素材の良さを引き出す適温焙煎で、飲む人の心を和ませるコーヒーを提供（2/3）

プロスキーヤー時代、練習の後に飲んだ癒やしの一杯が目指す味の原点

　一年を通して清涼で、湿度の低い気候が豆の保存や焙煎に適していることから、北海道にはコーヒーの名店がそろいます。札幌出身の早川さんも愛好家の一人でしたが、この業界に入ったのは35歳を超えてからでした。

　「25歳から10年間、プロスキーヤーとして東京と長野を行き来していました。結果を出すためには鍛錬が欠かせませんが、アウトドアスポーツなので天候に恵まれない日もあります。吹雪の中、練習を終えて飲む熱々のコーヒーは格別で、身も心もほっこりと温まったことをよく覚えています」

　その後、北海道に戻りコーヒー職人として活躍していた弟の元に弟子入り。焙煎技術などを習得して1993年に独立開業しました。目指す味の原点は、スキーヤー時代に心をゆるませてくれた癒やしの記憶です。

　「仕事に集中したり、家事や育児に奮闘したり、学業に励んだりしていると『一息つきたい』という瞬間があるでしょう。疲れを感じた時などに一服のコーヒーで気持ちを和ませ、再び頑張るための糧にしてもらえたら幸せです」

　業態も時代のニーズに合わせて変化しました。かつては「いかに安く」に焦点を置き、オンラインショップでの販売を主としていていましたが、世界情勢の不穏で輸入価格が高騰。豆も銘柄によっては3倍近い値段になりました。

　「近年の仕入れコストで安さを追求することは難しく、価格に代わる価値を思案した結果『手が届く範囲のお客さまに真心を込めてコーヒーを提供したい』と思ったんです。それが店を出したきっかけです」

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【次ページ】「いつものおいしい味」を届けるため、豆の良さが引き立つ焙煎温度を追求

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