経営者に行って欲しい、離職が続く会社の考えられる原因とその対策
〝人を採用しても長く続かない…〟
〝育ってきたかなぁと思ったら退社の話…〟
など、
人材の定着率の悪さや、現在社員の流出が続いていて困っている企業の方々もいらっしゃるのではないかと思います。
定着率の悪さを “世代間ギャップ”にしてしまうのは簡単ですが、それでは全く解決になっていませんし、世代間ギャップが合ったとしても、定着率の良い企業も多く存在します。
度重なる人材の流出を起こしてしまっている「企業」・「組織」はまず何を行って頂きたいのか、人材の流出が落ちつた後に何を行って頂きたいのかを、それぞれの組織において離職の原因となる理由は異なると思いますが、離職の理由に関わらず、行って頂きたい対策を3つのSTEP
としてお伝えさせて頂きます。
◉離職率の高い組織の特徴
離職率の高い組織には一定の傾向があります。
対策をお伝えする前に、その傾向を先にお伝え致します。
1.不平不満を口にする社員が多い
2.ラベリングの風土がある
3.離職を回避する為に労働条件(給料UP、休みの増加など)で対応している
4.組織内の問題・課題に対して、組織の長が向き合っていない
➢1.不平不満を口にする社員が多い
不平不満、つまり「満足しておらず、心が穏やかではない」社員が多いと言えます。
その理由が、劣悪な労働環境であれば、速やかに改善される事をお勧めしますが、労働環境が整備されているにも関わらず、不平不満を口にする社員が多い組織は存在します。
その要因として考えられるのがコミュニケ―ション不足です。
人は“承認を求める生き物”です。言葉、表情、態度などで人が人に出すサインの事をストロークと言いますが、ストロークは心の栄養とも言われ、このストロークが不足すると、人の心は荒れ始め、そのまま放置すると悪態へと進んで行ってしまいます。
充実したストロークがある組織は、一人ひとりの社員のやる気が向上しているのに対し、不平不満が多い組織はストロークが少ないか、会社や上司の「不平不満」がコミュニケーションの題材になっている可能性があると思われます。
➢2.ラベリングの風土がある
このラベリングは誰もが無意識に行ってしまうモノである為、改善するのはとても困難ですので、マイナスのラベリングではなく、プラスのラベリングを意識して行う様にして頂ければと思います。
ではラベリングとは何なのか…という事ですが、別の表現で言うと「レッテルを張る」事を指します。つまり良い意味でも悪い意味でも使用出来るモノになります。
例えば幹部会議の中で、社長がある部署の部長に「新入社員のA君は頑張っているかい?」と質問をしたとします。
その社長の質問に部長が「最近ちょっと遅刻が多くて、仕事にも身が入っていない様なのですが、現在しっかり指導を行っています」と現状を伝えたとします。
この部長の返答を耳にした社長をはじめ、その場に居た人達が『新入社員のAくんは、最近遅刻が多く、仕事も身に入ってないんだ~』と捉えてしまったとすると、マイナスのラベリングの成立になります。
このマイナスのラベリングを行ってしまった人達が新入社員のAくんに出会うと、「あっ、最近遅刻が多く、仕事も身に入っていないAくんだ!」と心の中で思いながら二言三言会話を行うと、Aくんはマイナスのラベルを貼れている事を感じ取ってしまう可能性があります。
人は言葉のコミュニケーション(バーバルコミュニケーション)よりも言葉以外のコミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)の影響を多く受けます。
つまりAくんは、表情や態度から「自分は信用信頼されていない」と感じ取り、やがてその回数が多くなると、遅刻が欠席へ、そして退社へ、と繋がってしまう事となります。
この幹部会議の席でAくんの良いところを耳にしたとするとどうでしょうか?
おそらく「最近頑張っているAくんだ!」という事で、プラスの表情、態度で接するだけでなく、場合によっては「最近頑張っているんだってね!」とプラスの言葉を投げ掛けてあげる事も出来るのではないでしょうか。プラスの言葉をもらったAくんはおそらくその後の仕事もしっかり頑張ってくれると思います。
➢3.離職を回避する為に労働条件(給料UP、休みの増加など)で対応している
冒頭でもお伝えさせて頂きましたが、劣悪な労働環境であれば改善は必要ですが、労働環境が整っているにも関わらず、給料UP・休みの増加などで対応しようとされる企業は、思いの外多く存在します。
何故労働条件で対応されるのかと言いますと、「退社の理由として労働条件の悪さを提示されるから…」と言われます。
ところが
“労働条件の改善を行ったしても…”、“場合によってはその人だけ特別待遇にしても…”
やがて退社の意思を示される事があります。
つまり改善ポイントは何なのかと言いますと、1.の『不平不満を口にする社員が多い』のところでもお伝えしましたが、労働条件ではなくしっかりとストロークを与える事です。
➢4.組織内の問題・課題に対して、組織の長が向き合っていない
実はこの内容も「ストローク不足」を指しています。
組織内の人材関連の問題は、組織の長が自ら動かなければ良くなりません。
「自分はその様な話が苦手だから…」
「きっかけがあれば話せるのだけど…」
と向き合いたくない理由を並べられるケースがあります。
人材関連の問題は、
①可能な限り速やかに、➁真剣かつ誠実に、③自信を持って一歩を踏み出せる様に
関わって頂く事が大切だと思っています。
この場合の組織の長とは、経営者だけを指しているのではなく、組織の中の各単位の長全てを指しています。
◉離職者が多い組織が行って頂きたい3つのSTEP
1.コミュニケーション量を増やす
2.「キャリアプラン」と「明確なキャリアパス」を設定する
3.採用のミスマッチを無くす
1.コミュニケーション量を増やす
最も素早く出来る対策が「コミュニケーション量」を増やす事です。
コミュニケーションの重要性は前述させて頂きました『離職率の高い組織の特徴』でもお伝えさせて頂きましたが、離職者が多い組織は全体的にコミュニケーション量が少なく、比較的小さい組織の場合においては、「自分の様に年齢がいった者が、若い社員と話をしても嫌がられるだけでしょう…」と、経営者自身がコミュニケーションを取る事を拒否されているケースがとても多く見受けられます。
まずは積極的に話しかけてみる。その中でその社員さんの頑張っている所、社員さんが居てくれて助かっていると感じている事を、しっかり言葉として伝える事からはじめて頂きたいと思います。
確かに年齢差というのは、コミュニケーションを取る上で大きな溝になりがちです。
それは若い人からしても同じです。つまり“若い人にも溝がある様に見えているからコミュニケーションを取らない”のではなく“溝がある様に見えているからこそ、溝を飛び越え歩み寄る事”が大切だという事です。
“溝を飛び越えてコミュニケーションを取りに来てくれている”と、感じて頂くだけでなく、更に“自分の事を認めてくれている”、“「ありがとう」という言葉を頂けた”、などの関わりがやる気のきっかけになったりします。
充実したコミュニケーションが溢れる職場にする為にも、組織のトップから歩み寄る事がとても大切です。
ところが闇雲にコミュニケーション量を増やしに掛かると組織崩壊になり兼ねない可能性もありますので、「コミュニケーションは逆三角形」と理解して頂きたいと思います。
若い人とコミュニケーションを積極的に取ろう!
今年は彼に頑張って欲しいから、彼との時間を多く作ろう!
と、特定の人に対してコミュニケーション量を増やすと、必ずと言っていいほど、後でしっぺ返しが来てしまいます。
若い人達としっかりコミュニケーションは取って頂きたいのですが、それ以上にご自分に近いポジションの部下、後輩とコミュニケーションを取る事を意識して頂きたいと思います。
2.「キャリアプラン」と「明確なキャリアパス」を設定する
コミュニケーション量が増え、人材の流出が止まりましたら、次に行って頂きたいのが
キャリアプランとそのキャリアになる為のキャリアパスの設定を行って頂きたいと思います。
仕事にも慣れ、一定のキャリアで停滞すると心の張りが失われ「惰性」で仕事を行う人が増加してしまう恐れがあります。
「惰性」の風土が出来上がると、風土改善が困難となり、また改善するにもかなりの時間を要しますので、衰退に向かう可能性が高くなってしまいます。
コミュニケーション量の増加で、社員の皆さんの意識がやや上向きになったタイミングで速やかにこのキャリアプランとキャリアパスの設定を行って頂き、やる気UPに繋げて頂きたいと思います。
3.採用のミスマッチを無くす
キャリアプランとキャリアパスの設定まで完了すると、次に行って頂きたいのが採用のミスマッチを無くすことです。
採用の方法については別途記載させて頂きますが、「人手が足りないから採用活動を行う」という考え方ではなく、「遣り甲斐と志を共有できる人と共に成長する為に採用活動を行う」
という採用でなければ組織の成長はもちろん、永続的な定着率の向上も望めません。
私の個人的な見解ですが、「新卒採用活動は経営の縮図」と捉えています。
新卒採用活動を行うと自社の問題・課題だけでなく、強みや魅力を客観的に捉える事も出来ます。
人手の必要・不必要に関わらず、新卒採用活動を行ってみて頂ければと思います。
◉最後に
今回お伝えさせて頂いた内容はかなりマクロ的なモノとなり、それぞれの組織風土や状況によって、当然の事ながら細部にわたり意識して頂かないといけない事も多々ございますが、もし今回の内容で「これなら出来そう」と思って頂けたモノがございましたら、是非行動に移して頂きたいと思います。