相手の立場になって初めて分かることがある
やりたいことを真剣に行動で示すと相手も理解する
神戸に震災があったときのことです。
地震発生から3日たっていましたが、鉄道はまだ不通でした。
会社から十km離れた、男の担当する工事現場も被害にあってい
ました。
この被害を復旧するためには、そこに人を派遣する必要がありま
した。
そこで、男は部下である現場担当の班長に
「A現場の被害の様子を見てきて、その復旧作業をしてほしい」
と指示しました。
ところが、それを聞いた班長は
「交通機関がないのに、そこに班員を行かすことはできない」
と断ったのです。
そこで、男は、工事現場まで一人で歩いて行くことにしました。
往復二十kmを五時間かけて歩き、ポラロイドカメラでその現場の
被災状況の写真を撮りました。
そして、会社に帰ってきて、その班長のところにいき、写真を見せて
「A現場の被害状況は、こうです」
と説明しました。
すると、それを聞いた班長は微笑みながら男にいいました。
「わかった。明日から班員を歩かせて現場に行かせる」
「あんたには負けた」
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やりたいことを真剣に行動で示すと相手も理解する
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「自分ができもしないことを他人に命令するな」
という人がいます。
これは、本当は誤った考えです。
そんなことを言い出すと、全てのことができないと指導者になれ
ないことになってしまいます。
でも、なかなか誤った考えだと理解している人は少ないと思います。
この議論は、またの機会にします。
では、このような場合にどうすればいいでしょうか。
そんな相手には、やはり、やりたいことを真剣に行動で示すことが
大切だと思います。
そのとき、完全にできなくてもいいのです。できないから頼んでいるわけですから。
「自分は苦労しないから、勝手なことを命令している」という相手の反
感が解消すれば、動いてくれると思います。