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第一種低層住居専用地域に3階建は建てられるか

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:家を建てるときの新常識

今回のコラムは、第一種低層住居専用地域で家を建てる人に向けて書いています。

・・・まず最初に、今回のコラムの内容はすべての土地そのまますべて適用できるとは限らないことをお断りしておきます。

どんなサイズの家が建てられるのかについては土地の形状、方位、前面道路幅員や間口によっても変わってきますし、その地域の建築条例などに左右される部分もあります。

どんな家が建てられるのかについての最終的な判断は、その土地土地に合わせて、建築士に相談して下さい。


最初に結論・・・建てられる可能性あります


上記のことを御了解頂いた上で、まず最初に結論を書きますが、

一種低層地域でも3階建を建てられる可能性は充分にある

このように考えて貰って良いと思います。


今まで、ハウスメーカーや工務店に家の新築の相談をして、
「一種低層地域ですから、2階建までしか建てられません」
と言われた方もいるかもしれません。

しかし、この「2階建までしか建てられません」は、「うちのメーカー(工務店)では2階建までしか建てられません」という意味だと思います。

設計を工夫すれば、もっと自由に家を建てることが出来ます。

具体例でみていきましょう・・・神戸市の場合


例として、神戸市東灘区の第一種低層住居専用地域について検証してみます。
神戸市情報マップの例
この土地の建築規制は「神戸市情報マップ・用途地域」によると、
  区域区分:市街化区域
  用途地域:第1種低層住居専用地域
  建ぺい率:建ぺい率60%
  容積率:容積率150%
  高度地区:第1種高度地区
であることが判ります。

建築法規のうち家の高さに関する建築規制には「道路斜線」「隣地斜線」「北側斜線」「絶対高さ制限」などがありますが、この土地の場合、3階建てを阻む家の高さに関する規制情報は、主に、
  ・第1種高度地区による高さ制限
になると思われます。
神戸市の第1種高度地区

屋根が引っかかる・・・木造建築の問題点

このような土地で、工務店、ハウスメーカーが3階建てを建てられない理由は、大抵、「屋根が高さ制限に引っかかる」からです。
屋根勾配あり
この場合、1階の床の高さ、各階の階高、屋根の形状などを調整することで何とかならないか、と考える方もいるかもしれません。

しかし、たとえば木造であれば、以下のような問題が発生します。

・1階の床を下げる
→木造の場合、防湿、シロアリ対策の面から、基礎の立ち上がりは建築基準法で30cm以上と定められている

・各階の階高を下げる
→各部屋の天井高を2.3mくらいまで低くしても全体で40cmくらいしか低くならない。
(天井高2.3mでは、リビングは窮屈すぎる)

・屋根の形状を変える
→瓦屋根、スレート屋根の場合、雨漏りの心配があるので無理。金属屋根であれば可能性があるが、天井裏も殆ど取れないので、かなり厳しい。
(木造の場合、雨漏りに弱いので屋根の勾配を下げることはお薦めできません)

また、ハウスメーカーの軽量鉄骨の場合、元々モジュール単位の規格化住宅なので、「全体の高さを少し下げる」というのは、全く対応していないと思います。

高さ方向を工夫して3階建をつくる


今までの図を見て頂ければ判りますが、3階建てを妨げている原因は、主に「屋根の部分の高さ」と「地盤面からの床の高さ」です。

どちらも、家を「雨や湿気から守る」という目的には必要なことなのですが、そのために家つくりの自由が奪われているという面もあります。

逆に言えば、家自体の構造を「雨や湿気に強い」構造にすれば、これらの制約から離れ、自由な家つくりが可能になります。

陸屋根
家自体の防水性能を上げて、屋根の形状をこのような形状(陸屋根)にすれば、「絶対高さ制限10m」の地域でも、3階建が建てられるのです。

木造や、モジュール設計のハウスメーカーでは難しいのかもしれませんが、防止性能の高い鉄筋コンクリート構造や、重量鉄骨構造であれば、このような家を建てることも可能になります。


また、このような屋根形状は、屋上を活用する場合にも有効になります。

特に一種低層住居専用地域の場合、周囲の建物の高さも制限されていますので廻りに高い建物が無く、屋上からは視界が広がります。
屋上のある家

屋上のある家
陽当たりも良く、外からの視線も気にならない屋上には、様々な活用方法があると思います。

都会の家の設計手法・・・視線をずらす


高さ方向の設計の自由度が上げれば、高さ方向に規制の厳しい一種低層住居専用地域でも、様々なプランが考えられるようになります。

たとえば、一種低層住居専用地域では高さ規制が厳しい分、どうしても同じような家が多くなり、結果、窓の高さ位置が揃ってしまい、周囲の家からの視線が気になる場合もあるかと思います。

そのような場合、高さ方向に自由な設計を取り入れれば、階高や窓の高さを変えることで視線をずらすことも出来ます。
階高を変えた家
階高を変えることは「隣との視線が合わない」「道路からの視線が合わない」などの他、「天井高の高い、開放的なリビングを作ることが出来る」というメリットもあります。
天井高の高いリビング

1階部分に収納スペースや駐車場を作ることも可能です。
ビルトインガレージ
駐車場は、天井高を低くすることも出来るので、3階建ではなく、2.5階建くらいの高さにすることも可能です。
ビルトインガレージ
写真のビルトインガレージは、天井高2.2mです。

土地の形状、地盤面の高さに合わせて、このようなスペースをとることも可能です。

傾斜地などでも自由な発想で家づくり


高さ方向の自由さえあれば、3階建だけでなく、もっと様々なプランを考えることも出来ます。

傾斜地のプラン(断面図)

第一種低層住居専用地域だからといって、絶対に2階建までしか家が建てられない訳ではありません。

家の構造、形を自由な発想で変えることによって、3階建を含めた、様々なプランを考えることが出来るのです。

その土地に様々な規制がある中でどんな家を建てられるかについては、必ず建築法規の判った建築士と話をしてみて下さい。

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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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