徘徊対策の現状
先日訪問したAさん(80代男性 要介護3)
発病後、元々の体重から徐々にではあるが20kgほど痩せたとのこと。
寝ても座ってもお尻と背中が痛く、どうにも安楽に落ち着けない・・・という。
特に痛むのは、お尻の仙骨部分と背骨の曲がったところ。
いつも奥さんに、クッションをこっち向けて背中の所にいれてほしい~とか、
体が傾く~などといろいろ訴えているようだが、
奥さんからすると、Aさんの要望が理解できない。
奥さんにとっては、椅子に腰かけて楽な姿勢というと、
ゆったりと背もたれにもたれ掛けるような(マダム然として)・・・だと思うらしい。
しかし、体を後ろに倒すほど仙骨部分に圧がかかる。
はた目には寛げないと思えるような、腰と背筋が伸びた姿勢のほうが楽なのだ。
Aさんがソファに腰かけた姿勢を見る。
Aさんの要望はまさにその“シャキ~ン”とした姿勢を求めているのだった。
クッションを背中のこっちに向けて入れ、座面の高さも上げるべく厚めの車いす用のクッションを入れた。
(元々は、膝よりお尻の位置が下がっていたため、背中の圧迫がきつくなっていた。)
訪問時よりもずいぶんとシャキ~ンっと座ったAさんは、表情が明るくなった。
奥様が言うこともわかるのだ。
健康な人が寛ぐ姿勢としては、正しい。
一生懸命に良かれと思ってアドバイスしていたのに、Aさんが反対のことばかり言うので
「この人が変」となっていた。
満足そうに、座っているAさんを見て、今までの要望の意味がわかったと、おっしゃった。
こういった食い違い?は、わりと、よくある。
ご夫婦でも、親子でも、「どうやったら楽か」を一生懸命に考えてくれるほど
ご本人にとっては むしろ苦痛な方向にいく・・・ことがある。
せっかくなので、考えてくれる時に、ほんの少しの想像力を足してほしいと思う。
痛いところ、不自由なところを自分の体に当てはめる。
背中を曲げて座ってみたら、椅子のどこが当たるのかわかる。
片側に力が入らない状態だと、どれだけ重心が傾くのか・・・などなど。
私も、少しでもその人の体の状態に近づくように真似て、いろんな動作をやってみる。
Aさんの横で、いろんな角度で座ってみた。
そして、Aさんに聞きながら、クッションの入れ具合を加減する。
Aさんがだんだん満足そうになると、横で見ている奥さんもだんだん笑顔になってきた。
今回手を加えたのは、ほんのちょっとのこと。
それでもこれで、Aさんちの日常的な言い争いが一つなくなるみたい。
よかった。