手数料だけでネット証券を選ぶのは危険?|相続まで見据えた相談先を

今村浩二

今村浩二


ネット証券は始めやすいが、その先が不安という声

ネット証券で株式や投資信託を始めてみたものの、担当者がつかず、すべてを自分の判断で進めなければならないことに不安を感じている方に、私はセミナー会場でよくお会いします。

口座を開いた当初は手数料の安さに満足していても、いざ相場が動いたときにどう判断すればよいのか、誰にも相談できないまま時間だけが過ぎていく。そうした状況に置かれている方の多くが、銀行や証券会社の窓口に行けばいいのだろうかと考えながらも、いきなり訪ねるのは敷居が高いと感じ、まずは知識を得ようと弊社のマネーセミナーに足を運んでくださいます。

私自身、そうした方々からお話をうかがう中で、「何をどうしたらいいかわからない、助けてほしい」「自分でいろいろ調べてはいるが、これでいいのか誰かに確認してほしい」「自分の時間を投資の勉強に使いたくない、任せられる人がほしい」といった声を数多く聞いてきました。

「自分のことだけでなく、家族のことも含めてフォローしてほしい」「経済の動きに常にアンテナを張り続ける余裕がない」「この先10年、20年という長い期間、誰にも相談せずに続けていく自信がない」という不安を口にされる方も少なくありません。

会場でお話をうかがっていると、こうした悩みは特定の年代に限らず、幅広い世代に共通しているというのが私の実感です。ネット証券は、始めるまでの手軽さでは優れている一方、始めた後に頼れる相手がいないという点で、多くの方の悩みの種になっています。

手数料の安さだけで判断することの落とし穴

なぜこれほど多くの方が同じような不安を抱えるのか、その背景には手数料の安さばかりが前面に押し出されている現状があると私は考えています。

ネット証券各社が手数料の低さを競い合うように打ち出しているため、口座を選ぶ段階ではどうしてもその数字に目が向きがちです。しかし、手数料がここまで下がっているのにはそれなりの理由があり、その分だけ相談やサポートの体制が簡素になっているケースが多いというのが実情です。

手数料の低さに引っ張られて口座を選んだ結果、目標としていた資産形成に本当にたどり着けるのかという最も重要な視点が抜け落ちてしまう。これが、私が現場で繰り返し目にしてきた落とし穴です。

また、インターネット上には資産運用に関する情報があふれていますが、情報を集めすぎるあまり、かえって何を信じればよいのか分からなくなってしまう方も多くいらっしゃいます。本来であれば金融機関の窓口に相談に行くという選択肢もあるはずですが、そこに相談に行くこと自体のハードルが高く、どこに相談すればよいのかもピンとこないため、結局はとりあえずネット証券の口座を開いてみる、という流れになりがちです。

手数料という分かりやすい指標だけで判断を進めてしまう、その構造自体に課題があると私は捉えています。情報を集めることと、その情報を自分の状況に当てはめて判断することとは、まったく別の力を必要とする作業だという点も、あわせてお伝えしておきたいところです。

プロに相談するという選択肢を持つこと

こうした悩みに対して私がお伝えしたいのは、プロに相談するという選択肢も持っていただきたいということです。

昨今、ネットで広く見かけるようになった「おすすめ」情報は、多くの場合すでに旬を過ぎたあとのものです。市場は日々、目まぐるしく変わりますから、情報が広まった時点で前提が動いていることは珍しくありません。

もちろん、その変化をご自身で追いかけられる方であれば、ネット中心のやり方はとても合理的だと思います。一方で私がお勧めしないのは、追いかけ続けるのは難しいとご自身で自覚されているのに、自己流を続けてしまうケースです。めまぐるしく変わる市場や制度の情報に、自分だけで付いていこうとするのは、多くの方にとって不向きな方法ではないでしょうか。

対面でのサポートを求めて相談にいらっしゃる方々

対面でのサポートを求めて相談にいらっしゃる方々
実際にご相談にいらっしゃる方の中で、特に50代より上の世代の方から、ネット証券の口座を開いてみたものの、電話での問い合わせに対応していない証券会社も多く、若い方であれば苦にならない手続きや、簡単な確認ひとつにも大きな手間がかかってしまう、というお話をよくききます。

分からないことがあってもすぐに人に聞けない、問い合わせの窓口を探すだけで一苦労する。そうした経験を重ねるうちに、対面でのやり取りができる相談先に切り替えたいと考える方は少なくなく、実際に弊社へご相談に来られる方の中にも、そうした経緯で乗り換えていらっしゃる方が数多くいらっしゃいます。

もうひとつ、いざという時のことも考えておきたいところです。司法書士の近藤崇氏は、ネット証券の普及にともなって相続手続きが難航する例が増えていると指摘しています(出典:ゴールドオンライン、2026年9月1日公開)。

同記事では、郵送物が少ないためご家族が口座の存在に気づきにくいこと、証券口座は預金のようにそのまま引き出せず移管と売却の二段階になること、複数社に分散していると同じ書類を何度も出し直すことになる点が挙げられています。

担当者がついていれば、ご家族に「あの方はここに口座をお持ちです」と伝わる余地がありますが、ネットで完結していると、口座の存在そのものが把握されないまま置き去りになる可能性も残ります。

手続きが必要になったときの複雑さは、私の実務感覚でも預金の比ではありません。銀行預金であれば単純な名義変更で済みますが、同記事でも指摘されているとおり、証券口座の場合は「移管」と「売却」という二段階の手続きが必要になり、複数の証券会社に口座が分かれていれば、その分だけ手続きの負担も大きくなっていきます。

相続人の間で売却の時期をめぐって意見が分かれることも起こり得ますし、平日の日中に何度も窓口とやり取りする時間を確保するだけでも一苦労だという声をよく耳にします。

そうした場面こそ、早い段階から全体を整理し、各社の手続きを並行して進めてくれる専門家の存在が助けになります。

出口まで見据えて相談先を選んでいただきたい

私が読者の皆様に一番お伝えしたいのは、手数料が安い、あるいは無料であるということだけで相談先や口座を決めないでいただきたいということです。

手数料の低さは分かりやすい判断材料ではありますが、それだけを基準にしてしまうと、資産を育てていく過程やその先にある出口の部分でつまずいてしまう可能性があります。

特に50代以上の方であれば、資産を増やすことだけでなく、将来的にどう管理し、どう引き継いでいくかという出口戦略まで含めて考えていただく必要があります。ご自身の資産だけでなく、ご家族が困ることのないよう名義変更や売却の手続きまで見通しておくことも、出口戦略の一部であると、私は捉えています。

手数料の安さに満足して選んだ口座が、本当にご自身やご家族にとって安心できるものになっているかどうか、一度立ち止まって見直していただきたいと思います。

まとめ

資産運用は始めるまでの手軽さだけでなく、その後どう付き合い、どう引き継いでいくかまで見据えて相談先を選ぶことが大切だと、私は考えています。手数料という一つの数字だけにとらわれず、ご自身とご家族が長く安心して過ごせるかどうかという視点を、判断の基準に加えていただきたいと思います。

・ネット証券を利用しているが、判断に迷ったときに相談できる相手がいない方
・手数料の安さだけで金融機関や口座を選んでよいのか不安に感じている方
・将来の資産管理や相続まで見据えて、資産運用の相談先を探している方


お問い合わせはこちら。https://www.universal-fp.com/contact/

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今村浩二
専門家

今村浩二(ファイナンシャルプランナー)

株式会社ユニバーサル財務総研

女性のためのマネーセミナー「シアワセのマネーレシピ」を開催し、将来にわたり安心できる貯蓄法、運用法を身に付けたい女性を支援。悩みや不安をお金のプロに気軽に相談できる無料相談も随時受け付けている。

今村浩二プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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