人を傷つけるのは
まるで尾道バリの坂道、階段が続く地区のことを、前にもこのコラムで書いたけれど
今日も朝から 彷徨ってきました・・・
行きたい方向が突然に崖で遮られ、曲がったとたんよそのお家の玄関で道が消えたり・・・
右へ左へ、上がって下って、
手にしている地図がこんなに役に立たないなんて、
毎回泣かされます。
訪ねたお家は、古びた石段を登りきったところ。
時間の流れが止まったような、たたずまい。
91歳のご主人を介護してはる奥様からお話をおききした。
昭和26年、新婚すぐから住んでいるお家とのこと。
その当時からの生活が、そのまんまあった。
(昭和レトロ好きな方は、おそらく、泣くはず)
ご主人は、手術の後遺症で、記憶に関する機能のみが失われているそう。
(何年か前に読んだ「博士の愛した数式」の博士とおんなじ)
昔は、怒りっぽくて、文句言いで、笑うこともない人だったので、苦労したけれど
今は、記憶がもたないから、怒ることも文句を言うことも無くなって、よく笑うのよ。
こんな 楽しい老後がくるとは思わなかった~とおっしゃる。
実際のところ、尿モレが多く、しょうっちゅう着替えて・・・と、
介護に手はかかっている。(手がかかるという表現は、よくないですが・・・スミマセン)
できるだけ、水分とってもらっているの。
濡れても、洗濯したらいいだけだから~ と笑ってはる。
そして、
ここ最近は、何年も前に見送ったお姑さんが、昼夜を問わず ひょこっと表れて
「ぼちぼち(ご主人のことを)見てあげて」と、オムツが濡れたことを教えてくれるの。
ありがたいわ~
と、笑っておっしゃる。
それは助かりますね~
・・・と、私も答えていた。
「人生なんて、何が起こるかわからないけど、全部、受け取り方次第よ」
「私は、幸せな人生です」
満面の笑顔で、
きっぱりはっきりとおっしゃった。
ひととおりのモニタリングを終えて、お家を後にした。
来た道、古びた石段を また降りて。
振り返ったら、あのお家もなにも、そこにはもう無いんとちがうか・・・・・
というような、妙な感覚がした。
もちろんそんなことはないけど、
なんだか、ふりかえるのは、止めて、
石段をゆっくりゆっくりと降りた。
「受け取り方次第よ」
潔い、愛情と自信にあふれた声が
心の中で 何度も何度も、
ゆっくりと ひびいた。