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ポータブルトイレを使うのがイヤな理由

坂部智子

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先日訪問のAさん(80代女性、要介護3、独居)
日中は、歩いて5メートルほどの廊下先のトイレまで行っておられるが、
夜間は、途中で転倒しそうになったことがあり、また回数も多いことから、
ベッド枕元に置いたポータブルトイレを利用することになった。
独居なので、始末は、朝来てくれるヘルパーさんにお願いする。

ご家族が心配されていたわりには、ポータブルトイレを使うこと自体は、すんなりと受け入れられて、「寒くなったら、夜、廊下に出るんはかなわんから、助かる」とおっしゃっていた。
・・・のだが、数日後、
「ポータブルはイヤや」と、頑なに拒否されるようになった・・・とのこと。

なんでか?
寝る前には、トイレまで行って用を足しておく。
夜中に目が覚めて、ポータブルトイレを使う。
ここまでは、よかったらしい。
次に目が覚めて、ポータブルトイレに座ると、さっきしたのが、溜ったまま。
一瞬、びっくりして、
「あ~そうか、したんやった・・・」と思い出したらしいが、
その上からすると、跳ねが気になるし、なんとも言えないドヨ~ンとした気分になったとおっしゃる。
次に目が覚めた時は、外がもうちょっと明るくなっていたのもあって、
がんばって廊下つきあたりのトイレまで歩いて、用を足したとのことだった。

そうなのだ。
この体験は、私も入院中に何度もした。
蓋をあけた時に、さっきのが残っていて、その上にまたする・・・という時の
あのなんともいえない気持ち。
もちろん自分のなので、きれいや汚い・・・というのではないのだけれど、
なんだか、ちょっとみじめというか、哀しくなる感じ・・・
流してもらえるまで、さらに2回3回・・・と使い続けるとなると、なおさらである。

使い終わった後、すぐに処置してもらえる環境であれば、ポータブルトイレというのは、
十分すばらしい福祉用具であると思う。
溜った汚物(この表現は好きではないけれど)を見えなくするようなシートは販売されている。しかし、時間が経つと溶けるし(溶けないとまた困るし)、ただ単に上に浮かんでいても、イヤなことの解決には実際ほど遠い。(防臭シート的な要素が強いし)
凝固させるようなタイプのもあるが、ランニングコストはけっこうかかる。
水洗式の工事をする高額の商品もある。
いずれも、どちらかというと、介護者の処理の負担を軽減するという目的で開発されているようで(そういうコピーもついている)、使用者の“その点”での精神的負担というのは、あんまり気にされていないよう。

もっと、単純な仕組みで、いろいろ解決策はあるやろうに・・・と改めて思った。
汲み取り式トイレでも、受け部分が漏斗型になっていて、溜っているモノは見えないようになっているのがあるし。

Aさんは、今は、夜中1回だけ使うというところでがんばっている。
しかしこれが、どうしても自力では歩いてトイレに行けなくなったら、
それでも、尿意はちゃんとあって、紙おむつを使う前段階として、
日常的にポータブルトイレを使うようになったら、独居のAさんが
上に足して、していくことをガマンしなくて済むような、いい方法はあるのだろうか・・・
(経済的なことも含めて・・・)

「仕方がないんやろな」そうおっしゃったという。
「それが(他の人に流してきてもらうまでは、溜っている上にしていくこと)、当たり前で、イヤとか言うとったらアカンのやろ」

あえて口にする人が、やっぱり、そう多くないから、
いろんなことを我慢してもらっていることで、“介護”というものが、
用具も人的サポートも制度も、なんとか、成り立っているのだ・・・

おおげさでなく、そう思う。

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