薬学部のすゝめ②
医療系学部の受験に関して、40代50代の保護者の方のイメージと大きく異なるものとして、医学部薬学部の偏差値の変化があります。
多くの方は私立の医学部は偏差値が低くても、お金があれば行ける所という印象があるのではないでしょうか?30年前、私立医学部の場合、偏差値の比較的低い所もあり、私立薬学部の上位校よりも難易度の低い大学も結構ありました。
ところが、この20年で状況は一変しています。
まず、医学部は元々偏差値の高かった国公立の医学部だけでなく、全ての私立医学部の偏差値がかなり高くなっています。現在、河合塾の偏差値で60よりも低い医学部は存在しません。多くの大学が65以上です。これは理系私立では早稲田・慶應の非医学部と同等かそれ以上になっています。しかも多くの医学部が理科2教科必要という事を考えるとかなりの難関と言えます。
対して薬学部については、30年前は4年制だったのが今は6年制となり結果として偏差値の下落の一因にもなっています。また新設の薬学部が乱立した事もあり、入試のハードルはかなり低くなっています。
そして薬学部の役割も変化しています。以前の薬学部は薬剤師養成にはあまり力を入れておらず、薬の研究・開発などに関わる分野に力を入れていました。製薬会社や研究機関で研究したり、臨床開発をしたり、薬に関する文献を調査したりと卒業生が病院・薬局で薬剤師として働くよりも企業や公務員を目指す時代がありました。
それが6年制になり、薬剤師を養成する機関という風に変化してきました。
これについては、賛否両論あるところですが、それは横に置いておいて、受験生の皆さんに気を付けて欲しい事があります。
偏差値が医高薬低の状況で、定員も医学部は増えない・薬学部は増えるという要因も加わり、医学部を目指したが、多浪の末、諦めて薬学部に進路を変更した学生を少なからず見ています。
それ自体は別に悪い事ではないのですが、多くのミスマッチが起こりえます。
単純に多いのが偏差値のミスマッチです。多くの偏差値65の医学部を目指した受験生にとって、ほとんど全ての私立薬学部は入試難易度が低く、入学後に周りのレベルと自分のレベルの違いに驚愕し、モチベーションが下がるパターンがあります。
そして、もう一つのミスマッチは医師と薬剤師の職能についての違いを理解していない場合に起こります。
ここでは両者の職能の違いなどや、それに基づいた進路選択についてなどの情報は省略しますが、敢えて批判を恐れずに言うのであれば、偏差値が足らずに医学部→薬学部への変更、それに伴う医師→薬剤師という将来の職業の変更は、大学入学後に何をしたいのかを熟考しない限り、多くの場合うまくいかないと思います。
残念ながら、この部分は高校、予備校、入学した大学ではケアされないケースがほとんどです。
医療関係学部は大学入試 ≒ 就活とも言えるので、人生の2つの大きなイベントを1回で大方決めてしまえるというメリットはありますが、もし意図したものと違うと分かった時には進路変更が大変になるというデメリットもあります。
医療関係学部への進路を決定する場合には、入試に関する勉強の事以外にその道の現役の方に話を聞くようにしましょう。
これらの情報収集についてのアドバンテージは公立・私立関係なく、所謂自称進学校よりも所謂伝統校にあると思われます。