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はじめに
ぎっくり腰に対する鍼灸治療は、レッドフラグがないぎっくり腰症においてたいへん有効です。つまり神経や骨に異常がなくていわゆる筋違い的な腰痛ということです。
腰椎椎間板ヘルニアの急性期では鋭くて激しい痛みが足に走ります。また高齢者に多い胸腰椎圧迫骨折は転んだりけがしたりと原因がはっきりしていることが多いので、こう言った病気は除いてお話を続けます。
ぎっくり腰は筋肉や筋膜に原因があることが多く、鍼灸によって緊張した筋肉を和らげ、血行を促進し、痛みを軽減することが期待できます。以下のようなアプローチが有効です。
鍼灸治療のアプローチ
痛みのある筋肉とトリガーポイントへのアプローチ
痛みの原因となる筋肉や筋膜のトリガーポイントに鍼を刺入することで、緊張を緩和させ、痛みを軽減します。特に腰部の筋肉(脊柱起立筋や多裂筋、腰方形筋)をターゲットにすることが多いです。
経穴(ツボ)への刺激
腰痛に効果的な経穴として、腰眼(ようがん)、志室(ししつ)、腎兪(じんゆ)、大腸兪(だいちょうゆ)などが挙げられます。これらのツボは痛みの緩和と、気血の巡りを改善する効果があるとされています。
温灸や温熱療法
ぎっくり腰の場合、炎症が落ち着いた後に温灸や温熱療法を併用することで、さらに血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。
リラクゼーションとストレッチ指導
鍼灸治療と並行して、腰部を支える筋肉を保護し、再発を防ぐためにストレッチや姿勢改善の指導も効果的です。
ぎっくり腰の原因
ぎっくり腰において筋筋膜性の要因がある場合、腰部の特定の筋肉が原因となることが多く、また心理的要因や他部位との連動も重要です。追加条件を踏まえ、詳細に解説します。
腰部のぎっくり腰を引き起こす筋肉
ぎっくり腰の主な原因筋には、脊柱起立筋群(腸肋筋、最長筋など)、多裂筋、腰方形筋、大殿筋、大腿筋膜張筋が挙げられます。これらの筋肉は腰部の支持や動作に重要な役割を果たし、急な動きや姿勢不良、無理な体勢などによって過度に緊張し、筋筋膜性の腰痛を引き起こすことがあります。
ストレスとぎっくり腰発症の関係
ストレスは筋緊張と血行不良を引き起こし、痛みの発生に寄与します。心理的ストレスにより、自律神経が乱れ交感神経が優位になることで、筋肉が緊張しやすくなり、特に腰部などストレスを受けやすい部位に痛みが現れやすくなります。また、ストレスが蓄積することで、腰痛の再発や慢性化のリスクも高まります。
その他の原因
年始明けにぎっくり腰を起こす人が少なからずいます。暴飲暴食が原因です。東洋医学では脾胃の弱りが原因と考えます。
夏の冷房、冬の寒冷、季節の変わり目の防寒不足など、冷えが原因のぎっくり腰は一定数あります。庭作業後汗をかいたので冷房をガンガンにかけて涼んでからシャワーを浴びて体をふいていたらぎっくり腰になったという人もいます。また、冷房の効いた部屋でアイスを食べて連日の疲れをいやしていたら起こったという人もいます。
鍼灸治療がぎっくり腰に効く理由
患部への治療として、コリやこわばりを柔らかくし血行を改善するからとすでにお話ししました。
腰への治療だけでなく離れたところにも治療をすることができます。
頭皮鍼と疼痛閾値の変化の関係
頭皮鍼(スカルプ鍼)は、脳に近い頭部に針を刺すことで痛覚調節や自律神経の調整を図る手法です。研究によると、頭皮鍼は疼痛閾値の向上に寄与し、痛みの感じ方を鈍化させる効果があるとされています。特に、腰痛に対して頭皮鍼を施すことで、脳の痛みの認識が変わり、痛みの軽減を促すとされています。
腰部と頭部の関係-アナトミー・トレイン-
アナトミー・トレインの理論に基づくと、腰部と頭部は浅後線(Superficial Back Line)とか背側線(Posterior Back Line)といわれるラインでつながっています。背側線は足の裏からアキレス腱、ふくらはぎ、ハムストリングス、仙骨、脊柱を経て、頭部の後頭骨に至るラインです。このライン上で筋膜が連結しており、腰部の筋緊張や歪みが頭部の緊張へと波及することがあります。そのため、腰部における過緊張やストレスが、頭部や首の不調、さらに全身のバランスに影響を及ぼすことがあると考えられます。鍼灸でいうところの足太陽経筋です。
頭・腰・足などのポイントを使って痛みを緩和し早期に社会復帰できるようにするのが鍼灸治療の目的です。
症例報告
患者情報
年齢:55歳
性別:男性
職業:鍼灸師
主訴:ぎっくり腰
症状の詳細
連日の疲れのため冷房をかけたまま寝込んでしまいました。起床後は特に痛くなかったが徐々に痛みが強くなってきました。
椅子に座る際、自然と右のお尻に体重をかけ左に体が傾いている状態で上半身をまっすぐに保っています。
立ち上がると、上半身が左に傾く姿勢になっています。この姿勢は本人は意識しておらず、家族に指摘されて気づきました。
痛みの部位は腰の中心から右側で腰の下にあります。痛みを回避するために無意識に左側へ傾いています。
立ったり座ったりする動作がつらく、立ち上がっても腰を伸ばしてからでないとすぐに一歩が出ません。
安静にしていれば強くは痛みません。
治療までの経過
患者は午前中に施術を控えていたため、すぐに症状を改善したいと希望。しかし、自分で腰への鍼施術が難しいため、腰に関連する部位の中で手の届くところを探りました。腹部、下肢、手、腕などいろいろな部位を確認した結果、最も反応があったのが頭部でした。
治療方針
近年の筋膜理論やアナトミー・トレインにおいては、全身に筋膜のつながりがあるとされ、これは東洋医学の経絡の概念と似た考え方です。特に本症例では、アナトミー・トレインの「スーパー・フィッシャル・バックライン(Superficial Back Line)」、つまり経筋の「足太陽経筋」に相当すると考えられました。
治療内容
頭部の正中線上およびその右側の数か所に、圧痛の強い部位(鋭い痛みが感じられる部位)に対し、2~3mm程度の深さで刺鍼。刺したままにして診療を開始。
治療効果
午前中の診療が終わる頃には腰痛が徐々に軽減し、体の傾きも改善。頭部の鍼のみで腰痛が消失しました。
考察
すべての腰痛がこのように簡単に改善するわけではありませんが、早期の対処が症状の改善において重要です。
結論
今回の症例では、頭部の鍼治療によってぎっくり腰の改善がみられ、筋膜のつながりを活用した治療の有効性が示唆されました。
おわりに
日頃の生活習慣をしっかりとしておけばぎっくり腰になることはありません。疲れや冷え、暴飲暴食、ストレスを管理し回避すれば大丈夫。
それにもしぎっくり腰になったら鍼灸治療でよくなりますよ。