③『長期修繕計画は“家計簿”と一緒やで』

マンション修繕積立金の不足が増える今、長期修繕計画は丸投げから自主管理の時代へ
修繕積立金を急に大幅に引き上げざるを得なくなり、私のところに駆け込んでこられる理事の方が最近増えています。マンションの長期修繕計画はほとんどの場合、分譲時に一度つくられたきりです。ところが年月が経つと、その計画書と実際にかかるお金とのあいだに、じわじわと大きなズレが生まれていきます。
私はマンション管理士として、西宮市を拠点に、60年を一単位とする長期修繕計画を作成するエクセルシステムをご提案しています。長期修繕計画とは、いつ・どこを・いくらで直すかを年単位で見通し、その費用を計画的に積み立てていくための、マンションの「お金の設計図」のことです。
今日は、その設計図がなぜ実態とズレてしまうのか、そしてこれからの管理組合がどう向き合えばよいのかを、現場の感覚を交えてお話しします。
分譲時の計画書が、実態と合わなくなる理由
このような問題は、管理状態が良くないマンションに限った話ではなく、ごく普通のマンションで当たり前に起きていることです。
分譲マンションを購入されるとき、販売会社から長期修繕計画が提示されます。ただ、販売価格を抑えたいという事情から、修繕積立金は低めに見積もられていることが多いのが実情です。
マンションは10〜15年くらいではそれほど傷みませんから、最初の大規模修繕はたいていスムーズに終わります。問題は、そのあとにあります。
機械式駐車場やエレベーターといった、お金のかかる設備の更新が次々とやってきます。そこへ材料費や人件費の上昇が重なると、分譲時のプランでは工事費がまったく足りない、ということが後になって判明します。その結果、修繕積立金が大幅に引き上げられ、住人が慌てる。この流れを、私は何度も見てきました。
私はもともと、家電量販店を営む家に生まれ、新しい店舗の建設計画に関わるなかで建築や設備の知識を身につけてきました。その後は外壁塗装会社や建築設備のメンテナンス会社で、大手ゼネコンの下請けとして各地のマンションや学校の長期修繕計画を数多く手がけてきました。
そうした現場でいつも感じていたのは、計画書はあっても、それを実態に合わせて更新し続ける仕組みがほとんどない、ということです。一度つくった計画書が、書類棚で眠ったまま年月だけが過ぎていく。そのあいだに物価も設備の傷みも進んでいくのですから、ズレが広がるのは当然なのです。
積立金の不足は、マンションの寿命に直結する
「うちはまだ大丈夫」とおっしゃる組合ほど、私は少し心配になります。
計画と実態がズレたまま放置すると、必要なときに必要な工事ができなくなります。お金が足りないからと修繕を先送りすれば、建物の傷みはさらに進み、結局もっと大きな費用がかかります。これでは健全なマンションを維持できません。
国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画は「30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間」で策定することが求められています。私のシステムは、その2倍にあたる60年を一単位にしています。
なぜなら、60年あればさまざまな設備の更新工事がちょうど一回りするからです。この60年のサイクルをきちんと回せれば、次の60年も見通しが立ち、100年以上住み続けられるマンションになります。
区分所有者が高齢化し、マンションに永住したいと考える方が約6割に及ぶという国土交通省の調査もあります。だからこそ、長く住める前提で計画を組むことが大切です。
計画づくりを他人任せにしない仕組み
長期修繕計画のかじ取りをするのは、本来マンションの理事会です。ところが多くの場合、役員は持ち回りで担当されているため、管理会社から提示された工事の妥当性を判断できず、どうしても管理会社の提案のまま進みがちになります。
私はこれを、自分の家の家計簿を他人任せにしているようなものだと思っています。住んでいるのは自分たちなのに、お金の流れを把握できていない状態です。
私がご提供しているエクセル式の長期修繕計画には、物価変動指数を工事費に反映できる仕組みが組み込まれています。そのため実態に即した計画がつくれます。
60年間の修繕積立金と工事費用の収支もグラフで分かりやすく表示できるので、「この先、お金が足りるのか」が一目で見えます。赤字を避けるには積立金をどれだけ上げればいいのか、工事の時期を少し先送りしたらどうなるのか。こうしたシミュレーションが、その場で簡単にできるのです。
家計簿を自分でつける感覚で、計画に関わる
私がエクセルシートで納品することには、はっきりした理由があります。
国土交通省のガイドラインでは5年ごとの見直しが推奨されていますが、外注するとそのたびに料金が発生します。私の場合はエクセルシートでお渡しし、修正方法もレクチャーしますから、理事会のメンバーだけで計画の手直しができます。費用をかけずに見直せるわけです。
これからの管理組合は、長期修繕計画の作成を専門家に丸投げするのではなく、家計簿を自分で管理する感覚で計画に関わっていくようになると、私は考えています。
実際、長期修繕計画の中身まで踏み込んで相談できるマンション管理士に頼みたい、という声は増えています。しかし、修繕工事の内容を理解したうえで計画まで作れる人は、まだ多くありません。
だからこそ、自分たちで動かせる計画を持つことが、これからの当たり前になっていくはずです。これは、私が黒子となって計画づくりを伴走するなかで、いつも目指している姿でもあります。
・修繕積立金の増額通知に不安を感じている
・分譲時の長期修繕計画が実態に合っているか確かめたい
・計画づくりを自分たちで関わりながら進めたい
このようなことでお困りの管理組合・理事会の方は、宇野俊明マンション管理士事務所まで、まずはお気軽にご相談ください。


