ひざの痛みをガマンしすぎたら坐骨神経痛に?そんな時はこのツボ!

中田和宏

中田和宏

テーマ:はりきゅうとツボ



 高齢者の多くはひざに痛みがあります。テレビの通販番組ではひざの痛みにいいという商品がいっぱい紹介されています。おなじみのグルコサミン・コンドロイチン。ひざの軟骨成分○○グラム配合!。それからひざサポーター。「ひざが軽くなった!」と驚きの声を伝えています。効果には個人差があります。
 
 ひざの痛みをガマンしていたり大したことはないと放っておいたりすると、徐々にひどくなって反対のひざまで痛くなったとか、足全体が痛くなったなど悪い場所が増えてしまいます。


 
 70歳の女性、ひざが痛くなる前までは明るく活動的で、旅行に行ったり仲間とランチしたりと楽しい人生を過ごしていました。
 
 コロナ前のお話しです。
 
 右ひざの痛みは以前から多少はありました。一年前から徐々に悪くなり整形外科や接骨院に通院して治療をしていましたがひざが曲がらなくなってきました。
 
 病院でMRI検査の結果手術を勧めらました。別の病院では関節の中は異常なしと言われました。どうしたものかと悩んでいました。
 
 そうこうしているうちに右の太ももやすねに痛みが出てきました。
 
 腰の検査を病院でしましたが骨や神経には異常なく坐骨神経痛と診断されました。
 
 痛みで夜も十分眠ることができず、ひざが曲がらないため歩行困難で杖にすがって歩いています。
 
 当院を受診したときも全力で杖に体重をかけ右足をかばった状態でいらっしゃいました。顔は苦痛で歪んでいて、なんとも可愛そうな状態でした。
 
 診ると右ひざは腫れていて曲げることができません。ひざをささえる太ももの筋肉が萎縮しています。一年間の苦悩を物語っているようです。仰向けに寝てもらうとひざの裏とベッドの間に私の指が2本ほど入ります。つまり軽く曲がった状態で固まっています。
 
 自力で曲げようとしても痛くて曲がりません。その痛みは太ももの裏からすねの外側にあります。坐骨神経痛と診断されたのがこの痛みのようです。
 
 腰、右足、背中など関連するところをいろいろ調べましたが、ひざの腫れと太腿の筋肉の萎縮以外、取り立ててひどいところは見つかりません。
 
 そこでまずは坐骨神経痛を軽減することを優先し、ひざの腫れや曲がらない症状は痛みが落ち着いてから治療することにし、腰臀部、下肢のツボに鍼治療を行ないました。
 
 初日の治療直後の改善は見られませんでしたので、翌日再診するようお願いしました。
 
 翌日、もう一度足をよく調べました。すると太ももの外側の筋肉とひざ裏の筋肉に異常を見つけました。
 
 つまり、ひざをささえる筋肉が長年のひざの障害で萎縮を起こし、それをかばってふとももの外側の筋肉に無理がかかり、その状態で歩いたために起こった足の痛み、これが坐骨神経痛といわれた原因だったのです。
 
 筋肉の緊張とコリが原因ですから坐骨神経は関係ありません。これらの筋に鍼をし、様子を見ることにしました。
 
 3回目の治療も2回目と同じように行ったところ、4回目にいらした際にウソのように痛みがなくなったと大喜び。ひざも曲がるようになりました。
 
 残された問題点はひざの腫れと、ふとももの内側の筋肉の萎縮です。腫れは病院の診断どおり変形性ひざ関節症による循環障害(炎症所見はありません)、萎縮は廃用性萎縮と言って痛みのため筋肉を使わなかったせいで萎縮している状態です。軽い筋トレが必要です。
 
 一時はどうなるかと心配しながら治療しましたが、しっかり調べて悪いところを見つけられたのが良くなるポイントでした。
 
 その後しばらく治療を継続し、筋トレをしてもらいました。そして日常生活に問題がなくなったので治療を終了しました。患者さんは以前の生活に戻ることができて大変喜んでおいででした。
 
 そこで、今回の足の痛みにはこのツボ!
 
 「陽陵泉(ようりょうせん)」。
 
 ひざの痛みにこだわらず、足の外側が痛くなった時に使うツボです。もちろん坐骨神経痛でもこのツボに鍼をします。


 
 場所はひざの外側の下にまるくでっぱった骨があります。腓骨頭と呼ばれる部分です。このでっぱりの下にあります。そのあたりを押さえてみてください。「ズン」と響くところがあります。場合によってはすねの下の方にピリピリとシビレが出るかもしれません。そこがツボ。その場所にお灸やこりスポッと(ツボ刺激グッズ)を貼っておきます。指圧する場合は10秒押していったん離す、を5回ほど。
 
 むかしの人はからだの部分を陰と陽に分けました。南に背を向けた時、お日様が当たるところが陽、つまり背中や足の後ろ側。影になるところが陰でおなかなど。決め方はざっくりですね。顔は陰だろうと思いますが陽でもあります。振り向いてるのかもしれません。
 
 陽陵泉はその陽の側にある腓骨頭を小高い丘「陵」に見立て、そのすぐ下のへこみを「泉」とたとえてつけた名前です。足少陽胆経という経絡のツボで、この経絡は目の上から始まって側頭部を通って肩から脇、足の外側を走っている長い経絡です。ですので陽陵泉は足の痛みだけでなく腰痛、脇の痛み、肩こり、胃もたれなどのおなかの症状、耳の病気や目の病気などにも使われます。
 
 昔の人の知恵は現代人の想像をはるかに超えていますね。高齢社会、ひざの悩みを訴える方が増えています。現代医学で病気をしっかり見てもらい、症状の改善に鍼灸を利用してはどうでしょうか。

足が痛くなったら、「陽陵泉」を押せ!

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中田和宏
専門家

中田和宏(鍼灸師)

トキの森鍼灸院

初診時のカウンセリングでどんな状態か明確にし、できることを説明します。施術計画を立てて最適な施術を提供します鍼灸治療にたずさわって約40年のベテラン鍼灸師が優しく対応しますお困りならまずご相談を!

中田和宏プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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