英語が不得意でも…
江戸時代が脚光を浴びている!
大河ドラマ『べらぼう』の影響により、書店でも『江戸時代コーナー』が出現するなど、俄かに江戸時代ブームとなっています。
子供のころは、まだ高度成長が続いていたこともあったのでしょうか?『江戸時代は鎖国をしていて、日本が世界から遅れを取った』と、悪いイメージばかりがありました。『平和で独自の文化が発展した』との意見もありましたが、かき消されるような状態でした。
エコロジーが叫ばれるようになった
その後時代は進み、大学院を修了して、大学の研究所で働いていた時のことでした。30年ほど前のことでした。当時、エコロジーが叫ばれ始めました。また、大学のあった京都で気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)が開催されたこともあり、環境問題への関心も高まるようになりました。
そんな中、たまたま京都の地元ラジオを聞いていると、とある女性が自らの卒業論文のことを語っていました。COP3絡みだったと思います。その中で『大江戸リサイクル事情』という本も参考にしたようでした。
そこで、その書籍を購入すると同時に、ラジオ局にも問い合わせると、その女性が放送の少し前に同志社女子大学を卒業し、宮澤正典先生のゼミであったことがわかりました。
ユダヤ研究の大御所だった
宮澤先生に問い合わせると、快く会っていただけることになりました。実際に大学を訪問してビックリでした。宮澤先生はユダヤ研究がご専門で、しかも大御所でした。
(宮澤正典「昭和戦時下における新聞の親ナチ・反ユダヤへの傾斜 ―それに同調できなかった人々」)
https://www.youtube.com/watch?v=NjRfklPQXd8
(追悼 宮澤正典先生)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yudayaisuraerukenkyu/32/0/32_126/_pdf
江戸時代専門でもなく、経済や環境が専門というわけでもなかったのです。おそらく、学生の自主性に任せ、のびのびと指導していたのではないか?と思います。
『日本におけるユダヤ』ということで、パッと思いついたのが、杉原千畝氏のことでしたので、そのことに言及すると、宮澤先生から直々にレクチャーも受けました。
破損品を修理していた技術
その後、宮澤先生に大学内の資料室へ案内してもらいました。一度割れた陶器を修理して元通りの形になったものがありました。宮澤先生から『昔にも技術はありました。先人たちの礎を大切して下さい。温故知新、水平思考をテーマとされるのも良いでしょう。』とのことでした。
『大江戸リサイクル事情』は凄い本!
一方、『大江戸リサイクル事情』は凄い本です。中身について、極めて簡単ではありますが、私自身、とある学会の予稿にも書いております。
『江戸時代の日本は17世 紀前半に始まった鎖国政策により、工業製品の輸入が止まり、自国内での自給自足を余儀なくされた。その結果として高度なリサイクル文化が開花した。まず、物作りは製品の頑丈さを重要視した。また、多くの行商人が行き交い、その多くは鋳掛け屋等の修理業者および廃品回収業者であった。製造業者および修理業者は高度な手先の技術が要求され、 日本人の産業技術での基盤となった。また廃品回収業者等の活動により、極めてクリーンな社会が実現した。当時はエネルギー源をすべて太陽エネルギーに求めており、工業は農業、林業、漁業とも連携した構造を成していた。明治維新以後の日本は、欧米型産業技術を急速に取 り入れ、第二次世界大戦後はアメリカを手本としながら産業技術力を高め発展してきたことは周知の事実である。ただ、このような発展は江戸時代における手工業技術の上に成り立ったものである。にもかかわらず、明治期以後、 日本の旧来の文化は軽視され続けてきた。(ベンチャーラボラトリーの一私見 (生産管理_1998 年 5 巻 1 号 p. 86-89)』
https://smooooth9-site-one.ssl-link.jp/banyokagakukenkyusho230710/uploads/blog/14/65784656c83d314.pdf
電子版で何とか…
この大江戸リサイクル事情の著者である石川英輔さんは江戸文化研究者として有名です。大江戸シリーズなど、著作も多く、そのどれもが質、量ともに圧倒される内容です。
今、江戸時代ブームの乗っかった書籍が多く見られます。ただ、往々にして、流行に乗り遅れまいと出版された書籍は突貫工事によるものなのか?内容が雑で薄いこと多いです。江戸時代のエコロジーを扱った書籍も立ち読みしましたが、『江戸リサイクル事情』とは比較にならないほど軽いものでした。
その『大江戸リサイクル事情』ですが、残念ながら文庫版も含めて既に絶版となっております。ただ、電子版では読むことができるので、ご興味おありの方は電子版をお読みになられてはいかがでしょうか?