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高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【バリアフリー改築の場合】

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:家を建てるときの新常識

今回から何回かに分けて、高齢者に向けた家つくり、バリアフリーの家づくりについて書いていきたいと思います。

現在、介護に直面してバリアフリー改修を必要としている人、将来に備えてバリアフリーの家を検討しておきたい人、今後両親との同居を考えている人などの参考にして貰えればと思います。


まず、今回は戸建て自宅のバリアフリー改築についてです。

私自身、体の不自由な親がいますので、十数年前から何度か実家のバリアフリー化に関わってきています。

その理由も含めて、バリアフリー改修について、考えていることを書いていきます。


場当たり改修でも仕方ない


実際に長年家のバリアフリー改修に関わってきて一番実感したことは、
将来にわたってこれが正解!といえるような改修プランは無い
ということでした。

将来に備えてバリアフリー仕様で家を建てたい場合、あるいは大規模改修していく場合、当然ながら「これからずっと生活しやすい家」を目指して改修計画をたてると思います。

しかし人間の健康状態はいつまでも同じではありませんし、まして高齢者のこれからの体調など、誰にも判りません。

たとえば足が弱ったのですべての廊下に手摺りを付けたら、その後、車椅子生活にになった時に手摺りの出っ張りが邪魔になる・・・こういうことが実際にあります。

実際、私の両親が住む家でも、

高齢のため体が少し不自由になってきたので、お風呂を改修した
→お風呂は介護施設で入るので、家のお風呂はシャワーくらいしか使わなくなった。

廊下やトイレ内にも手摺りを追加
→廊下の手摺りは車椅子の通行に邪魔になった。
→トイレは手摺りの必要な位置などが違ってしまい、手摺りを付け替えた。

など「そのときに最適化」された改修が、ずっと使えるものでは無くなっています。

段差解消
現在、車椅子を使う両親の家では、場当たり的にあちこちにこのような段差解消グッズを取り付けてあります。


今の状況に対応した改修を「家中一気に」行いたくなる気持ちは判りますが、人間の体はいつまでも今の状態が続くわけではありません。

ある程度、将来を見通して改修を行うことは大事ですが「すべてを完璧に」行うことはむすかしいのだという達観も必要になると思っています。

どうしても場当たり的になってしまいますが、その場その場に合わせた最適化を行っていくのが、現実的な解決方法といえるのではないでしょうか。


バリアフリー改修の情報提供にはケアマネージャーさんが大事


家の改修の必要性がある人がまず相談してほしいのがケアマネージャーさんです。

ケアマネージャーさんは、改修に関する公的補助金に関する情報の他、介護補助用具のリスト、機器カタログなどの知識を持っています。

バリアフリー改修というと、リフォーム工事屋さんの行う大工仕事というイメージもありますが、最近では介護補助用具も充実していますので、改築するより用品をレンタルして使った方が良い場合もあります。

どんな介護用品があるのか、レンタルが良いのか購入が良いのか、補助金などの公的支援はあるのか・・・こういうことについては工事業者よりケアマネージャーさんの方が情報を豊富に持っている可能性があります。


もちろん建築士にも知見はありますが、補助金の申請などはケアマネージャさんの仕事になりますので、ケアマネージャーさん抜きに改修工事計画を立てるのはあまり合理的とは言えないでしょう。

ケアスロープ
写真は玄関の上がりかまちに使う車椅子用のケアスロープです。

こういう用品は段差の高さと玄関の広さに合わせていろいろな種類がありますので、家に合わせて介護用品カタログから選んでいくことなります。

どんな用品が良いのか、レンタルが良いのか購入すべきなのか・・・・バリアフリー改修については、是非ケアマネージャーさんの意見を取り入れるようにしてください。


消極的なバリアフリーをおすすめします


先程書いたことととも重なりますが、バリアフリー改修では「すべて」を「完璧に」パリアフリーにすることは考えず、バリアフリーを行う場所とそうでない場所を分けて考える、エリアを分けた「消極的バリアフリー」をお勧めします。

たとえば、最近の家では複数のトイレがある家も多いのですが、すべてのトイレを介護用にするのではなく、メインで使うところのみをバリアフリー改修すること。そしてそのトイレへの動線のみ、行きやすいように改修することが現実的な解決方法かもしれません。

他にも、階段を使う2階以上はバリアフリー改修に含めず、主な生活空間を1階だけに限定する。
玄関からの生活動線を優先的に改修し、その他は後回しにする。これも合理的な判断でしょう。

家のすべてをバリアフリー化するのではなく、範囲を限定すること。こういった思い切った考え方も大事なのではないでしょうか。


水廻りについても、特にお風呂などは専用施設に任せた方が良い場合が多いと思います。

介護バス
写真は株式会社アマノの介護バスです

こういう機器はどんどん進化していますが、個人で買い、自宅に設置するのは現実的にはかなり無理があると思います。

こういう場合は無理をせず、介護施設の送迎サービス、入浴サービスを利用した方が良いと思います。


公的な介護サービスを有効に活用すること


介護保険制度が始まってから、在宅での介護サービスは大きく変わりました。

今まで介護は「家でおこなうもの」というイメージがあったかもしれませんが、今ではデイケア、ショートステイなどの地域密着型のサービスが充実しており、殆どの施設では自宅までの送迎サービスも行っています。

これらの介護施設では入浴サービスなどもありますし、理学療法士などのリハビリサービスを行っているところも多くあります。

もちろん、ある程度体に自由が利くうちは自宅生活がメインであるという人が多いと思いますが、いざというときにこういった介護サービスが受けられるというのは大きな変化だと思います。


こういった介護サービスを利用する場合、大切なのは家からサービスカーまでの経路を確保することです。

玄関手摺り
現在のバリアフリー改修でまず最初に手を付けるべき部分の一つは、この「道路から玄関までのアプローチ部分」になるかもしれません。

家の中から送迎車が来てくれるところまで行くことが出来れば、介護サービスを受けるときも便利ですし、普段の外出時にも役立つと思います。


今まで書いてきたとおり、高齢化による体調の変化には多様性があり、またずっと同じ状態が続くわけではありません。

また、いくら介護用に家を改築しても、介護を家族で継続的にすべて行うというのは現実的には難しいと思います。

バリアフリー改築については、家の改修ですべてを一気に解決しようとするのではなく、状況に合わせて改修していくこと、そして上手く外部の手を借りられるように改修していくことが良いと思います。


  ◇ ◇ ◇


家を作るときに考えて欲しいことについて、こちらのページに纏めてみました。

テーマ別コラムのまとめ【ペット/寒さ対策/子育て/地震に強い鉄筋コンクリート住宅など】

興味のある分野があれば、是非、目を通して下さい。


 ◇ ◇ ◇


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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

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