唯一コントロールできるのは自分だけ
爽やかないさぎよさは人をひきつける
ある年の4月に現場担当の事務所に、大卒の新入社員が一人配属
されてきました。
課長は早速新入社員を紹介するために、別の棟にある現場詰所に
連れて行きました。
そして、現場の社員に紹介を済ませました。
そのときに、ある班でたまたま、終業後に飲み会をする予定があり ました。
課長は、その班の担当でもあったのでその飲み会に誘われていたの ですが、弾みで新入社員も参加することになってしまいました。
新入社員はその班の所属ではありません。
終業後いよいよ、飲み会が始まって和やかな雰囲気の中、課長は新入社員を残し途中で退席しました。別件の宴会があったからです。
次の日の朝、新入社員が課長のところにやってきました。
「課長、朝、目が覚めたら、班の詰所にいました」
「それで畳の上が血だらけになっていました」
「私には昨夜の記憶がないのですが」
と、いいました。
よく見ると顔が腫れ上がっていました。
課長は
「これは、殴られたな」
とすぐに分かりました。
そして、課長は新入社員に尋ねました。
「それで、どうするつもりや」
すると、新入社員は
「記憶にはないですが、先輩に殴られたということは、私が悪い
と思います」
とはっきりと返事をしました。
その言葉を聞いた課長が
「そうか。それやったら今から現場に行って謝ってこい。今丁度
朝礼をやっとるはずや」
というと
「わかりました」
新入社員はさわやかに返事をすると一人事務所を出ていきました。
新入社員が現場の皆の前で頭を下げて謝り、その後、血で汚れた詰所の畳を一人で一生懸命に拭いていると、後から先輩が二人きて拭くのを手伝ってくれました。
その後、新入社員は現場にとてもかわいがられ、今ではその部署の長
になっています。
手伝った二人が、殴った人間かどうかは分かりません。
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爽やかないさぎよさは人をひきつける
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人は、弱いもので自分を守ろうとして、なかなか自分の非を認めよ
うとしません。特に相手方にも非があるときはなおさらです。
上のエピソードでも、顔を殴られたのだから、相手が悪いに決まっ
ていると、つい主張したくなります。
そんなときに、一切の言い訳をせずに、大勢の前でいさぎよく謝る
人物に出会うと、人は何か自分にない爽やかさを感じるのではないでしょうか。
ときに、何かと理屈をつけて自分の正当性を主張するよりも、あっ さりと謝ってしまったほうが、相手方に受け入れられる場合があり ます。
謝るときには、いさぎよさが大切なような気がします。