第一種低層住居専用地域に3階建は建てられるか
家を建てるとき、建築する土地によって様々な規制があります。
主に家の床面積を規制する容積率や建蔽率、高さを規制する高度地区や斜線規制。
建てられる建築物の種類を規制する用途地域というものもあります。
さらに火災に関する規制として「防火地域」「準防火地域」「22条地域」などがあります。
今回取り上げるのは、その中で最も厳しい火災に関する規制、防火地域です。
いままで「防火地域に住宅を建てるのは大変」「防火地域の家はすごく高くなる」などの話を聞いたことのある人もいるかもしれません。
「防火地域に家を建てようとしたら工務店やハウスメーカーに断られた」という人もいるでしょう。
今回のコラムは「防火地域に家を建てる」ということについて、実際にはどうなのか検証していきたいと思います。
防火地域はどこにある?
まず、防火地域というのが、どういう場所にあるのかについて、神戸市を例にして説明していきます。
下の図は神戸市の中心部、三ノ宮付近の防火地域を示した地図です。
濃い赤色の部分が防火地域になります。
三ノ宮駅の周辺、駅から市役所など海側の部分はほぼすべて防火地域ですね。
確かにこのあたりは繁華街、ビル街とかの都心部にあたり、防火に注意する必要がありそう=防火地域に指定されても当然とエリアですね。
次に、少し離れて神戸市の須磨区、東須磨駅近くの防火地域です。
広い道路に沿って防火地域が指定されています。
しかし、Googleストリートビューなどをみて貰うとわかりますが、このあたりは普通の戸建て住宅が多い地域でもあります。
駅から近い住宅地を探していたら防火地域だった、というのも結構あるのではないでしょうか。
防火地域にはどんな家が建てられる?
防火地域に建てられる家は、小規模な建物を除き、そのほとんどが耐火建築物になります。
防火地域に建てられる家(耐火建築物)について、構造別に大まかに説明すると、
鉄筋コンクリートの家
問題なく建てられます
重量鉄骨の家
鉄骨に耐火被覆を行えば、建てることが出来ます
軽量鉄骨(プレハブ)の家、木造の家
特殊な認定を受けない限り、建てることが出来ません
このようになります。
最初に書いた防火地域に家を建てようとしたら工務店やハウスメーカーに断られたというのは、このような理由です。
土地が防火地域で得をすることもある?
家を建てる上では規制が厳しく、デメリットばかりのように思われる防火地域ですが、良いこともあります。
土地が安くなることがある
たとえば下の図のように同じような住宅地【A】【B】がある場合、
条件が同じであれば防火地域にかかっている住宅地【B】の方が安くなることがあります。
理由は先程書いたとおり防火地域を苦手とする工務店、ハウスメーカーが多いからだと思われます。
容積率、建蔽率が高い
都心部に多い規制ですので、防火地域に指定されている土地は容積率、建蔽率が高めであることが多いです。
便利なところが多い
駅前などは、防火地域に指定されていることが多いですね。
駅に近いなど利便性の高い土地が多いというのは、大きなメリットですね。
実際にこういう家を建てました
実際、防火地域の住宅地に、こういう家を設計したことがあります。

構造は鉄筋コンクリート、2階建の住宅です。
シンプルな間取りですので、コスト面についてはかなりローコストになっています。
土地の値段が安くなっていたと考えれば、かなりお買い得ですね。
鉄筋コンクリートの住宅は高いという先入観があるかもしれませんが防火地域で鉄筋コンクリート耐火建築というの組み合わせで考えるなら、合理的な建築構造かもしれません。
防火地域の建築なら建築士に相談してください
防火地域は都市部に設定されていることが多いので、防音などが気になることもあるかもしれません。
広い土地が少ないので、3階建を検討する人もいるでしょう。
防火地域での建築には様々な建築規制がかかりますので、建築計画をたてるのはちょっと面倒なところもあります。
だからといって、家が建てられない訳ではありません。
なんといっても利便性の高い、生活に便利な土地が多いのですから、うまく設計すれば住みやすい住まいを作ることが出来るかもしれません。
ハウスメーカーや工務店では難しいと言われてきた人もいるかもしれませんが、建築士であればどんな家が建てられるのか、新たな視点で提案できることもあるかと思います。
防火地域での建築を計画されている方は、是非建築士に相談してみてください。



