空き家の活用方法は「貸す・使う・売る」の3パターン
いま空き家問題は社会的な課題として浸透しつつあります。総務省が実施している調査では、その数は2013年に約820万戸に達しています。
日本の家の実に7軒に1軒が空き家となっているのです。そして現在はもっと増えていると思われますし、これからも増え続けていくことが予想されます。
生まれ育った故郷の思い出の詰まった家を、両親が亡くなり、誰も住まなくなったからといって、簡単に処分できる人は少ないと思います。
しかし、家にも寿命があり、人の住まない家はどんどん老朽化していきます。
「空き家の何がいけないの?」「自分の所有する家をどうしようと勝手では?」と考えて、放置している方がいるかもしれません。
実際、所有者個人の問題なので、他人が口を出しにくい面もあるのですが、地域にさまざまな影響を及ぼしていることは否めません。
今回は空き家の問題点をまとめてみました。
地域社会に悪影響が出る
「空き家にしていても誰も困らない」、それは大きな間違いです。
たとえば家の隣に空き家があると考えてみてください。
庭の手入れをしないので、雑草や木が伸び放題で、境界を越えて敷地に侵入しきます。スズメバチなどの害虫が発生しても駆除する人がいないので、周囲に危険が及びます。風で物が飛んできてもそのまんまということにもなるでしょう。
こういった空き家が周辺にあれば、誰でもどうにかしてほしいと思うものではないでしょうか。
また、人の気配のない家には野良猫や野良犬などが住みつくことも少なくありません。
そうすると衛生上も好ましくない環境となります。
このように、空き家を放置すると近所迷惑になりやすい要素が多く、景観上の問題にも発展して、地域全体へと影響を及ぼします。
人が住まないと家が傷む
「人が住むと建物が傷むから貸さない」、これも大きな誤解です。賃貸住宅の場合、原状回復義務が慣例となっているため、人が住むと家が傷むと思い込んでいらっしゃる方も多いです。しかし、実際は逆で、建物は使わなくなると管理が不十分となるため急速に劣化していきます。
特に木造住宅の場合、風を通さないことが家のためによくありません。長期間換気をせずに放置していると、劣化の最大の原因となる湿気がこもります。ここに温度が加わると、シロアリやカビ、ダニなどが繁殖し、不衛生な環境となります。雨漏りでもしていると、さらに劣化は加速します。
老朽化した木造住宅は耐震性能も落ちています。特に昭和56年以前の旧耐震基準で建てられている家は危険です。
ひとたび地震や台風などの災害が起これば、瓦が飛んだり、外壁が崩れて道路をふさいだりして、通行人がケガをしたり、避難を妨害してしまう可能性もあります。
人が住んでいれば対処ができるものの、空き家ではそうもいきません。
万が一、他人に被害が及んだ場合は損害賠償を請求されても仕方がありません。空き家といえども、所有者にはその家を管理する責任があるからです。
火事や犯罪の増加にもつながる怖れ
空き家は人が住む家に比べて放火されやすくなります。また、電気を止めていない場合は配線が劣化、あるいはねずみが食いちぎったりして、発火するリスクもあります。
人がいればすぐに気づいて消火できるようなケースも、初期対応が遅れて被害が大きくなる可能性があります。
また、人目につかないとゴミの不法投棄が行われたり、不審者が出入りするようになることもあります。こうなると治安の悪化を招き、地域住民は安心して暮らすことができません。
地域社会にとって大きなマイナス
行政の視点から見れば、空き家の多いエリアには、新しく引っ越してくる人も少なく、出店する業者もないため、地域活性化の妨げになります。
そうすると、税収が減って、自治体が破綻するという最悪の結果を迎えた例もあります。
2007年に財政破綻した夕張市の空き家率は33%、2013年に財政破綻したアメリカ、ミシガン州デトロイト市の空き家率は29.3%とのことです。
自治体が現在の行政サービスを提供し続けていくためには、一定の人口規模が必要です。そのため、空き家対策に積極的に乗りだす自治体も増えています。
所有者一人一人が活用方法を考える
空き家の所有者は、実家を手放すのはしのびない、あるいは兄弟で話し合いがまとまらない、空き家に手間や時間をかけられない、など、放置している背景にはさまざまな理由があるかと思います。
しかし、以上のように空き家を放置しておくと、近所迷惑からはじまって地域社会への悪影響、自治体の財政問題にまで進展していく可能性があることを覚えておいてほしいと思います。
少子高齢化が進む日本では、今後、実家が空き家になるケースはますます増えて行くと思われます。
空き家問題は、誰もが避けて通れない問題です。
所有者一人一人が空き家をどう活用するかを真剣に検討し、実行に移すことが、問題解決へとつながります。
持っているだけでコストがかかる空き家。
今ある空き家、また将来引き継ぐかもしれない空き家をどうするべきか。できれば親が元気なうちに家族全員で話し合っておくと良いと思います。