つらい頭痛のはり治療、東洋医学のはりと頭痛は意外と相性がいいんです
目次
はじめに
アンチエイジング、つまり抗加齢はいつまでも若々しくいたい人のこころとからだを若々しい状態に維持する方法、または若々しくみられるためのいろんな方法のことです(諸説あります)。
高齢化社会から完全な高齢社会に移行した日本。お年を召しても元気でいたいのは誰しもが望むことです。健康で長生きしたい(いつまで?)のです。
年を取ると骨関節に異常が出てきます。病院へ行きます。医師に「年のせいだから仕方がない」と言われます。痛み止めと湿布をもらって失意のうちに病院をあとにします。
現在の病院では老化を治す方法はありません。対症療法と言って痛みや症状を軽くする治療をします。
少しでも良くなる方法はないかと思いながらテレビを見ていると、いろんな健康食品、サプリメントの通販が!
期待に胸を膨らませて購入しさっそく使ってみると、なんだか違う気がする、いい感じがする。やっぱりテレビであの俳優さんが宣伝してるんだから効かないはずはない。
しかし、1週間もしないうちにいいのか悪いのかわからない、何も変わらない気がするとだいたい1カ月でやめてしまいます。
最初の効いた感じのことをホーソン効果といいます。プラセボ効果の一つです。期待が高いと効いた感じがします。サプリだけではありません。医療行為にもついて回ります。
老化はいつから始まる?
人間は20歳まで成長しそれ以後は緩やかに老化していくといいます。大人のからだになるまでが成長期です。なってしまうとあとは衰えていくだけです。ですからアンチエイジングを実行するには20歳を過ぎてからするのが理想です。50歳前後で男女とも更年期を迎えます。老化の最初のピークで、いろいろな不調が出てきます。つぎが老年期。60歳以降です。この時期にメタボリックシンドロームやロコモティブシンドロームがあると、病院通いや介護のお世話になる可能性が出てきます。
ですからアンチエイジングの開始は早めがおススメです。
病気?加齢?ロコモとメタボ、それにフレイル
ロコモティブシンドロームはからだを動かす能力が不足したり衰えたりした状態です。加齢に伴い起こる筋力低下や関節の異常によりからだの動きが制限されます。これも老化の一つで厚生労働省が運動を推奨しているのはロコモ予防の意味もあります。
内臓の問題についてはロコモ以上に複雑です。生活習慣病によるメタボリックシンドロームは若いうちでも発症しますが加齢とともに悪くなることが知られています。
フレイルは虚弱という意味で、健康と要介護の中間でからだや認知機能の低下が見られる状態のことをいいます。体力、認知力に加え社会的なつながりや栄養状態などフレイルは総合的なお世話が必要な状態です。うまくいけば要介護にならずに健康を取り戻すことが出来ます。これらはみんな老化と関係があります。
さて、老化は病期なのでしょうか。自然の成り行きの部分と機能障害などの病気の部分が混ざっているようです。医療や介護で解決できる部分とできない部分があると思います。
はり灸の介入も同様です。なんとかなる部分とならない部分があることは経験上理解しています。はり灸だけでなく医療や介護と連携してそれぞれの目的をはっきりさせて利用者さん(患者さん)に当たらなければなりません。
東洋医学ではどう考えるか
「腎虚」。サラリーマンのお父さん方がたまに口にしている言葉。精力の低下という意味でつかわれることが多い腎虚。性欲が落ちた、生殖活動が困難になったというような意味です。
それもそうなんですが本来の「腎虚」は生命力の低下を意味します。
東洋医学の腎という臓器は尿の生成だけでなく精を内蔵しているといいます。その精は生まれるときに両親からもらったもので限りがあります。これを「先天の原気」といいます。ということはいっぱいもらった人とちょっとしかもらってない人がいるかもしれません。
ちょっとしかもらってない人は親を恨んではいけません。先天の原気があるなら「後天の原気」があります。後天の原気は空気から肺が取り込む原気と飲食から脾が取り込む原気があります。「脾」は現在の脾臓と違う役割があります。胃に入った食物からエネルギーを取り出し、からだに回して筋肉やいろんなパーツに変換する機能を有する臓器と東洋医学では考えられています。
原気のいれものはいのちのいれもの
先天の原気が少なければ後天の原気でおぎないます。それで100%。
100%入る「いのちのいれもの」の大小はあります。それぞれいれものに応じた人生を送るようにしましょう。
ちなみに90歳のエアロビインストラクターの女性がテレビに出ていますが、あの方の入れ物はすごく大きい。先天も後天もいっぱい入っているので長生きで元気です。大谷選手もそうです。
あなたは腎虚?
若くても老化の進みの早い人がいます。腎の気が何かの理由で減ってしまった場合です。腎虚の漢方チェックをしてみましょう。3つ以上当てはまったあなたは、腎虚です。
- 夜間トイレに3回以上いく
- 朝起きるとまぶたがはれてたり手がむくんでいる
- 階段を上がると足腰に力が入りにくい、だるくなる
- 排尿のいきおいが落ちた
- 2時間以上イスに座っていると腰がだるい
- 立ち仕事で腰痛が出る
- 抜け毛が目立つ
- 日中眠くて夜キトキトになる
- 寝つきが悪いもしくは何度も目が覚める
- 耳鳴りが出るようになった
東洋医学の腎が起こす症状は腰痛、耳鳴り、精力減退、水分排出異常、抜け毛、白髪、足の裏の痛みなどです。
ということで東洋医学のアンチエイジングは
1先天の原気を使いすぎない養生
自分のからだと相談して身の丈に応じた生活をするのがよいと古人は言っています。
2後天の原気を効率よく取り込む養生
呼吸は酸素を取り込むだけでなく腹式呼吸をすればリラクゼーションになります。胸を張って自然と多くの空気を取り入れるようにしましょう。またバランスの良い食事、地産地消と言われるように住んでいる場所でとれたもの、季節に応じたものを食べるようにしましょう。腎の機能を補う食物としては黒ゴマ、黒米、黒砂糖、黒豆、くるみ、うなぎ、牡蠣が良いでしょう。
腎のカラーは黒です。
3腎の保護・補修が加わります。
腎の気が何かの理由で減ってしまった場合には鍼灸や漢方で治療します。
鍼灸治療とアンチエイジング
鍼灸も漢方もアンチエイジングに対する考え方は同じです。
ストレスで心身ともに疲弊したり養生を守らなかったりすると、腎の気が減って腎自体が弱くなります。それを鍼灸治療で改善します。年齢と原気の減り具合によって腎の状態は変わります。ストレスが改善されない、不摂生を続けていては、鍼灸や漢方をしても良くなりません。鍼灸治療の目標は生まれた時の元通りにするというより、弱る前の状態に復帰させることです。
当院の施術は「澤田流太極療法」というやり方をします。お灸が中心です。全身の重要なツボに小さなお灸をすえていきます。効果が現れるまでの期間は状態や個人差で変わりますが、元気になって顔色が良くなり、笑顔が多くなります。
若い人向け、はりのアンチエイジング
有名なところでは「美容はり」があります。テレビやネットで紹介されることが多くなりました。顔中にいっぱいはりを刺します。当院では行っていませんが若い女性の中でじわじわ人気が出てきたはりの一つです。タレントさんがインスタグラムなどのSNSでちょっとショッキングな鍼だらけの顔の写真をアップしてから、一般の若い女性の間で広まりました。ハリウッド映画の女優さんや歌手のマドンナさんもそんな写真をアップしています。美の追求がアンチエイジングと一致したといえるでしょう。
90歳を超えてなおお元気な女性、その秘訣は?
加齢に伴ういろいろな訴えに対応するのがアンチエイジングです。体のバランスを良くして健康にするのが目的の東洋医学。それに加えて美容の観点からアンチエイジングを行うことを紹介しました。高齢者向けと若い人向けがあることが分かったと思います。
今回の症例は90歳の女性です。この方とは私が研究所付属鍼灸治療室で働いている頃からですから、やがて30年のお付き合いになります。
92歳、女性、無職、初診:2003年9月
主訴:腰痛
既往歴:不安定狭心症(内服治療中)
以前から腰痛で施術を続けていた方で私が開業してからも通院してくださいました。腰痛の原因は、胸腰椎圧迫骨折です。過去何度か骨折を起こしていてその後遺症としての姿勢性腰痛を鍼灸治療で対応していました。
姿勢性腰痛というのは脊椎の変形で腰がまがって姿勢が悪くなって起こる腰痛です。
圧迫骨折をいく度か起こしているため背骨が後ろに突出して円背になっています。腰痛のほかに、常に前かがみですから食べたものがすっと降りてこず胸につかえると訴えていました。鍼灸で姿勢が良くなるわけではありません。変形した骨の並びは変わりません。しかし、施術後には腰の痛みが楽になり、スッキリします。
この20年、澤田流太極療法で小さなお灸を全身にある大事なツボに据え続けてきました。
この方の趣味は畑です。当初はご自身で家からちょっと離れた畑に歩いて行ってましたが、徐々に独歩から杖歩行、シルバーカーと歩く手段が変わってきて、今では家の人にくるまで送り迎えをしてもらっています。「畑にいるのが一番幸せ」とおっしゃるので、少しでも長く畑にいられるように鍼灸をしてあげています。
この方が特別な方なのかもしれません。もともとの「いのちのいれもの」が大きかったからこれだけお元気なのかもしれません。またお灸に対する反応がよい体なのかもしれません。趣味や好きなことがあるのが健康寿命を延ばすといわれています。
アンチエイジングをすることだけで加齢の進行を遅らせることではなく、人生全般を考えて老いを過ごす気持ちが大切なのかもしれません。
まとめ
老いることは悪いことではありません。そう思えるならばあなたはアンチエイジングの第一歩を踏み出したといえます。
しわを消すのではなく、素敵なしわを刻みませんか。白髪を隠すのではなく素敵なグレイヘアになりませんか。
健康で人生を過ごす要因として厚生労働省は、食事、運動、休息の3つを挙げています。私はそこに「刺激」つまり鍼灸を入れると完ぺきと考えています。
年齢にかかわらずアンチエイジングに興味がある方は鍼灸治療をお勧めします。当院では最初に詳しくカウンセリングを行い施術のゴールを決めます。それは痛みや病気の改善でなくても大丈夫です。健康でいたい、元気でいたいという「主観的健康感」の充実を目標にします。施術計画を立てて共有します。痛いはりや熱いお灸はいたしません。
「主観的健康感がよい状態」は例えば朝起きた時の体調がよいと感じる、お通じがよい、ご飯がおいしい、さわやかな気分で散歩ができるなど、ご自身が感じる健康感のことです。血液検査では絶対に分からない、数値化できないことですが、こういう感覚が元気で長生きを支える大切な感覚です。
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所が100歳を超える長寿の老人を対象にした研究調査をしています。普通の老人と比べて100歳老人は圧倒的に主観的健康感が高く、明るく無邪気で、人に対して優しいという特徴がありました。前向きに生きること、体の調子がいい感じ、なんとなく充実した毎日を送っている、元気。こんな感じがアンチエイジングに大切なことで、鍼灸治療を経験した方が、症状が軽くなって病状が良くなっても通ってくる理由になっています。「鍼灸すると体が楽で軽い」といわれます。からだが楽になると気持ちも変わります。
東洋医学はこころの医学なのです。