シリーズ【看板の字が読めないのはなぜ?】NO3 書写体を知れば行書のルールがよくわかる

髙橋空晃

髙橋空晃

テーマ:字の知識

書写体例             上段:書写体   下段:新字体(現代の字)


旧字体の骨格を理解した次に知っておきたいのが、手書きの慣習から生まれた「書写体(しょしゃたい)」です。街の看板や表札を見て「旧字体でもないのに、学校で習った形と違う」と感じる文字。それは、歴史ある手書き専用の形かもしれません。

今回は、看板によく使われる書写体の例を挙げながら、初級者が実用的で美しい行書をよりスムーズに書くためのヒントを探っていきましょう。

1. 手書きのための「合理的な形」

印刷物の字は、四角い枠の中に収まりやすく、判読しやすいように設計されています。しかし、手書きの世界では「効率よく、かつ流れるように書くこと」が古くから重視されてきました。

看板に見られる書写体は、長い歴史の中で「こう書いた方がスムーズに動く」と認められてきた合理的な姿です。この形を学ぶことは、行書のリズムを掴む上で非常に効果的です。

2. 「本」と「御」に見る、書写体の省略美

具体的によく見かける書写体の例を挙げてみましょう。

                     「山本」
   
「本」の書写体
二画目と三画目が繋がって「Z」のような形になっていたり、下の横線が点に省略されていたりすることがあります。なお、上の「山」は草書体で書かれています。



                     「御菓子所」

「御」、「所」の書写体 
「御」に注目してください。看板では、真ん中のパーツがバラバラに書かれず、横二本の線で一気に書き、それを縦線が真っすぐ貫くような形で書かれています。これはペンを途中で離さずに、次の動きへ繋げるための知恵です。また、最後の字は「所」の書写体です。

これらの共通点は、いずれも「ペンの運びを止めない」ことにあります。

3. 書写体をペン字の「崩し」に取り入れる

初級者の方が、いざ自分の字を崩そうとすると「どこまで崩していいのか」と迷うものです。そんな時こそ、看板にある書写体を思い出してください。

例えば「御」の真ん中のパーツを二本の横線で省略する手法は、看板という公の場で長年使われてきた「正しい省略」です。こうした実績のある書写体を自分のレパートリーに加えることで、あなたの行書は自己流の崩しではなく、品格を保った「実用的な崩し字」へと変わります。

4. 街歩きを「手書き文字の観察」に変える

書写体を知ると、街の見え方が変わります。看板を眺めるたびに、「ここはこう繋がっているんだな」という発見があるはずです。

私が実際に街で見つけた読めない字は、
YOU TUBE [[ https://youtube.com/] の中の再生リスト「あるある読めない字」にまとめています。私のチャンネル「少しだけきれいな字が書きたい」と検索していただき、100を超える事例をまとめた再生リストにチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。

もし「この崩し方は初めて見た」という形があれば、それは新しい行書のパターンに出会ったサインです。書写体は、字典で調べるだけでなく、こうして街中で実例に触れることで、より身体に馴染んでいきます。

終わりに

看板の字が「読めない」と感じるのは、手書き文字が持つ豊かな多様性に触れている証拠です。書写体のルールを一つずつ理解していくことで、あなたのペン字はもっと自由に、もっと軽やかになるでしょう。

次に街を歩くときは、看板を「手書きのお手本」として眺めてみてください。先人たちが磨き上げてきた書写体のリズムを自分のペン先に少しずつ取り入れていけば、あなたの字は驚くほど洗練されたものに進化していくはずです。

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髙橋空晃
専門家

髙橋空晃(ペン字講師)

神戸うはらペン字教室

初心者から検定合格を目指す方まで、少人数制のレッスンでわかりやすく指導。単に字を整えるだけでなく、字を書く楽しみを知っていただき、日常生活に作品を取り入れた彩りある生活を提案しています。

髙橋空晃プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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