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聞き入れる魔法

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

昨日のコラムに書いたAさんのように、
「動作がしづらいことよりも、し慣れたコトを変えるのがイヤ」・・・という人は、
実際のところとても多い。
どちらかというと、特に高齢の男性。
今まで、いろんなことをご自分でずっとガンバッテやってこられたような
反骨心旺盛な方ほど、「自分がいいと思ったら、絶対に変えない」ということが多い。

友人の父上もそうだという。
「頑固もの」・・・と嘆いている。
素直に助言を聞き入れてもらえる魔法がほしいけど、残念ながらない・・・という。

確かに、一筋縄ではいかない。
昨日のAさんにしても、しばらく様子をみる・・・ということで私は帰っているので、
もしも直近に何か事故が起こったとしたら、なすすべがなかった・・・ことになる。
これを、「どうなっても本人の責任で仕方ない」とできるか・・・というと、難しいし
まして、身内であればなおさら。

ただ、いろんな人と関わる中で、
「自分がいいと思ったら、絶対に変えない」という人ほど、
「よくなりたい」という気持ちは強いと感じる。
裏を返すと、「信頼できる助言」に出会っていないからなのだ。
それが最近のことか、生きてくる中でもう身につけてしまった処世術なのかはわからない。
でも、唯一付け入ることができる隙間というのは、その「よくなりたい」という気持ち。
けっして、「悪くなって迷惑をかけたい」とは思っていないということ。
そうは見えなくても。
今までに、「悪くなりたい」「迷惑をかけたい」と自ら望んでいる人とは会ったことがない。
(ドラマのように、過去に何かがあって“復讐の鬼~”と化している人がいるのかは知らないけど)

関わるには、「根気」がいる。
すぐに結果を求めないということも。
そして、口(言葉)では伝えない。
本人が頑なにやっていることには、必ず理由がある。
ずっとそばにいなければ見えないことなので、理解することは難しい。
だから、まずは否定しない。
今やっていることをどうやったら、この先も継続できるのか。(気が済むまで)

たとえば、友人の父上のように、
「周囲からみると、いつ転倒してもおかしくないくらい危ない歩行の仕方なのに
いくら注意しても一人で外出しようとし、それでいて、していないとウソをつく・・・」
というような場合。

「隠す」という行為があるのは、自分でも「後ろめたい」ので、あえて触れない。
「してない」と言うなら、していないことを認めて、「じゃあたまにはしよう」と誘う。
もしも、それを「したくない」などと嫌がると、
意地悪なようだが、それをするのに必要なモノを
「じゃあこれはしばらくいらんね~」などと無邪気に言って、使えなくする。
悪気なくそうされると、自分が一人で勝手にする場合のハードルが上がるので、
頑固モノも、ちょっとは妥協策を考える・・・
・・・・というように、うまくいくものではないけれど・・・

結局、何にも役に立つアドバイスはできないなぁ・・・
ごめんなさい。
でも、けっして誰も、ココロから「悪くなりたい」とは、思っていない。
このことだけは信じて、関わってほしい。
ひとりひとり違うし、正解もないけれど。

このことを信じている。
それが、私がこの仕事をする何よりの支え。

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