生産現場や技術者のもとに眠る情報を、品質向上につなげる「宝の山」に（2/3）

工場の歩留まり改善の経験をもとに、農業など幅広い分野への応用を目指す

　山中さんは、大手電機メーカーで産業用ロボットを制御するソフトウエア開発に従事。その後転職し、家電や液晶パネル工場の生産管理部門で、業務の自動化や歩留まり改善、工場の立ち上げなどに携わりました。

　「AIの精度を高めるディープラーニング（深層学習）をはじめ、常に先端技術を取り入れ、生産現場に効率化・省力化をもたらしてきたという自負があります。例えば、液晶パネルの歩留まりは、開発当初の1割程度から今では9割以上に向上。技術者や生産現場の方々から『データ解析のおかげ』と言っていただけたのはうれしかったですね」

　一方で、「データがたまるまで時間がかかり、効果も見通せない」とためらう声も多いとか。
　「会社員時代にお世話になったある工場長が『投資回収は後からついてくるから、先に宝の山を作ろう。市場に不良品を出さないことが重要』と声を掛けてくれたことは今でも心に残っています。また、試作段階でデータベース構築を進めた現場からは『最初に解析したかいがあって量産時に不良が大量に出なかった』と感謝されたことも。データには生産現場の課題解決をかなえる大きな力があると知ってほしいですね」

　今後は幅広い分野で応用したいと意欲を見せます。
　「農業分野で、気候や日照など栽培条件のビックデータを活用して、生産性を高める取り組みは、製造業と同じです。例えば、規格外の野菜をAIに画像認識させ栽培管理に生かしたり、糖度の高い果物が収穫できる要件を数式で表したり、さまざまな場面に適用できます」

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