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おかあちゃん

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

息子さんがお母さんを介護してはるお家への訪問が続いた。
Aさんは95歳、要介護4、Bさんは86歳、要介護4。
それぞれ、60代、50代後半とおぼしき息子さんが、一人で介護をされている。
どちらも、介護をして、もう5,6年になるという。

こちらからの、モニタリングに必要な質問に答えて下さる合間も、
ずっと、動いていろいろ用事をこなし(洗濯、洗い物、片づけ・・・)、
たえずお母さんにも話しかけている。
その、かける言葉が、お二人とも、ほとんど同じだった。
「ん?なんや? どないしてほしいんや?」

私は母に、こっちが「こうしたいから」という前提で話しかけている・・・気がする。
はたして、どうしたいのか、どうしてほしいのかを、こんなにしょっちゅう
たずねているだろうか・・・

玄関でベルを鳴らして、最初に出て来はった時の顔は
かなりな強面で、無愛想で(失礼・・・)
日常的に、慣れてはいるものの ちょっとドギマギしながらお邪魔した。

「おかあちゃん」と呼びかけるその声の、なんともやわらかい響き・・・
呼ばれているAさん、Bさんの表情も、とても穏やかだ。
「いいですね~」とAさんに言うと、「え~子ぉやねん・・・」とおっしゃる。

息子さんは、ちょっと照れたように、
「ずっと親不孝やったさかいな・・・」とぶっきらぼうにおっしゃる。
「まっとうやないさかい・・・」

まっとう?
何がまっとうで、そうでないのか、
そんなことよりも、この 「やさしい」なんて言葉で括るのがはばかられるほどの
お二人の間のぬくもりに、胸がいっぱいになった。

“母と娘”とひとくくりにしたらアカンけど、
でもなんというか、女同士目線というか、小学校高学年ごろから、
そういう、ちょっと意地悪な冷めた目で 母親のことを見るようになって
そのまま今もどこか そこから抜け出せない自分と母との関係性を想うと、
この息子さんたちの、母親に対する とことんの優しさに
ホントに、胸がいっぱいになる。

もちろん、親子の関係性なんて、いろいろあるので 一概にはいえないけれど、
年齢も環境も違う、お二人の素敵な息子さんに、立て続けに出会って、
母に向けている自分の目を、またちょっと改めて 意識しないと・・・と思った。

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