脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)とは
工学鑑定を依頼して解決した事案
先日、工学鑑定を依頼して解決した訴訟の事案がありました。
バイクと四輪車の事故で、私の依頼者はバイク側でした。バイクの運転者には事故時の記憶がなく、現場での実況見分は、事故の相手方や、後続の目撃者とされる人物の立会いで行われました。
この実況見分の結果からは、バイク側に責任が大きい事故であるとされてしまったため、当初はバイク側の過失が7割程度として扱われてしまいました。
自賠責保険では、7割以上の過失があると、重過失減額といって保険金の減額を受けることになるため、自賠責保険金も減額されていました。
しかし、ご家族の話でも、バイクの運転者はそれほど無理な運転をするようには思えませんでしたし、実況見分調書の説明を詳細に確認してみると、現実には、事故の相手方や目撃者の指示説明通りの速度では、バイクも車も動くことはできないのではないかと思えました。
そこで、民間の工学鑑定を行っている会社に、実況見分調書のほか、バイクや車の損傷写真などを提供して、車体の損傷状況などから衝突時の速度を推定してもらうことを依頼しました。
推定される速度が大幅に減少
工学鑑定の結果、当初の実況見分の際に想定されていた速度からみると、30~40km/hも遅い速度で走行していたものと推定されることがわかりました。
そこで、この工学鑑定の結果をもとに、事故の相手方に対し訴訟を提起しました。
訴訟で、相手方は、当初の実況見分結果が正しく、工学鑑定の結果は信用できないとして争ってきましたが、最終的に、裁判官からは、過失割合を5割程度にまで修正させることとした内容での話し合いによる解決案が提案されました。
双方ともにこの解決案を受け入れることとなったため、裁判上の和解が成立し、解決しました。
工学鑑定の課題
今回は、大きな結果が得られたことからとても喜ばしい解決を迎えることができましたが、実際には、そう簡単には工学鑑定を利用できない事情があります。
一つは、費用が高額であることです。
通常、工学鑑定は、鑑定に向く案件かどうかの確認だけで低くても数万円要しますし、実際に鑑定を依頼するとなれば数十万円という単位となります。
さらに、一度の鑑定書の作成だけで済むようであればよいですが、訴訟が進行すれば、相手方から鑑定書に細かく反論がなされることも想定されますので、再鑑定の依頼なども必要なる可能性があります。そうなれば当然、追加費用がかかります。
弁護士費用保険が使えるケースであれば、この鑑定費用もカバーされる可能性があります。しかし、弁護士費用保険は通常、弁護士費用を含めての保険金の上限が300万円ですので、弁護士費用保険があったとしても、弁護士費用も含めたすべての費用が保険でカバーできるとは限らないことになります。
二つ目は、根拠となる資料が不足してしまう可能性があることです。
工学鑑定も鑑定ですので、当然、合理的な根拠が必要です。工学鑑定の場合、損傷状況などの客観的な情報から、衝撃の程度や速度を推定して計算することで、鑑定結果が合理的であると判断されるものです。よって、根拠となる資料が十分でなければ、説得力のある鑑定結果とはなりません。
車両の損傷状況が確認できる資料が残されていない、写真は残っていても細かい計測がなされてないなど、様々な理由により、鑑定の根拠となる資料が不足してしまうことがあるのです。
有効に利用できる場合もあります
とはいえ、今回の案件のように、警察の捜査結果だけでは不利に思えた事案が、工学鑑定によって少しでも有利になることもあります。
条件さえ整えば、工学鑑定が有効に利用できる場合があるということは、ぜひ知っておいていただければと思います。