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木造住宅で木のぬくもりを・・・今の家にそんなものはありません。

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:家を建てるときの新常識

木造住宅というと、昔ながらの日本の家、木の柱に掃き出し窓、縁側などのしつらえに懐かしさを覚える人も多いかもしれません。

現在もハウスメーカーによっては「木のぬくもりを感じる木造住宅」のようなキャッチコピーを見ることがあります。

しかし残念ながら現在の木造住宅には「木のぬくもり」を感じるような家はほとんどありません。

「木のぬくもりの感じられる木造住宅を建てたい」と思っている人、今の住宅建築についてのイメージが間違っています。

今回は今どきの木造住宅の話、特に昔の木造住宅と今の木造住宅の違い、そしてこれからの木造住宅についても書いていきたいと思います。


昔の木造住宅はこんな感じです

昔ながらの日本の家というと、この写真のようなイメージを持っている人もいるかと思います。

古い木造
この家は在来木造軸組。構造としては、重い瓦屋根を柱で支えるつくりになっています。

壁も少なく、広々とした部屋と広い掃き出し窓が特徴です。

柱や梁は室内に露出していて、まさしく「木のぬくもりを感じられる」家になっています。

昔の家

今の木造住宅は壁だらけ


それに対して今の木造住宅は、一般的にこんな感じで作られています。

まず壁には筋交い、耐震壁が多数入ります。

木造筋交い
次に、外壁に面する壁については断熱材が入ります。

木造断熱
最後に、これらを塞ぐように、壁をボードなどで仕上げていきます。

内装仕上げ
最終的には壁に壁紙を貼り、内装を仕上げて、出来上がりとなります。

これらの工事写真を見て貰えればわかりますが、仕上がった内装には、どこにも「木のぬくもり」のようなものはありません。

木造住宅は何故こうなったのか?


何故、今の木造住宅はこんな風になったのか・・・理由は大きく2つ、耐震性の向上断熱性能の向上のためです。

元々の在来木造、昔ながらの「柱で屋根を支える家」は、横方向の地震の揺れに対して非常に弱い構造になっています。

昔ながらの重い瓦屋根と木の柱の家は、今の耐震基準をまったく満たしません。

耐震のためには耐震性のある壁を増やす必要があります。


もう一つは断熱性能の向上のためです。

昔ながらの家
写真を見て貰っても充分想像出来ると思いますが、昔ながらの家のつくりでは断熱性はほぼありません。

空調を使う今の住宅において、昔ながらの家では空調光熱費が膨大になりすぎるのです。

木造住宅はますます「木造」っぽくなくなります

2025年4月より「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(建築物省エネ法)」の改正法が施行されます。

この建築物省エネ法では、殆どの住宅に対して省エネ基準への適合が求められます。

また同じく2025年4月より、普通の2階建て住宅にも構造計算書の提出が義務化されます。
(今まで構造計算が無かったのがおかしいのですが・・・)

これらの法改正により、木造住宅はますます壁が増えて、柱は隠され、「どういう構造がわからなくなる」でしょう。

これからは更に「普通の木造住宅」はますます「木造っぽくない住宅」になっていくと思われます。

和のテイストだからといって木造である必要はないのでは?

そもそも、現代の建築において、構造と意匠(仕上げ)は別のものです。

例えばモデルハウスを見学したとき、その家の構造が在来木造なのか鉄骨なのか、わかる人は少ないのではないでしょうか。

和室
上記写真、和室のある家の構造は鉄筋コンクリートです。
(どちらも私が設計した家です)

この写真だけをみても、この家の構造はわからないでしょう。


「木のぬくもりが感じられる家が欲しい」「和のテイストのある家が欲しい」というのはわかりますが、「だから木造住宅がいい」というのは違います。

「木をふんだんに使った内装」「落ち着きのある和室」は、意匠設計によって実現すべきものです。
その場合の家の構造は鉄筋コンクリートでも鉄骨でも構わないのです。


「構造はしっかり」「断熱は高性能に」「内装は住む人の好みに合わせて」というのが、今の家づくりだと思います。

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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

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