高齢者の家。バリアフリーをどこまで考えて家を建てるか【バリアフリー改築の場合】
リフォームについては、新築に比べると情報が少ないためか、いろいろと誤解があるように思います。
今回はリフォームについての新常識、主にコスト面について、いろいろと書いていきます。
◇一戸建ての全面リフォームは安くない
一戸建て住宅の全面リフォームとは、柱や梁などの構造部分まで行うリフォーム、外塀や屋根など、外部まで改修を行うようなリフォームのことです。
工事内容としては、テレビの人気リフォーム番組でやっているような工事をイメージして頂ければ良いでしょう。
家の大きさにも依りますが、このような全面リフォームに掛かるコストは、直接的な工事費用だけで一千万円以上になるのが普通です。
こうなると、住宅を新築するのと工事価格が変わらなくなります。
実際、結果として「リフォームだけど新築より高い費用が掛かった」というのも珍しくありません。
もう一点注意して欲しいのは、全面リフォームの場合、工事中に住人はそこに住み続けることは出来ないことです。
こうなると、リフォーム工事中に引っ越しや家財道具の移動も必要になります。
これでは、住人の手間は新築工事と変わらなくなります。
また、工事費用の借り入れについても、新築住宅用の低金利住宅ローンを使える新築工事に比べると、リフォームローンは条件が良いとは言えません。
上記のことを考えると普通の人には「割に合わない」全面リフォームですが、どうしてもリフォームでなければいけない場合もあります。
それは、現在の土地が「住宅の建て替えに支障がある」場合などです。
たとえば、敷地が2m以上道路に接していないため新築住宅は「再建築不可」になってしまう、あるいは容積率、建蔽率などの関係で、建て替えると今より小さな家しか建てられないなどの場合です。
このような場合、法的に新築が出来ないので、幾らコストが掛かってもリフォームするしかないのです。
(今の家が完全な違法建築物の場合、全面改修のための確認申請も出来ない場合がありますが)
ともかく、コスト面から考えれば、全面リフォームは新築工事より有利でない場合があることを覚えておいて貰いたいと思います。
◇「新築そっくりさん」は安くない
最近は、大手ハウスメーカーや大手不動産会社もリフォームを手がけています。
これらは会社の大きさからくる安定感、今までの建築実績からくる安心感などから、一定の支持があるようです。
その中でも一番有名なのは、「新築そっくりさん」でしょうか。
古い家の部材の一部、たとえば柱や梁を再利用するなど、住む人の思い出にも配慮した工事を行うというところに特徴があり、人気のようです。
「新築そっくりさん」については、私も現場を見学させて貰ったことがあります。
劣化調査や構造計算による安全性確認、堅実な仕上がりなど、流石に大手メーカーの仕事内容でした。
ただ、こういったリフォームは、当然、コストが高く付きます。
作業工程を考えれば、「設計」「見積・契約」「解体」「施工」の他に、「残す部材の打ち合わせ」「解体時に残す部材を掘り外す」「それを保管」「新しい部材と組みあわせて施工する」などの手間が増える訳です。
当然、打ち合わせ回数も工期も、余計に掛かりますから、人件費だけでも高くつきます。
実際、私が見学させて頂いた現場も、同じ規模の新築住宅に比べると、1.5倍程度の施工価格になっていました。
勿論、思い出のある家を壊してしまうのではなく、昔の家を残しながら住みやすくリフォームするのですから、その価値は金額では計れないものがあるのかもしれません。
しかし、コスト面からみて「今の家を生かすリフォームなんだ、新築よりは安いだろう」とは思わない方が良いと思います。
このリフォームは、必ずしも新築より安いという訳ではありません。
その価値が納得出来た方に、利用して頂きたいものだと思います。
その他、リフォームについて考えていることを、幾つか書いていきます。
◇新築に比べてリフォームはエコなのか?
直せばまだ住むことが出来る家を解体して新築するのはエコじゃない、という考えもあります。
しかし平成12年の建設リサイクル法成立以後、住宅解体後の部材はゴミとして捨てられずにリサイクルされる方向になってきています。
最近では、建設資材廃棄物の再資源化率は90%を超えているようです。
もちろん解体せずにそのまま住み続けるのが一番のエコですが、「解体工事+エコ住宅を新築」という手法も、それほど環境に悪いことでは無いかもしれません。
◇「建物の使い方を変えるリノベーション工事」は、新たな価値を生むかもしれません。
一般的に、リフォームというと、古い家やマンションを住みやすいように改修することをいいます。
この場合、建物の用途は変わりません。
しかし、最近では、元々の建物の「用途を変える」リノベーション工事も、少しずつ増えてきています。
たとえば、オフィスビルや店舗ビルを住宅に変更する改修工事などです。
この「使い方を変えるリノベーション工事」は、うまく用途が変更が出来れば、新たな価値を持つ建物を生み出すことが出来ます。
技術的にも法律的にも簡単ではありませんが、今後、このような工事が増えてくるかもしれません。
◇大型リフォーム工事は断りにくいので注意
大型のリフォーム工事の場合、リフォームで家のどこをどのように直すのか、見積の担当者は何度も家に足を運び、何度も住む人と打ち合わせを行います。
見積の作成には長い時間が掛かりますし、担当者とは長い時間顔をあわせることになります。
その結果として、見積を貰った後に「金額が高かったけど、今更断りにくい」という心理状態になることが多いようです。
大型のリフォーム工事では、初期段階の業者選びを出来るだけ慎重に行うこと、納得出来なければ断る勇気を持つことをおすすめします。
また、訪問営業、売り込み型のリフォーム業者については、充分に注意して貰うようにお願いします。
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