます。
この作品を聞いたとき、
私はその情景が自然と目に浮かびました。
終活のために文箱を開けた男性。
整理を進める中で、
ふと手にした一通の古いラブレター。
そこに書かれていた言葉を読んだのか、
読まなかったのかは分かりません。
けれど、その瞬間、
その方が見つけたのは一通の手紙ではなく、
かつて誰かを想っていた自分自身だったのかもしれません。
若かった頃の気持ち。
誰かを大切に思っていた時間。
その頃の空気や表情。
一枚の紙が、人生のある季節を静かに呼び戻した。
そして、その男性は
大きく感傷に浸るでもなく、誰かに語るでもなく、
「そっとそのまま仕舞けり」という選択をされた。
私はこの結びに、とても深いものを感じました。
シニア世代の片づけでは、
こうした場面にたびたび出会います。
整理しているようで、
実は人生の風景をたどっている。
家の中にあるものは、単なる所有物ではなく、
その人が歩いてきた時間の断片なのだと感じる瞬間があります。
だから、急いで捨てなくていい。
残すことにも意味があり、語らないことにも意味がある。
その人だけが知っている大切な記憶を、静かに胸の中へ戻していく。
それもまた、終活のひとつの形なのだと思います。
子世代の皆さんにも、ぜひ知っていただきたいことがあります。
親世代が手放せないものの中には、
単なる思い出ではなく、
その人自身の歴史や生きてきた証が宿っていることがあります。
「なぜ取っておくの?」ではなく、「どんな思いがあるの?」
そんな問いかけから始まる片づけもあるのではないでしょうか。
暮らしを整えることと、その人の人生を尊重すること。
その両方を大切にしていきたいと思います。
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