家が高くなりました。これからどうなる。これからどうする。

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:家を建てるときの新常識

ここ数年、建築価格は高くなる一方です。

注文住宅も、建売住宅も、分譲マンションも高騰が続いています。

そして当然ながら、賃貸物件の家賃も上がり続けています。

住宅というのは生活の基盤です。

幾ら今の住宅価格が高いといっても住む場所は必要ですし、家族構成の変化などで「いくら高くても広い住宅を手に入れなければならない」という人もいるでしょう。

屋上庭園

今回は、「家が高くなった原因」「これからどうなるのか」「どうすればいいのか」を書いていきたいと思います。


建築施工費用の原価が高くなったこと


家の値段が高くなったといっても、施工会社が大もうけしている訳ではありません。

そもそも家を建てる原価が高くなったことが原因です。

施工原価が高くなった要因については一口には言えませんが、たとえば、

・世界的な物価の高騰で基本的な建築材料が高くなった

・円安で輸入品、物流などのコストが高くなった

・家を建てる人の労務費が高くなった

このあたりは容易に想像がつくと思います。

・・・昨年までの家の価格の上昇はこれらの原因で説明が出来るのかもしれませんが、今年になって新たな要因が現れました。

建築基準法、省エネ法の改定で高くなりました


気付いている人も多いかもしれませんが、今年の4月以降、家の価格は確実に高くなりました。

春以降、特に家が高くなった理由は建築基準法、省エネの改正です。

簡単に説明すると、

ほぼ全ての新築住宅に高度な断熱仕様が必要になった
壁、床、天井すべてに高性能な断熱仕様が必須になっただけでなく、すべての窓やドアを高性能な断熱仕様製品にしなければなりません

2階建て木造住宅に構造計算が必要になった
今まで2階建て木造住宅の多くは構造計算が必須ではありませんでした。
この春以降、2階建て木造住宅にも構造計算が必須になっています。
今まで必須でなかった構造計算を行うのですから、当然、この分のコストはアップします。
安全性は上がっているので住む人にとっては悪いことではありませんが、安さを売りにしているハウスメーカー、建売住宅などは大きな影響をうけたと思います。

家を建てるときの事務手続きが増え、工期も長くなった
これらの法改定にともない、着工までの手続きは増えて複雑になり、着工後の施工手間や検査項目も増えました。
当然、これらはコストアップに反映されます。


これらの法改正は緩まることは無いと思いますので、今後も「建築基準法、省エネ法の改定によるコストアップ」は定着すると思います。

木造住宅


これからどうなるのか


そういえば公共事業の大型プロジェクトも軒並み建設費高騰で困っているようです。

東京の中野サンプラザも建築価格高騰で迷走しているようですね。

積算の専門家がキッチリ計算した大きなプロジェクトが違約金を払ってでも中止になっているのです。

先を見通すのは難しく、工事価格を引き下げる方法は簡単には見つかりません。

建築コスト

積算や経済のプロではない私が予想しても当たらないかもしれませんが、私も当面家が安くなる見込みはほとんどないのではないかと思っています。

更にその先の予想ですが急激な値上げはなくても、家の価格は徐々に価上昇していくのではないでしょうか。

住宅ローンの金利も上がってきそうな気配ですし
家を建てるなら今が一番条件が良い(=将来はもっと高くなる)
という、悲観的な予想しかありません。

建築技術、性能は確実に進化しています。

しかし家を建てるトータルコストについては当面安くなる可能性は低そうです。


何とかならないか


住宅についての状況は非常に厳しい状況が続きますが、それでも住むところは必要です。

家族構成の変化などで、どうしても広い家が必要になる人もいるでしょう。

嗜好品などと違って「今は時期が悪いからやめておく」とはいかないのが住宅です。


この厳しい状況でどうやって家を建てたら良いのかについてですが、私はこれからの家づくりのキーワードは、シンプル、高性能、高寿命だと思います。

シンプルというのは、なるべくすっきりした造形、合理的な設計をすることでコストを下げることです。デザイン的に古くならないことも大事かもしれません。

高性能は耐震性だけでなく台風、竜巻、土石流などあらゆる災害への危険度を下げる家。つまり安心して住める環境を用意することです。

高寿命は耐久性が高くしっかりした構造躯体、そしてなるべくメンテンナンスコストがかからない家を目指すことです。


RC住宅


確かに住宅価格は高くなりました。

しかし高いからと言って小手先のコストダウンを行いながら家を建てても、あまり満足度はあがらないのではないかと思います。

今後何十年というスパンでも考えたら、丈夫な躯体で災害時にも安心、流行に流されず古くならずメンテナンス費用もあまりかからない・・そういう家を目指すのであれば建てる意味は充分あるのではないでしょか。

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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士、コンクリート診断士、マンション管理士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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