長引く肩の痛み、五十肩との付き合い方教えますー50肩と鍼灸治療ー
はじめに
首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけて張った、こった、痛いなどの感じがし、頭痛や吐き気を伴う症状を言います。首のこりも含まれています。(公社)日本整形外科学会より
肩こりに関係する筋肉はいろいろありますが、首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋という幅広い筋肉がその中心になります。僧帽筋は背中、肩甲骨、肩上部、くびすじに広がる筋肉で、腕を使うために肩甲骨を固定します。肩甲骨は上に下に外に内にとよく動きます。肋骨の上をすべって動く感じです。僧帽筋のほかにいろいろな筋肉がくびやうで、肩甲骨を支えています。それらが肩こりを起こす原因になります。
肩がこる原因は、姿勢が悪い、運動不足、筋力不足、ストレスなどが考えられます。たまに内臓、心臓や胃、胆のうなどからの反射でこることがありますがそう多くありません。
肩がこって病院に行くと医師は問診をし、MRIなどの画像診断で頸椎の異常がないかを調べ、問題なければ筋肉の緊張を軽減するお薬や痛み止め、消炎鎮痛シップを出して様子を見るよう言います。病院によってはトリガーポイント注射や局注をしてくれるところもあるようです。
これで楽になるようであればいいんですが、原因がなくならなかったりこじれてた肩こりだったりするとなかなかよくなりません。
ですから鍼灸では違う見方をして違うアプローチをしていきます。
はり治療にあう肩こりはどんな肩こり?
あなたの肩こりにこんな症状はありませんか?
- 病院で何回か見てもらったけど楽になっていない
- 朝起きると肩がこっている
- 午前中は楽なんだけど夕方になるとつらい
- 頭痛がある
- 吐き気がしたりこりすぎて吐いたことがある
- 整体やもみほぐしなどに行ったけど良くならなかった
- 責任のかかった仕事があるとこりが強くなる
- 生理の前後でこりが強くなる(女性)
- 家庭や職場でストレスを感じる
はり治療で解決できること
基本的な鍼治療の効果は筋緊張の軽減と血流の改善です。そして重要なのが自律神経の安定を図ることとリラクゼーション効果です。はりでリラックスするの?と思うかもしれませんが、当院に肩こりでいらっしゃる方の多くは鍼をしたまま寝落ちしています。10分か15分という短時間の間です。
肩こりの原因としてあげた姿勢、運動不足、筋力不足は筋緊張を起こしているからです。緊張した筋肉の表面(筋膜)に鍼をあてると筋肉が緩みます。緊張がとれます。緊張が軽くなると血液が筋肉内に入ってきやすくなり老廃物の排出と栄養の流入が促進され、こりがなくなります。ストレスがある場合も同様ですが自律神経のバランスをとっていくことで血流を良くしていきます。(公社)日本鍼灸師会
はり治療でこうなれます
- すっきり目覚めるようになった
- イライラしなくなった
- 食欲が出てご飯がおいしくなった(体重に注意です)
- 頭痛や吐くことがなくなった
- 友達とランチに行くのが楽しい
- 趣味に没頭できるようになった
- なんだか気分が前向きになった
と、肩こりが楽になった多くの方から感想をいただきました(個人の感想です)。
肩こりの原因は足首に?
肩こりを訴えていらっしゃった女性、施術を重ねていくうちに原因が肩以外にあり、そこに施術したら肩こりがなくなったというお話です。
パート勤務の40歳の女性は肩こりで悩んでいました。思い起こすこと1か月前。ぎっくり腰を起こし病院や接骨院などで治療をしてよくなりました。腰が楽になった途端に肩こりががおこりました。病院に行ったけども異常なしと言われシップを出されました。湿布を貼っていても楽になりません。接骨院で電気治療とマッサージをしてもらいましたが変わりません。鍼でもしてみようかと当院を受診しました。
お電話で問い合わせがあり予約をしてもらいました。予約当日来院され予診票に必要事項を書いてもらい、施術室に入ってもらい詳しくお話をお聞きしました。肩こりは長時間のデスクワークでひどくなってきます。パソコン作業が大半です。仕事を続けていると耐えられないほどひどくなります。腕を回したり体操をすると軽くなるので仕事に戻る、そんなことを繰り返して一日を過ごしているそうです。明日は楽になるだろうと思って翌日をむかえても前日と変わりなくつらくなってきます。そんなことを続けて現在に至りました。普段から運動が好きで活動的に動いている人です。運動中は肩こりを忘れるので休みの日は必ず何かしているそうです。病院での検査の結果、頸椎や脳神経に異常がないことがわかっていましたので首・肩を動かしてもらい痛みがどの方向で出るか確認しましたが、可動域に問題なく痛みもはっきりと出てきません。痛む場所は肩の上と背中です。肩甲骨を支える僧帽筋に問題があるようです。炎症や頸椎に異常がないことを確認したうえで鍼をすることにしました。
Tシャツに着替えてもらいあおむけで大胸筋や腕の筋肉の緊張状態を調べ鍼をしました。続いて私がカーテンの外に出ている間にTシャツを脱いで下着だけになってもらいうつ伏せになってもらいました。首から肩、背中とツボを調べていきました。ぎっくり腰を起こしたことがあるとのことだったので腰も調べました。僧帽筋や肩甲下筋、前鋸筋、広背筋などにこりを見つけ鍼をしました。
ツボとコリは一致することが多いです。天柱、風池、肩井、肩外兪、膏肓などです。
はりを1~2ミリメートル刺入し15分間うつ伏せでいてもらいます。その後はりを抜き座ってもらいこり感や痛みの残るところにはりをしたまま腕や首を動かしてもらいます。そうするとほとんどのこり感や痛みがとれてしまいます。
2回の治療で肩こりは2/3ほど軽減したのですがそれ以上よくなりません。そこでお話をお伺いしなおして、ほかに具合の悪いところはないか、ぎっくり腰以前に悪くしたところはないかをお聞きしたところ、右足首捻挫の既往を見つけました。捻挫をかばって膝裏が痛くなり、腰が痛くなったのかもしれない、そこから肩こりが出たのではないかとの結論に至りました。私とこの方の意見が一致しました。2人なにかすごくいい気分で施術を始めていないこの時点でなおったかのような気持ちになりました。腑に落ちた、納得した感じです。
腰痛の原因はこの捻挫。肩こりの原因は腰痛。からだの下から上に向かって病気が上がってきている感じです。それぞれの問題点をはり治療で対応したところ、それぞれの症状がなくなり、肩こりもなくなりました。
その結果、デスクワークでの痛みや違和感はなくなりました。今では仕事に趣味にと、楽しく人生を過ごしていらっしゃいます。
肩こりは簡単な場合、肩だけ鍼をすれば取れますが、慢性化していたり発症に複雑な経過があったりすると肩だけでなくそれぞれに対応した施術をしてやらなければ肩こりはよくなりません。
そのためには詳しくお話をお伺いし施術のポイントを決定していく必要があります。
この女性の場合、ストレスや自律神経のアンバランスはありませんでしたので、その施術はせずによくなっていきました。そして何よりも回復が早い要因としては日常的に運動をしていたことでしょう。体力があると回復は早いということです。
おわりに
肩こりと簡単に考えていると思わぬことになりかねません。簡単に考えていい肩こりは作業後の筋肉痛でしょう。風呂に入ってゆっくり休養を取れば2~3日でよくなります。簡単でない肩こりはストレス性のもの、原因がほかにあるものです。ストレスはご自身で分かっている人がほとんどですが私が指摘して「ああ、そうなんですね」と理解する方もいらっしゃいます。ストレス性の肩こりについては別に機会でご説明しようと思います。
大事なことはなぜ肩こりが起こっているのかを理解することと、病院で一度見てもらい頸椎や脊髄に異常がないことを判断したうえで、どうしたら楽になるか、肩こりが良くなるかの対応を考えることです。そのときはり治療がお役に立てることでしょう。はりは痛くありませんし即効性があります。だてに2000年続いているわけではないんですよ。どろぼうも2000年続いているじゃないかといった人がいますが、泥棒も職業なんでしょうか。
加えて自宅でするストレッチや筋トレの方法をお話して少しでも良くなるよう、良い状態が続くように二人三脚でやっていっています。