経営コンサルタントは30%の改善効果が限界?
こんにちは。「専門家を使う専門家」のコラムの翻訳者、えりかです。
3回目のコラムでは、“固有技術と管理技術を間違えてコンサルタントを選んだ例”についてのお話です。
このコラムのポイントは、“課題の特質によって、固有技術と管理技術のどちらの専門家を選べばよいか間違えないこと”です。
そのためには“その課題が技術的な限界にあるかそうでないかを判断する”ということが重要になってきます。
さて、専門家を使う専門家の話が始まります。
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ある企業では鋳物部門での品質改善に長年、取り組んできましたが、いくら不良データを取っても、自社で何十年もやってきて、その積み重ねとして今の現状があるので、どの点を改善すれば良いかわからない。
業を煮やして、そこの社長は、コンサルタントにお願いすることにしました。知り合いのある経営者から、「あのコンサルタント会社にはものづくりに長けた先生がいますよ。」と言う推薦を受けて、その会社に相談しました。「品質分野の専門家」ということであるコンサルタントに来てもらいました。
ここからは、社長の体験談です・・・
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コンサルタントの説明を受けて、
なるほど、品質向上についての事例が豊富で「その企業に合ったオーダーメイドの進め方で行います。」と言われるので契約しました。
スタート時から徹底したデータの分析とヒアリングが行われ、現場サイドからは、「社長、前にも分析したことをまたやるのですか。」と言う不満が出ていましたが、コンサルタントを信用してやるようにと言って抑えました。
分析のために大変な負荷が当社の社員にかかりました。
なるほど、品質不良のデータは詳細にまとまり、問題点(ひけ巣=部分的に鋳物の材料が金型に流れていない現象)は相当細かく洗い出されました。
しかし、それからが問題でした。
コンサルタントからそれらを改善する技術指導がでてくると思っていましたが、そのコンサルタントは「私は鋳物の固有技術の専門家ではありません。技術的なことは社内の皆さんの専門ですので、改善案の考え方、作成の仕方、評価の仕方などの管理技術面の指導を致します。」と言われました。
結果として、若干の品質面での改善は見られたのですが、そのために管理面で追加として多くのポイントを押さえねばならなくなり、以後もかなりの労力を有さねばならないことになりました。
改善点は少なく、そのための管理負荷が膨大になりました。
更に2年目の指導では、品質管理の徹底ができているかのフォローコンサルティングをお願いし、毎月、「やったかやらないか。」のチェックをして頂きました。
今から思えば、本来は管理=マネジメントは当社の管理職が行うべき日常業務であったと思います。
また、今回は鋳物の品質向上をお願いしたのですが、この活動が終わったあと、
反省した点は、当社は昔は鋳物のベテラン技術者がいた。彼に聞けばこのような問題は解決できたのでは?と思いました。
しかし今はいないので何か変化点がでたとき、例えば、設備トラブルや材料が変更になるなどにより生産条件が変化した場合、製造する製品はガタガタになるのではないか、そして顧客が離れていくのではないかという恐怖心が芽生えています。抜本的に技術面での見直しと人材の育成をはからねばと思いました。
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以上が、実際にある社長からお聞きしたお話です。
この会社からは、具体的にご相談を受けて、「鋳物の固有技術の経験者」の技術コンサルタントの方に行っていただいたところ、
製品のひけ巣を見て、「鋳物の湯入れは小柄な作業員が行っているだろう。大柄な作業員に即刻、変更しなさい。」とコメントされました。実際、湯入れは小柄な女性の技能実習生が担当していました。大きな容器を担ぎ、足元もふらつき気味で、湯入れ時にはチャプン、チャプンと揺らしながら入れていました。大柄な作業員、同じく技能実習生の男性に代えましたところ、一気に流せ、ひけ巣は一瞬にして解決できました。
固有技術の専門家で、わずか1日の指導で解決しました。
課題の特質を理解し、それに合った専門家を活用することが最短の近道です。課題の特質とは何なのか。その課題は、
①技術的な面は徹底して追及が済んでいて、技術的には限界にきているのか。
②技術的にまだまだ突っ込みができるのか。
によって頼む専門家の分野が違います。
①の場合は、「管理技術の専門家」、いわゆる経営コンサルタントです。
②の場合は、「固有技術の専門家」、技術コンサルタントでかつ鋳物の製造経験者であることです。
今回の場合、最初に「管理技術の専門家」である経営コンサルタントにお願いしたことは完全な無駄とは言えませんが、まずは、「固有技術の専門家」である鋳物技術コンサルタントに頼んでおけば、回り道をしなくて、一気に解決できたことでしょう。
※ここで言う専門家とは、その学問分野や事柄を専門に研究・担当し、それらに精通している人。エキスパート。スペシャリスト。具体的には、経営コンサルタント、技術コンサルタント、技術者、企業OB・OGなど。
企業側の課題=扱いにくい問題領域に解決策を生み出したい。
扱いにくい問題領域に解決策を生み出す能力=スキル、技と呼びます。
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