【妊娠力を上げたい方へ】不妊に悩む方におすすめの漢方処方は?
不妊というと、女性の不妊症に注目しがちですが、約半数は男性に原因があることがWHOの調査でわかっています。
男性不妊も、女性と同様に西洋医学的な治療と漢方処方による改善が可能です。
今回は男性不妊に一般的におすすめできる漢方処方について主にお伝えします。
不妊というと、女性の不妊症に注目しがちですが、男性の原因によって子どもができないケースも少なくありません。
世界保健機関(WHO)の調査によると、女性のみが原因の場合は不妊全体の41%で、24%は男性のみ、24%は男女両方に原因があるというデータがあります。
つまり不妊のうち、約半数にあたる48%は男性に原因があると言えます。
男性も加齢により精子の質が下がる
女性の妊娠力のピークは21~35歳と言われ、ピークを過ぎると加齢を重ねるほど妊娠力が衰えます。
一方、男性も35歳くらいから精子の質が低下し、妊娠が成立しにくくなることがわかってきました。
妊娠力の衰え方は、男性と女性とは少し違い、女性は40歳を過ぎたあたりから閉経に向けて急速に妊娠しにくくなります。
一方で男性は、年齢とともに緩やかに精子の質が衰える傾向にあります。
男性不妊の一般的な原因とメカニズム
女性の不妊の原因に様々あるように、男性不妊の原因にも様々あることがわかっています。
漢方処方の話をする前に、男性不妊の主な原因についてお伝えします。
造精機能障害
造精機能障害とは、精子を製造する能力に問題がある場合のこと指します。
具体的には精子の数が少ない、精子がない、もしくは運動性が低い状態で、2016年に公表された全国調査の結果では、82.4%が造精機能障害によるものです。
造精機能障害は原因がはっきりしないことも多いですが、原因がはっきりしているもので一番多いのが精索静脈瘤というものです。
これは、精巣のまわりに静脈のこぶ(静脈瘤)ができたもので、精巣の周囲に血液がうっ滞することで精巣温度が上昇します。
精子は熱に弱いので、精巣温度の上昇は精子数の減少や運動機能の低下のもととなってしまいます。
精索静脈瘤は、症状がひどくなると陰嚢部の重圧感や不快などの自覚症状がありますが、多くはこのような目立った自覚症状がありません。
そのため、子どもを授かることができないといった状態で初めて精索静脈瘤に気づくことがあります。
他に造精機能障害の原因として考えられるのは、染色体・遺伝子異常(クラインフェルター症候群等)、薬剤性、停留精巣などがありますが、割合としては精索静脈瘤の1/4程度です。
精路通過障害
精子が通れない、出てこない精路通過障害は、男性不妊の3.9%程度で、造精機能障害に比べると少ないケースです。
精路通過障害は、精子がペニスの先端まで通るための道が途中で詰まり、射精しても精子が排出しない状態です。
精巣上体炎など、過去の炎症が原因で詰まっているような場合があります。
性機能障害
勃起障害(ED)、膣内射精障害など、セックスで射精できない、いわゆるセックスレスの状態で、男性不妊の13.5%程度ですが、年々増加傾向にあります。
割合としてはまだ少ないですが、結婚年齢の上昇やセックスレス夫婦の増加で、今後も増え続けることが考えられ、男性不妊でも身近な問題となるでしょう。
一般的にはストレスや妊娠に対するプレッシャーなどが原因と考えられますが、糖尿病などの生活習慣病が原因となることもあります。
そのため、喫煙や体重管理など健康管理を疎かにしていると性機能障害のリスクが増えます。
紅蔘(コウジン)と男性不妊の改善に関する研究
男性不妊の改善といえば、様々な研究結果によって、紅蔘(コウジン)が男性不妊の改善をサポートする役割を持つことがわかっています。
紅蔘は高麗人参の一種なので、様々な使われ方をしますが、先に書いた造精機能障害や性機能障害の改善にもおすすめできます。
煎じ薬の「独蔘湯(どくじんとう)」やエキスタイプ、錠剤や丸剤、ドリンク剤など様々なタイプがあります。
紅蔘(コウジン)は最も優れた高麗人参
高麗人参は漢方の王様と呼ばれ、人参湯、十全大補湯、補中益気湯、柴胡加竜骨牡蠣湯など多くの漢方薬に配合されています。
漢方薬に詳しくない方でも、高麗人参の名前は一度聞いたことがあるのではないでしょうか?
高麗人参は、加工方法によって人参の有効成分の量が変化し、呼び名も変わってきます。
また6年間栽培したものが、成分が安定して充実した良品と言われています。
大きく分けると紅参、白参、水参に分けられますが、このなかでも紅参は蒸してから、水分量が14%以下になるまで乾燥させたものです。
白参、水参に比べても健康増進効果が高く、最も優れた高麗人参とされており、効能範囲も多岐に渡ります。
しかし、高価な上に生活習慣病一般にも大変効果的なために2000年頃から健康保険ではほぼ使えなくなっており、自費での服用をしないといけなくなりました。
造精機能障害にも良いという研究結果
先にお伝えしたように、男性不妊の80%以上は、精子数の減少(もしくは無精子)や、運動性の低下などの造精機能障害です。
1977年に日本の研究によって、紅参は精子数を増やすことが示されて以降、様々な研究がされています。
今では精子数の増加だけではなく、運動性の改善にも紅参は役に立つという研究結果が出ています。
糖尿病患者の性機能障害にも良いという研究結果
EDなどの性機能障害は、心理的なストレスや、糖尿病などの生活習慣病の影響を受けることがわかっています。
紅参は、糖尿病の改善にも使われますが、その相乗効果として性機能障害の改善も期待できます。
男性不妊におすすめの漢方処方
その他、男性不妊の対策におすすめできる漢方処方について、代表的な処方をお伝えします。
ここに挙げた漢方処方以外にも様々あり、症状や体質によって選ぶ漢方薬は変わってきます。
補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
・術後や長期療養後などの体力回復
・疲れやすい、食欲不振
・無気力で四肢がだるい
・食後眠くなる
・息切れがする
・体力がない人の寝汗や不眠
・慢性化した下痢、胃下垂、脱肛
・不正出血
・排尿困難
・EDなどの男性不妊
・泌尿器、生殖器系の疾患
・微熱、めまい、特に空腹時のめまい、立ちくらみや頭痛
元気がなく疲れているとき、術後や長期療養による衰弱のときに処方される補中益気湯は、男性不妊に対しても処方され、貧血症状や皮膚乾燥が無い場合に使います。
十全大補湯
・顔色が悪い、貧血がある
・皮膚が乾燥する
・病後の体力低下、全身倦怠感、食欲不振
・寝汗、手足の冷え
十全大補湯は、補中益気湯よりもさらに体力が落ちている方に使います。
桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
・不眠や疲労で、性的不定愁訴を伴う
・小児の夜泣き
・夜尿症
・インポテンツ、ED
・脱毛、フケ症
かなり幅広い適応があり、処方意図の判断は難しいですが、青年期以降はインポテンツや脱毛などに適応されます。
長期利用の場合は、甘草の副作用に注意が必要です。
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
・ストレスなどで引き起こされた精神症状(不安、不眠、動悸、多汗症、異常な興奮など)
・小児の夜泣き
・てんかん
・高血圧
・動脈硬化
・腎疾患
・インポテンツ
精神的な疲労やストレスが顕著なときに処方されることが多く、「漢方の精神安定剤」とも呼ばれます。
清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
・胃腸の弱い人の頻尿、膀胱炎、残尿感
・尿の濁り
・糖尿病
・口の渇き
・インポテンツ・陰萎
一般的には泌尿器・生殖器系の疾患に用いられ、不眠や不安など自律神経系の失調に利用されることもあります。
腎の働きが低下すると、インポテンツや遺精(夢精など射精せずに精液が漏れる)が起きるようになります。
甘草を含むので、長期利用時の副作用は注意が必要です。
八味地黄丸
・高齢者の喘息、夜間頻尿、疼痛、かゆみ、倦怠感
・腰痛、腰のしびれ
・排尿困難、尿漏れ
・口の渇き
・陰萎(ED等)
腎の働きが低下することによる陰萎を改善するために使われることがあります。
亜鉛を中心とした栄養素の補充
セックスミネラルとも呼ばれる亜鉛は、全身の細胞分裂や核酸代謝、500以上もの多くの酵素の補因子として重要なミネラルです。そのため、赤血球や眼、中枢神経系、骨、筋肉など体中の多くの臓器で貯蔵され、使われています。
亜鉛は、タンパク合成のスタートキーとなる酵素ポリメラーゼの活性中心であるため、細胞分裂の盛んな骨髄、前立腺、精巣に必要なミネラルです。
ところが、良いと言うと単独亜鉛だけを格安に摂取したくなるものですが、亜鉛のみを単独に摂取すると、他の金属ミネラルと吸収拮抗してしまい、鉄不足では貧血、カルシウム不足など予期せぬ副症状を起こしかねません。
亜鉛摂取をする場合は、なるべく自然に近く他の微量栄養素も含む摂取方法をおすすめしています。
こんな方には、亜鉛を中心とした栄養素補充がおススメです
・疲れやすい
・酒をよく飲む、二日酔いしやすい
・熟睡感がない
・高血糖である。癌家系である。
・花粉症、鼻炎などアレルギー疾患がある
・胃潰瘍、リウマチの持病がある
・口内炎がでやすい。味覚障害が出やすい。
・肌が荒れやすい、ひげそり負けしやすい、髪が乾燥しやすい、傷が治りにくい
・ストレスを感じやすい。ストレスの多い職場にいる
・などなど
男性不妊の日常生活のセルフケア
男性不妊予防、改善をするうえで、日常生活では以下のことに気を付けるようにしましょう。
特に飲酒、喫煙、睡眠不足、食生活の悪習慣や心理的ストレスは他の病気も引き起こすので注意するようにしましょう。
長時間の熱い風呂、サウナは控える
生殖器の体温管理という点では、女性の場合は下腹部を温めた方がいいのですが、男性の場合はむしろ逆で、精子は熱に弱いので温めすぎないほうがいいです。
もちろん、冷やしすぎる必要はないのですが、熱い風呂やサウナに長時間入りすぎないようにしましょう。
また、下着もブリーフなどよりは通気性の良いトランクスが望ましいでしょう。
禁煙する
喫煙者は、非喫煙者に比べて精子量が少なく、異常な形の精子の出現など生殖活動に有害という結果が多く報告されています。
受動喫煙と不妊との関係も指摘する研究結果があり、女性の妊娠力にも影響を与える可能性があります。
過度の飲酒を避ける
過度の飲酒は、余計な水分が体内に溜まり精子の活動が低下したり、アルコールの分解で生成するアセトアルデヒドで精子を作る力を妨げたりしてしまいます。
また、生殖能力に影響する亜鉛の体内消費を増やすともいわれます。
長時間の座り仕事、自転車やバイクの運転を避ける
長時間の座り仕事や、自転車やバイクの運転は、陰部の圧力による血流の阻害や精子温度の上昇に繋がりやすいと言われています。
肥満
脂肪細胞から分泌される女性ホルモン様物質は、男性ホルモンの働きを弱めてしまい生殖活動に悪影響が出る可能性があります。デスクワークが中心の方は、適度な運動を取り入れ、肥満防止に気を付けましょう。
ストレス解消と良質の睡眠
睡眠不足や質の悪い睡眠、過度のストレスは、精子の量や運動量の低下、もしくはセックスレスを引き起こしやすくなります。
睡眠時間や休日を確保し、ストレスを受けないような生活を心がけるようにしましょう。
【まとめ】女性だけでなく男性不妊の対策も
以上、今回は男性不妊の一般的な原因とメカニズム、漢方処方についてお伝えしました。
冒頭でお伝えした通り、不妊の原因は女性とは限らず、約半数は男性も不妊に関係していることがWHOの調査でわかっています。
女性不妊同様、男性不妊も西洋医学的な治療や、漢方処方によって改善する方法があります。
また、生活習慣病の予防に繋がる日頃の生活習慣の改善が、男性不妊の予防にも繋がることもあります。
日々の健康に関心を持つことが、男性不妊の予防に繋がるといってもいいでしょう。
男性不妊の漢方処方については、症状や年齢、体力など、人によって適正な処方は異なりますので、詳しいことはご相談ください。