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坂部智子プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

よかれと思って

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

先日訪問したAさん(60代 男性 要介護3)
退院時に、住宅改修で家はすっかりバリアフリーになっていた。
車いすでの生活を想定した、安心、快適な設計。

改修にあたって、奥様が、
もう“いらない”と思ったものをあれこれ、ほかしていたらしい。
もちろん、保管するスペースが無くなったことや、
思い出してほしくない過去の遺物であったり、
“ほかす”ことの正当な理由はあったにちがいない。

しかし、Aさんは、当然あるはずのものがないので、“盗られた”と思い込む。
退院してきて半年、悶々としたその不満が、爆発した・・・

よかれと思って・・・と、奥様はおっしゃる。
けど、実際、その結果が本当に○になるかは、わからない。

極端な場合、
たとえ本人が、“全部ほかす”と言ったとしても
しばらくたって、「なんでほかしてん!!!」と怒り出すこともある。
(認知症うんぬん・・・のケースではなくても)

過去の恋を封印するために、
きれいさっぱり、モノも思い出もばっさり捨て去る・・・というのとは、ちがうのである。

たとえ、過去の自分がとても華やかに思えて、今との対比でつらくなることがあっても、
それは一時的な心の動き。

周りが、一歩引いて、受け止める寛容さが、どうしても必要。

ただ、すぐ身近な家族は、なかなかそこまでの余裕はない。
逆に、少しの余裕が「よかれと思って・・・」の発想を生むこともある。

本人にとっても、家族にとっても、そんな場面に出会うことは、
ほぼ人生において、はじめてなことが多い。
だからこそ、周りの専門家、介護にかかわるプロたちがきちんと伝えることが重要だと思う。

なってみないとわからない、心のこと。
一人ひとりちがうし、もちろん正解はないけれど。

環境を整えること以上に、大切なことが、ある。

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