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オムツのおかげで

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

最近、夜ぐっすり眠れるようになったと、久しぶりに訪問したAさん(87歳 要介護2 女性)。
容量たっぷり(一回150mlとして、6回分吸収)の紙パンツをはいて寝るようにしたとのこと。

今までは、同居で、主介護者の息子さんが、
「オムツなんかつけるようになったらもう終わりや。ボケてしまう~」と、
時間を決めてトイレ誘導していた。
Aさんも、間に合わなかったら困ると、四六時中トイレのことが気になり、水分を控えたりもしていた。

しかし、寒い中、布団から引っ張り起こすのも、自分が起きるのも、だんだんえらくなってきて、
この前、ちょっと息子さんが体調を崩した時に、
「だんちょうのおもい」(???そうおっしゃっていた)で、紙パンツを買って、
はいて寝てもらった・・・とのこと。

最初は、緊張して絶対出ない・・・とAさんも思っていたらしいが、
「しらんまに寝てしもて、ちょっと出とった」そう。
濡れて気持ち悪いこともないし、これやったら「まあえ~かぁ」となり、
今では、目が覚めたら起きてトイレに連れてってもらうこともあるけど
寒いし「まあえ~かぁ」と思ったら、そのまま寝て、出たら出たにまかせているとのこと。

ボケることもないし、昼間はちゃんと、行きたい時にトイレに行っている。
「もう終わり」でもなんでもなかった~と、息子さんも一緒に、笑ってはる。

そう、そんなモンなのである。
うまく使えば、こんなに役立つものはない。
紙おむつメーカーの回しモノでもなんでもないですが・・・・

もちろん、不適切なオムツの使用でいろいろと問題がある場合もたしかにあるし
オムツ外し → 寝たきりゼロ・・・などと効果を上げている施設もある。

しかし、そんなにオムツを目の敵にしなくても・・・と思っている。
かといって、あからさまにオムツを着けてアピールするのも違うと思っている。

あくまで、フツーの生理現象であり、フツーの下着の範疇程度で語ればよいのだ。
個人的なこととして。
さして、さらに付け加えると、
オムツを着けるかどうかなどで、「人としての尊厳」など、どうにもならないということ。

なんだか、ちょっと投げやりだけど、
なんというか、「形」にこだわるしんどさ・・・というのに、最近よく直面する。
「介護に正解はない」し「人それぞれ」なのだから、ある意味仕方もないけれど・・・・

「形」にこだわる人の根拠が、「TVで言ってた」「本に書いてあった」「○○で言われた」
などなど、
そういうことももちろんあるだろうけど、
「うのみにしない」ということを、声を大にして言いたい。
このコラムもそういう面があるという自戒も込めて。

繰り返すが、「介護に正解はない」し、「人それぞれ」であるということは、
それだけ、何がその人に合う(向く)のか、どうしたらよりいい方法がみつかるか
目の前の人に、よくよく寄り添って、ともに見つけていくことだと思っている。
知識は必要だけど、取捨選択する目がもっと必要。
介護を通して、様々な自分にも出会う。
いいことも悪いことも。

Aさんの息子さんのように、
「だんちょうのおもい」の先に、ほっとやすらぎがあることもあるので。
お二人の笑顔に、とっても励まされた。

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