ストリップス債について
お客さまにお伝えしたいこと
- ブルベア型の当日の値動きに対して目標倍率に連動する仕組みは2日以上離れると目標通りにはならない
- 市場がしばらく上下するとマイナスになる傾向
- ブルベア型は、市場が一本調子で上昇又は下落する期間で効果を発揮する短期向け運用商品で長期保有には適していない商品
【ブルベア型とは】
ブルベア型とは、先物やオプションなどの商品を利用して参照する市場の動き以上に利益を上げることを目指した運用商品です。
ブルは雄牛のことで、敵を攻撃する際に角を下から上へ突き上げる様は、株の世界で相場上昇のイメージを持っていて、ブル型は相場上昇時に市場以上に儲かるように設計されます。
反対にベアは熊のことで、爪を上から下へ振り下ろして敵を攻撃する様から、ベア型は相場とは反対に動くことで下落時に儲かるように設計されています。
投資信託でも一定の人気があり、2024年末で純資産は約7800億円、年間の設定解約合計では約3.8兆円となっています。
実はブルベア型の商品で最も利用されているのは上場投資信託ETFです。日本で最も利用されているレバレッジ型ETFと呼ばれるブルベア型のETFは、株式で最も時価総額の大きいトヨタ自動車より活発に売買されています。
この図は、両者のこの1年間の一日の売買代金の推移を示したもので、青色のETFの売買代金がオレンジ色のトヨタ自動車の 売買代金を上回って推移していることがわかるかと思います。
【ブルベア型は長期投資には不向き】
一般的にブルベア型は、基準となる市場の動きに対する目標倍率を定めて先物やオプションなどの商品を利用して買い建てたり、売り建てたりして、その日の値動きを市場の値動きの目標倍率、例えば最初の図でお示ししたブル2倍型であれば市場の値動きの2倍、ベア2倍型であれば市場の値動きの2倍逆に動くようにしています。
ここでポイントになるのは、当日の値動きが目標になる倍率を目指して運用することが、2日以上離れた期間では目標通りとはならないということです。
ある基準日から翌日、翌々日と100から10ポイントずつ値上がりする場合、基準となる先物が120になるのに対して、ブル3倍は165.5と3倍以上の値上がりとなっています。ブル型の場合、上昇し続けるとレバレッジ効果を発揮します。
一方で、ある基準日から翌日に100から10ポイント値下がりして、翌々日に100に戻るパターンの場合、基準となる先物は100に戻っていますが、ブル3倍型は93.3と元には戻りません。
一方的に上がり続ける下がり続ける期間について、ブルベア型は効果を発揮しますが、上下すると目標通りにならず、マイナスになってしまいます。
この図は、市場が上下に繰り返して変動し続けた場合のブルベア型3倍の値動きを示しています。ブルベア型は、どちらもマイナス方向に推移していることがわかるかと思います。
これは、ブルベア型のような、市場に対してより大きな投資効果を目指す運用に特有のマイナスの複利効果と呼ばれるもので、しばらく上下を繰り返すとマイナス幅が拡大する傾向があります。
市場は期間が長くなると必ず上下しますので、ブルベア型は数日から長くても3か月程度までの期間に対して有効な運用商品で、マイナスの複利効果があるために長期投資には不向きな商品となります。
【ブルベア型が上下する相場に弱い背景は】
ブルベア型が上下するような相場に弱い背景には、当日の値動きが目標となる倍率を目指して運用する仕組みは順張り型の投資行動となることが挙げられます。
例えば、ブル2倍型は純資産100億円に対して200億円の株価指数先物を買い立てています。仮に次の日に参照指数が10%上昇した場合、先物は220億円になるため、純資産は先物の値上がり益である20億円が元の100億円に加えられて120億円になります。ただし、この段階では先物は220億円で、レバレッジ比率は1.83倍に下がります。そこでさらに20億円の先物を買い建て、レバレッジ比率を2倍になるように調整をします。
逆に参照指数が10%下落した場合、純資産は80億円、先物は180億円となり、レバレッジ比率は2.25倍に上昇してしまいます。そこで先物の20億円売り立てることで、レバレッジ比率を2倍に調整するようにしています。
このように、ブル型は上がったときに買い、下がったときに売る順張り的な投資をしています。
そのため、相場が反転すると投資行動が裏目に出てしまうということになるのです。
ブルベア型は参照指数が一方的に上昇又は下落し続けるトレンドがある期間で効果を発揮しますが、ブルベア型は参照指数が低迷する期間があると、時間経過とともに基準価額が下がる傾向があります。
こちらは仮想的に2000年末から日経平均に対して、ブル3倍の商品の値動きをシミュレーションしたものです。
実際には先物の限月交代や投資信託の規制上の問題もあるので、あくまでも簡易的で仮想的なものである点に注意していただきたいのですが、日経平均は2000年末から2010年代半ばにかけて低迷した後、反転して2024年に4万円台に到達した後、2024年8月に急落して一旦回復しますが、2025年に入ってからまた下落基調になっています。
参照指数は2025年4月末時点で、2000年末の1万3760円に対して約2.6倍になっています。
それに対してブル3倍型はその3倍になるどころか、ITバブル崩壊とリーマンショック時の下落相場で大きく沈んでしまい、2025年4月末時点で2000年末の水準に対して約1/4にとどまっています。
このようにブルベア型は下落している際に「この後上昇したら基準価額も戻るだろう」と考えて長期で保有することは賢明な判断ではありません。
【関連動画】ブルベア型投資信託とは~長期投資には不向き!?~



