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ハウスメーカーの家は高すぎるのでは?という人へ

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:家を建てるときの新常識

今回はハウスメーカーの家は高すぎるのでは?という疑問をもっている人へ、建築士が本音でアドバイスをするコラムです。


ここでいうハウスメーカーとは、積水ハウス、大和ハウスなど、だれもが名前を聞いたことのある大手住宅メーカーのことです。

家を建てたいと思う人がモデルハウスなどで見積を取る場合、まず最初に名前の聞いたことのある大手メーカーに行くことが多いでしょう。

そして、そこでの見積が「坪単価150万円以上」とか「総額4000万円超え」とかになって驚く、というのが最近よくある話になってきています。

特に理想を詰め込んだ「一番最初の見積」では、予算を大幅にオーバーする、驚きの値段になることが多いようです。


物価高、人手不足の影響はわかりますが、大手ハウスメーカーの家については普通の住宅ローンでは購入できないような値段になってきており、さすがにそれはどうかと感じている人も多いでしょう。

大手住宅メーカーの設定価格については「いくらなんでも高すぎないか」「ぼったくりではないか」「損しているのではないか」・・・そう思う人もいると思います。

ここではそういう人に向けて、建築士としての意見を書いていきます。


この値段は適性価格なのか


地元の工務店などに比べてもかなり高いハウスメーカーの見積価格、これが適正価格なのかについてです。

これについてはちゃんと売れている以上、この値段が適正価格であるとしか言い様がありません。


たとえば何百万円もするブランドバックやブランド腕時計について「原価は安い筈だろう」と言っても意味がありません。

ちゃんと商売として成立している以上、それが「適正価格」なのでしょう。

資本主義ですからモノの価値は原価によって決まるのではありません。

「売れるかどうか」が値段設定の判断基準になります。

ハウスメーカーの家は単価は非常に高いのですが、ちゃんと売れており、会社はちゃんと存続しています。

売れている以上、家の原価がどうとか、そういう話ではありません。

・・・ただ建物を原価ベース、、材料や施工、住宅性能を考えると「割高」であることは間違いないと考えています。


ハウスメーカーの家は何故高いのか


では、大手ハウスメーカーの家は何故高いのかについてです。

これについて、一つは広告費、営業経費、開発費などの間接的な経費が高いからだと思います。

ハウスメーカーはテレビやネットでの広告、立派なモデルハウス、豪華なパンフレットなど、営業に力を入れています。

これらの経費は、家の値段のかなりの部分を占めていると思います。


また、建築事務所や中小の工務店との大きな違いは「営業サービスだけのスタッフが多数存在する」ことだと思います。

通常、建築事務所のスタッフは基本的に技術者であり、営業サービス専門のスタッフはいません。

中小の工務店の多くも同じような組織形態です。

それにくらべて大手ハウスメーカーのモデルハウスでは「営業だけ」を行うサービススタッフが常駐しています。

華やかなモデルハウスとサービス専門の営業スタッフの経費分、どうしても家が高くなるのはしょうがないのかもしれません。

モデルハウス


良いところもあります


もちろん、大手ハウスメーカーに良いところもたくさんあります。たとえば以下のような点です。

品質の安定性
構造材料の加工など、準備の殆どは工場で行いますし、施工は慣れた専門スタッフ(下請けですが)が行います。
工事手順もキッチリ決まっていますので、大きなトラブルは殆ど無いと思います。

構造の安定性
規格化された工法ですから、構造の安定性はキッチリ守られています。

経営の安定性
施工した会社が存続していること。
将来のメンテナンスなどを考えてもこれは結構大事です。
最大手2社+αくらいは当面潰れないと思うので、将来のメンテナンスも少し安心です。


建築士の仕事としてリフォーム、リノベーションの依頼をうけて大手ハウスメーカーさんの家に手を入れることもあります。

古い住宅はいろいろと不具合があるものですが、ハウスメーカーの軽量鉄骨の住宅の場合、躯体についてはしっかりとした状態のものが多いようです。

また、会社名は書きませんが、20年後、30年後でも顧客データを長く保存、管理しているという大手住宅メーカーもあります。

問い合わせをしたときに、ものすごく経験豊富で適切なアドバイスをしてくれる営業担当の方がいる会社もあります。

こういうとき「余裕のある大手会社の強み」のようなものを感じます。


しかしハウスメーカーに騙されないように


「値段が高いのにこれは問題だろう」と思うところもあります。

それは、営業サービススタッフの「質」です。

ハウスメーカーの営業スタッフはサービス専門職です。サービス精神は建築士などの技術者とは比べものにならないでしょう。

ただ、かれらは「営業サービス」専門職で、家について、建築についての専門職ではありません。

自社の「商品」については詳しいかもしれませんが、住宅建築技術というものを俯瞰的に理解していない人も結構います。

また、どうしても若いスタッフが多いので、経験から語るようなことも出来ません。

もちろん、すべてのスタッフが専門家である必要は無いのですが、自分が知らないことについて「適当なことを言う人」がいるのも事実です。

「わかりません」「しらべておきます」というのは誠実な方です。

その場限りだと「適当な説明をする」人、わからないことは「これは出来ませんので」と答える人もいます。

こういうスタッフが担当につくと、家づくりは間違った方向に誘導されていきます。

実際、私も何度か「ハウスメーカーさんと建築主のトラブル」について相談を受けたことがあります。

高い家を売っているのだから、もっと専門知識のあるスタッフを揃えてほしいと思います。

間取り


最後に本音でアドバイス


いろいろと書いてきましたが、最後に大手ハウスメーカーの家が向いている人とは、どんな人かを書いていきたいと思います。

まず、家を建てる土地についてですが、郊外のニュータウン大型造成地のような、整形地で高低差のない綺麗な土地であることです。

造成地

ハウスメーカーは基本的に規格モジュール単位で間取り設計を行いますので、変形地、狭小地などは苦手にしています。

土地はすっきりした形が望ましいと思います。


次に標準的なサイズ、間取り、部屋構成で、デザインなどに特別なこだわりが無いこと。

モジュール設計の家ですので、階高や廊下、階段のサイズなどを微調整するのは苦手です。

内装や住宅設備についても「カタログから選ぶ」のが基本ですので、特殊なものを選ぶのはトラブルの元になりがちです。


そしてもちろん資金に余裕があること。

品質の安定性と安心を求める人。

・・・ここが一番大事かもしれません。


上記のような人には、大手ハウスメーカーの家は高くても充分おすすめできると考えています。


・・・では反対に「大手ハウスメーカーの家が向いていない人」とはどんな人でしょうか。
それは、上記に当てはまらない人です。

たとえば建築する土地が変形地、傾斜地である人。

また、土地探しから住宅建築を検討したい人も向いていないでしょうね。


インテリア

写真は私が設計を担当したものです。

こういう個性的な家を求めている方も、ハウスメーカーには向いていないのかもしれません。


そもそも大前提として、「大手ハウスメーカーの見積は高すぎる」と思った人は、向いていないと考えたほうが良いのかもしれませんね。

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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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