どうしても子どもの障害を受け入れられない!

木村知子

木村知子

テーマ:発達障害児の子育て

子どもに障害があるなんて受け入れられない!
普通に見えるから、きっと大丈夫!
なんでうちの子だけ障害児なの!不公平じゃない!
子どもの障害を受け入れる。言葉で言うほど簡単なことではありません。とても重く、非常に難しいことです。

育児ノイローゼ

親の苦悩

「どうにかすればこの子は普通の子になるんじゃないか、頑張ればみんなに追いつける、そんな淡い期待が捨てきれない。」「障害は治らないと頭でわかっているつもりでも心が追いつかない。」「子どもの良いところを見つける?良いところなんてないじゃない!」
その一方で子どもを否定する自分にも腹が立つ。子どもを愛せない自分は母親失格だ、自己嫌悪と罪悪感だけが残る。もう心が限界、育児も限界。ただ子どもと普通の生活を送りたかっただけなのに…。そんなささやかな私の願いはそれほど贅沢なのか…。

障害児の子育てで奪われる親の夢

子どもの存在は親の人生の延長にあります。親は子どもへの夢や期待を通して子どもとつながっています。そして自分の人生に悔いが残る親にとっては、子どもは親自身が人生をやり直すチャンスであり、自分の人生に満足している親は自分と同じ人生を子どもに与えようと奮闘します。どちらも親の夢です。しかし、障害児が産まれると自分が描く子育てストーリーはもろくも崩れ去り、子どもが産まれる前からずっと持ち続けた親の夢は粉々に砕け散ってしまうのです。

障害児が産まれたら親の人生は終わる

夢が崩れ去った後、残されるのは一生続く障害者ケアです。夢や希望を持てないことで180度変わった人生は、針はそこで止まらず、さらに180度回って障害児ケア生活に着地します。子どもが産まれる前に障害児が産まれることを想像する親は少ないでしょうし(一瞬考えることはよくあります)、出産後のケア生活まで織り込み済みで出産、育児を考えている親はほとんどいないのではないでしょうか?親の絶望は想像するに余りあります。

障害児が産まれたことで初めて社会の弱者になる

子どもが障害児であることで親の世界は一変します。自分の時間は無くなり、睡眠もろくに取れず、ご飯は流し込むだけということも起きます。電車に乗ることさえ奇跡的に感じられます。障害児がいることで以前は当たり前にできていたことができなくなり、周囲のサポートが必要となります。今まで経験したことのない社会的弱者になるのです。しかし自分からSOSを出すのは簡単なことではありません。

妬み

周りの家族がうらやましくてしかたがない

スマホを覗いては自分はこんなみじめな生活を送りたくなかった、あっちのキラキラした世界にいるはずだった、と周囲の普通の生活をうらやましく思い一人悶々とする日々。何の解決の糸口も見出せず心だけが真っ黒になる。ママ友に「神様は乗り越えられない試練は与えない」「あなたは選ばれた親」などと言われ憤慨してしまう。少し前まではひょっとすると自分も慰めの言葉を言ってしまう側だったかもしれないけれど、今の自分に相手の気持ちを思いやる余裕はない。自分を理解してほしいという気持ちばかりが大きくなりすぎて周囲との関係をうまく作れず、寂しさと孤独だけが募る…。

障害児は親の価値観、人生観を根こそぎ変える

障害児の子育ては親の価値観、人生観を一度ぶち壊し、新たな生き方を作ることを強いられます。今までの自分の信念、常識、社会的通念は単なる思い込みだったことに否が応でも気づかされるのです。自分という人間、自分の人生を真っ向否定される作業は本当に辛く、険しいものとなります。「そこのあなた、全部間違ってますよ!」と言われるようなものですから。しかしそこから親が立ち直っていくプロセスが始まります。自分の視野が広まること、小さな幸せに心から満たされること、人生がより豊かになること、今まで当たり前に享受していたものに感謝と尊敬の念を持って接せられること。こういった親自身の成長を経て、少しずつゆっくりと子どもの障害を受け入れる心が整っていきます。

障害を受け入れることは障害を好きになることではない

障害を受け入れる、言葉だけ聞くと障害の全てを受け入れ、納得するというように聞こえますが、私はその障害自体は憎くても構わないと思っています。障害がなければ言葉をうまく発せたかもしれませんし、友達とも仲良く遊べたかもしれません。障害さえなければ…本当にその通りで生きづらさの原因となっている障害に無理やり"良さ"を作る必要はないと思います。

子どもとともに親も成長する

真っ暗闇にいたあの苦しみは今は少し和らいだ、日陰までには何とか来られるようになった、日陰からたまには曇り時々晴れの場所までに足が向く。このように辛い子育ても実際には少しずつ前進しています。しかしその渦中にいる間はわかりません。後から振り返ってみてわかることです。人間はそもそもゆっくりじっくり成長します。子どもの発達同様、親の発達、成長も一足飛びに進むことはありません。それでも、子どもと一緒に親も確実に成長していきます。障害のある子どもがいることで知らなかった世界を知り、以前の自分には戻れないぐらい視野も心も広くなります。この自分の哲学を根こそぎ変えてくれる出来事というのは、恐らくですが、人生で起こる人と起こらない人がいると思います。自分自身が揺らぐことはとても辛く大変で、自分が丸ごと変わっていく作業は非常に勇気のいるものですが、自分の成長を実感できた頃にはそれをもう手放せくなるほど充実した気持ちに包まれます。そしてそのときにはきっと自分を誇らしく思っていることでしょう。だから決して自分を不幸だと思わずに、その先には必ず光があると信じて、時には休憩、時には前を向きながら、1cmずつ歩を進めていければ障害児の子育ては満点だと思います。

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