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大地震から家族を守る耐震住宅のすすめ~耐震・制震・免震

谷野行範

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テーマ:地震に備えた安心の耐震住宅

地震で被害の大きい建物はどんなものでしょう

1、軟弱な地盤の上に建設された家
2、重い屋根(瓦屋根など)
3、耐力壁のバランスの悪い配置、南面などに大きな窓や出入口がある家
4、水平剛性(床面の強度)が悪い家
5、凹凸がある家
6、1階と2階の乗りのバランスの悪い家

では地震に強くするには、これらの逆をすればよいことになります。

1、軟弱な地盤:地盤調査結果を基に、住宅用杭や地盤改良をする。
2、重い屋根(瓦屋根など):軽い屋根材を使う(台風被害を考慮)
3、耐力壁のバランスの悪い配置、南面などに大きな窓や出入口がある家:
耐力壁のバランス良い配置(現行の耐震基準で計算されます)
4、水平剛性(床面の強度)が悪い家:従来の根太工法ではなく、構造用合板で床面を固める。
5、凹凸がある家:凹凸をなくす。
6、1階と2階の乗りのバランスの悪い家:1階と2階の乗りのバランスをよくする又は同一壁面の位置とする。
7、床面積に対する、耐震壁量の割合を多くする。

これらは、現行の耐震基準の範囲内で行える、耐震性能を高める方法です。
最低基準の範囲内で行える方法と、部材の変更や耐震壁の増加のため費用の掛かる部分も含まれます。

免震について

今まで地震に対しての、「耐震」について記述しました。
「耐震」とは、地震力に対して建物が「頑張る!」、人が両手足を一杯に伸ばして、家具などを支えてる姿に似ています。

「免震」とは、地面に伝わる地震の力を、建物に伝えないようにする工法です。工法といっても、目新しい考え方ではなく古来から日本の建築に使われてきた方法なのです。

古い木造建築物は今のような、鉄筋の入ったコンクリートの基礎ではなく、長石を敷いて、直接柱を長石に立て柱相互を根がらみ貫と呼ばれる板材で柱がずれないようにしていました。
地震が来たら、基礎となる長石と柱は元の位置からずれます、しかし建物と長石が固定されていないため、地震力はすべて建物に伝わることなく、被害が少なくて済みます。
京都の古い門構えの柱の下には、玉石が基礎として使われ、調査により江戸時代の地震により、柱がずれているとの調査結果があります。

私見ですが、今の耐震設計基準は、どんどん建物を固める方向にあり、その根底には設計者を含め棟梁と呼ばれる職人さんの技量不足、ハウスメーカー主導の建て方と量産化、商品化により、極論すれば新人でも平均化して建てられる方法に変わってきたことも一因と考えます。

次に“制震”とは

地震の力を制御する、大規模地震を中規模地震までに地震力を減衰する工法です。
地震の力を吸収し揺れを軽減する装置を付けることです。
最近の公共ビル建築の基礎と構造部に取り付けることが多くなりました。
高松市内のNTTドコモビルには、高減衰ゴムと鋼板を何層にも積み重ねて、地震の横揺れを減衰する方法をとっています。

制震工法を大別すると、高減衰ゴムを使用するものと、オイルダンパを使用するものに分かれます。

高減衰ゴムを使用するタイプは、高減衰ゴムを鋼板でサンドイッチにした金物を、柱と土台や柱と梁、桁に直角に取り付け、高減衰ゴムの伸縮により地震エネルギーを
熱エネルギーに変えて(2~5割の変形を削減)、建物変形時の損傷を軽減するものです。(資料:フクビ化学工業株式会社:REQダンパー)

オイルダンパを使用するタイプは、装置内のオイルが内部の小孔を通過する際の抵抗力が“減衰力”として働き、地震時の横揺れのエネルギーを吸収し、被害を最小限に
抑えることができます。原理としては自動車のショオックアブソバーと同じと思われます。またこの装置は住宅のみならず、700系新幹線「のぞみ」や大規模ビル、国宝の仏像の下部の台座にも使用されています。
(資料:日立の制震システム、減振くん(株)ハウステック)

免震工法、制震工法それぞれに特徴やメリット、デメリットがあります。
・免震工法
メリット  :地震時の横揺れを建物にほとんど伝えることがない。
デメリット :地震時に建物や地面が揺れるため、建物の周囲に、横揺れを阻害しない遊びの部分が必要、そのため建物本体とエアコン室外機や給湯器の設置に配慮が必要。
        装置の金額が高額となる。
・制震工法
メリット  :免震工法に比べて、少ない予算で設置が可能。
        通常の木造軸組工法の耐力壁の間に設置ができる。
        特別な技量は必要ない。
デメリット :免震工法ほどの、地震力の減衰は望めない。
        しかし、建物の層間変異が45%ほど削減されるので、建物の損傷が
        かなり軽減されます(大規模地震に対して)
まとめ

1、建設地や地盤面、地中の土質などを調査して、適切な基礎の工法や処置を
行うこと。

2、「木造住宅の耐震対策」を基に、耐震性能を高めるプランや屋根などの使用
する材料を選択すること。

3、限られた予算の中でも、制震金物を使用して、地震被害を最小限に留める
対策を講じること。

上記のことを念頭に置かれて、建築計画をされることが必要だと思います。

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谷野行範
専門家

谷野行範(一級建築士)

有限会社 谷野設計

設計士の中でも特殊な知識が必要な古民家の専門家。住環境や施工の状況までトータル的な知識を持つ。家づくりに関するあらゆる質問に応え、住まう人にとってのベストな解決策を提示。

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