【仕組債の歴史】なぜ消えた? ~人気商品の裏に潜むリスクとは~
お客さまにお伝えしたいこと
- IPO銘柄の初値リターンが公募価格を上回る勝率は高い
- 一方で継続保有した場合に公募価格を上回る勝率は5割を下回る
- IPO投資は長期投資には不向き、初値又は上場日終値で売却して小さくお小遣いを稼ぐようなイメージ
IPOとは新規株式公開「Initial Public Offering」の略称で、株式を投資家に売り出して、証券取引所に上場して誰でも株式の売買ができるようにすることをIPOといいます。
IPOで多い売り方が上場後に初めて付いた株価で売却する「初値売り」です。
IPOではブックブルディング方式と呼ばれる仕組みで、引受証券会社が投資家の需要から新たに新規株式公開する予定の会社の公募価格を決めるのですが、上場前に投資家が公募価格で購入することで、上場日から市場で売却できるようになります。
一般的にIPOの初値売りは公募価格を上回る勝率が高いと言われていますが、2020年から2024年に新規上場した日本株では、初値が公募価格を上回る勝率及び上場日終値で公募価格を上回る勝率は総じて70~80%程度となっています。
また、上場日終値での平均リターンは2020年では+100%を超えており、2024年は低下しているものの30%程度と高い実績となっています。
IPO銘柄の初値リターンが高くなる背景には幾つかの仮説があります。
1点目は需給仮説です。IPOでは「供給(売り手)」が、個人に配分された新規公開株式数に限定されている一方で、「需要面(買い手)」は、その銘柄や業績への期待感を持つ投資家を新規公開株のプロモーション効果が引き寄せるという側面がある。そのため、必然的に需要が供給を上回って価格を引き上げるというものです。
2点目は期待プレミアム仮説です。IPOでは様々な企業が上場します。その中には新たに創出されたビジネスに取り組む企業などもあり、そのような企業に対して当該ビジネスに対する期待値というのが上乗せされているという考え方です。
3点目は公募価格の決定バイアスと言われるものです。
公募価格は主幹事会社と呼ばれる証券会社が決めるのですが、初値リターンの見栄えを良くするために適正価格よりも割安の株価を提示するという誘因が働きやすいということが言われています。
また、IPO銘柄の初値リターンは公募価格を上回る勝率が高いのですが、新規上場する間隔が空いた際の久し振りのIPOとなった場合にはリターンが高くなる傾向が見られています。
但し、IPO銘柄にもデメリットはあります。初値リターンおよび上場日終値リターンの勝率は高いのですが、必ずしも全ての銘柄がプラスにはなりません。
過去の実績ではマイナス25%程度となった銘柄もあるので注意が必要です。
上場日の初値が公募価格を下回った銘柄の特徴を見てみると、①公募株数が多い場合②事業内容に新鮮さがないような今後の成長が見込めない銘柄③業績が芳しくない銘柄などが挙げられます。
また、IPO銘柄に投資する場合には抽選に当選する必要があります。IPO銘柄を割り当てる配分の考え方は証券会社によって異なりますが、原則は抽選ということになります。
当然、それに対する申し込み倍率は非常に高くて、IPOの当選確率は一般的に1~2%程度と低いと言われています。
当選した場合でも割り当てられるのは1単元株単位と僅かです。
そのため、IPO投資は大きく投資して儲けるというよりは小さくお小遣いを稼ぐようなイメージになります。
更にIPO銘柄を継続保有した場合を見てみると、2020年から2024年までの新規上場銘柄についてデータを取得した2025年2月4日時点の株価にて公募価格を上回っている勝率は5割を下回ります。
また、IPO銘柄を組み込んだIPO指数(FTSEルネサンスIPO 日本株指数)と市場であるTOPIX(配当込み)の推移を比較すると2016年以降の推移でTOPIX(配当込み)が右肩上がりで上昇しているのに対して、IPO指数は上下しながら横這いで推移しており、IPO銘柄に継続的に投資するのは必ずしも得策ではないと言えます。
IPO指数は市場が上昇している際は同様に上昇しますが、市場の上昇が一服すると利益確定売りで下落する傾向が見られます。IPO銘柄には様々な企業があり、玉石混交と言えます。
そのため、IPO銘柄への投資は基本的には長期投資には不向きで初値売り又は上場初日で売却することが基本になります。

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