時間をかけるべき仕事、かけるべきでない仕事

小松茂樹

小松茂樹

テーマ:時間管理



「時間をかけるべき仕事」と「かけるべきでない仕事」


時間管理の課題の一つに「どの仕事に時間をかけるべきか」「どの仕事にはかけるべきでないか」という判断があります。

私たちは日々たくさんの業務に取り組んでいますが、そのすべてに同じ熱量や時間を投じてしまうと、いくら時間があっても足りません。だからこそ、まずは仕事を2つに分類することが大切です。

1つは「できるだけ時間をかけたい仕事」。成果や価値に直結し、自分や組織にとってプラスの効果が大きい仕事です。もう1つは「できるだけ時間をかけたくない仕事」。必要ではあるけれど、成果に直接つながらない業務や形式的に行っているだけの仕事です。この2つを明確に分けるだけで、時間の使い方は大きく変わります。

分類することで時間が短縮される理由


では、なぜ仕事を分類すると時間短縮につながるのでしょうか。

その理由は「かけるべきでない仕事」に明確な線を引けるからです。例えば、誰が読むのか分からない形式的な報告書の作成。必要だから仕方なくやるにしても、「5分で終わらせよう」と決めて取り組めば、必要最低限のものを作るべく、集中して効率的に作業できます。

これは気合いの問題と思うかもしれませんが、実際に効果はあります。人は無意識に「できるだけ丁寧に」「余裕があるなら時間をかけてやろう」と考えがちです。その結果、パーキンソンの法則が働き、必要以上に時間を使ってしまいます。

しかし、「これは時間をかけなくていい仕事だ」と認識するだけで、自然と早く終わらせようという意識が生まれ、時間を削減できるのです。

つまり、分類をすることによって「何に力を注ぐべきか」「何を短く終わらせるべきか」が明確になり、余計な時間を浪費せずに済むようになるのです。

営業の時間の使い方で考える


ここで具体的なイメージを共有するために、営業職の時間の使い方を例にとってみましょう。

営業職の時間の使い方を大きく8つに分けると、下記のようになります。

  1. 顧客との面談
  2. 顧客先への移動
  3. 面談準備(資料作成)
  4. 顧客対応(電話やメール)
  5. 社内での会議やミーティング
  6. 部門間での調整作業
  7. 事務処理
  8. その他


上に行けば行くほど営業としての直接的な活動、下に行けば行くほど間接的な活動になります。

営業職にとって最も重要なのは、なんといっても「顧客との面談」です。お客様の状況や悩みを伺い、課題を特定して、ご提案をし、契約に結びつける。これが最も成果に直結する重要な業務だと言えます。

次に重要なのが、客先への移動時間や面談準備(提案書や見積書の作成)といった業務。そして顧客対応としての電話やメールのやり取り。ここまではお客様のために時間を使う業務です。そして、こうした業務により多くの時間をかけるようにすることで、成果を上げていくことができます。

それより下に記載した、社内での会議やミーティング、部門間調整、日報の入力や経費精算などはすべて社内業務になります。もちろん、組織としての運営・管理上必要な業務ではありますが、それをいくらやったところで、売上や利益につながるわけではありません。したがって、できるだけ時間をかけないようにすることが望ましいと言えます。

ところが、実際には社内業務にかなり多くの時間が取られていることも少なくありません。実際に、営業職の半分以上の時間が社内業務に費やされているというケースもあります。こうした時間の使い方を改善するだけで、成果を高めることが期待できるのです。

本来業務と付帯業務


「時間をかけるべき仕事」「時間をかけるべきでない仕事」。私はこの区分を「本来業務」「付帯業務」と呼んでいます。

「本来業務」とは、部門や職種が果たすべき役割、生み出す成果に直結する仕事です。やればやるほど成果に結びつくものであり、時間をかけるべき仕事に分類されます。先ほどの営業職での例で言えば、顧客との面談や提案活動、クロージングなどが該当します。

一方、「付帯業務」とは、本来業務を進める上で付随して必要になるものの、直接的に成果を生まない業務です。報告書の作成や社内会議、形式的な調整などが代表例です。必要ではありますが、時間をかけても成果は大きくならないため、なるべく効率的に短く済ませることが求められます。

特に営業職においては、最も影響を与えるのは顧客との面談時間です。にもかかわらず、資料作成や事務処理に多くの時間を費やし、面談に十分な時間を割けていないケースが非常に多いのです。資料は必要ですが、作ること自体が目的になってしまっては本末転倒です。本来の目的は「顧客に伝えること」であり、資料はそのための手段にすぎません。

すべての職種に本来業務は存在する


営業職の例は分かりやすいですが、企画職や事務職など成果が見えにくい職種にも、本来業務は必ず存在します。

例えば、人事部門であれば「優秀な人材を採用する」「教育する」「離職を防ぐ」ことが本来業務です。人事部門の役割は人的資源の調達と運用だからです。社会保険の手続きや書類作成は必要ですが、そこに時間をかけても人事部門としての「成果」にはつながりません。

同様に経理部門であれば「お金を調達する」「無駄な支出を抑える」「利益を最大化する」ことが本来業務です。伝票処理や決算の準備は必要な業務ではありますが、効率的に行うべき付帯業務です。

総務であれば「経営資源の運用」と「リスクマネジメント」が本来業務です。不動産や備品を調達し、なるべくコストを抑えて運用することや、危機管理や情報セキュリティを徹底して「会社を守る」ことが重要業務だと言えます。会議資料や社内報告のために過度な手間をかけることは付帯業務に分類されるのです。

付帯業務に時間をかけすぎる弊害


付帯業務は、組織としての運営・管理上必要ではあるものの、事業の成果に直結しない仕事です。

代表的なものに「形式的な会議」「形骸化した報告書作成などの事務処理」などがあります。もちろん、まったく不要というわけではありません。必要最低限のことはする必要があります。しかし、目的や効果を確認せずに惰性で行ってしまうと、大きな時間の浪費につながります。

例えば、議題が不明確なまま「とりあえず参加して」と呼ばれる会議。実際には一部の人しか発言せず、長時間ただ聞くだけで終わってしまうケースがあります。参加者にとっては意味のない時間となり、これが積み重なれば膨大な時間を失ってしまうことになるのです。

また、形式的に提出を求められる資料や報告書も同様です。提出期限に追われて一生懸命作成しても、実際には誰も読んでいない、もしくは上司や役員の自己満足のためだけということも少なくありません。こうした付帯業務に必要以上の時間を割いてしまうことこそが、成果が上がらない大きな要因になります。

無駄な業務が生まれる背景


なぜ付帯業務がこんなに多く存在するのでしょうか。

その背景には「組織の慣習」「自己満足」「責任回避」といった要素があります。例えば「毎週必ず会議をやる」というルールがあると、議題がなくても形式的に会議が開催されます。そこでは新しい成果は生まれず、ただ時間が消費されていくのです。

また、上司ごとにフォーマットが異なる報告書を求められるという話もあります。ある企業では、同じ内容の経営管理レポートを役員ごとに別フォーマットで作成していたそうです。役員それぞれが「自分の書式でなければ分かりにくい」と主張するために、現場の社員が何倍もの手間をかけていたのです。このような無駄は人件費を浪費するだけで、企業に利益を残すどころか損失を生んでしまいます。

つまり、付帯業務が無駄に膨れ上がる原因は「目的を見失っていること」にあります。何のためにやるのか、その成果はどこにあるのかを常に問い直さなければ、必要のない仕事に貴重な時間を奪われてしまうのです。

本来業務と付帯業務のバランス調整


とはいえ、付帯業務をゼロにすることはできません。会議や報告、社内資料作成も、一定の範囲では組織を円滑に運営するために不可欠です。重要なのは「バランス調整」です。本来業務と付帯業務の比率を定期的に見直し、必要なところにはしっかり時間をかけ、不要な部分は最小限に抑えることです。

多くの会社では「本来業務に時間を割きたい」と思いつつも、実際には付帯業務に時間が奪われている現状があります。だからこそ、自分や組織の時間の使い方を可視化し、改善を繰り返す必要があります。本来業務により多くの時間を割けるようになれば、自然と成果は向上していきます。

まとめ


時間管理を成功させるためには、まず仕事を「時間をかけるべき仕事」と「かけるべきでない仕事」に分類することが欠かせません。

本来業務は成果を生み出す仕事であり、ここに時間を投資することが最大のリターンをもたらします。一方、付帯業務は必要ではあるものの、成果に直結しない仕事です。できる限り効率化し、時間を減らすことが求められます。

無駄な業務を見直し、浮いた時間を本来業務に回すことで、組織の生産性は飛躍的に高まります。バランスを意識しながら、本来業務を中心に据えた時間の使い方を実現することが、個人と組織の成果を最大化する鍵となることでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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小松茂樹(経営コンサルタント)

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