「証明されていない」 ~言葉のトリック~
以前も世論調査についての疑問を書いたことがありますが、他にも以前からずっと感じ続けている疑問が一つあるので、書いておきたいと思います。
景気対策と雇用対策は同じ?
世論調査の質問の中に、よく「もっとも重視する争点は何ですか?」という質問があります。
その選択肢として、「景気・雇用対策」という項目がほぼ必ず挙げられていると思います。
みなさんは、この「景気・雇用対策」に、あまり違和感がないでしょうか。
私は、違和感どころか「おかしな選択肢」としか思えません。
景気対策と雇用対策は別物
「景気・雇用対策」という項目が選択肢として成り立つためには、「景気対策をすれば雇用対策になる」ことが条件となるはずです。
しかし、今の日本で、景気さえ良くなれば雇用が充実すると、本当にいえるでしょうか?
ここ数年、株価はずいぶん上昇したように思います。
最近は円安の影響を受けて利益が増えた企業も少なからずいるように聞いています。
超大手企業に限っていえば、賃金アップも実現する方向のようです。
ところが、中小企業や、大都市から離れた地方では、景気がよいという話や、労働者の暮らしがよくなったという声はあまり聞きません。
生活保護の件数も決して減っていませんし、職は失わずに済んだとしても非正規雇用の低い賃金で最低ぎりぎり生活を余儀なくされている人も数多くいます。
つまり、大手企業の業績アップや株価上昇といった、日本社会全体の数字でいえば景気がよくなっているような数字があったとしても、それだけでは必ずしも雇用対策となっていないということです。
昔の日本では、終身雇用制度と正規雇用が原則であったことにより、企業が業績を伸ばせばその分賃金が上昇する可能性が高く、「景気」と「雇用」が連動していた面が大きかったのではないかと思います。
しかし、非正規雇用が常態化してしまった現在の日本は、そうした状況にはありません。
世論の誘導?
にもかかわらず「景気・雇用対策」という言葉を並べるのは、世論調査の選択肢として不適切なのではないでしょうか。
「雇用対策」を求めてこの項目を選択しようと思ったのに、大企業の利益のための景気対策ばかり行われてしまうことの理由に使われてしまうことにつながりかねません。
ほとんどのマスコミが未だにこの「景気・雇用対策」という選択肢を使っていると思いますが、ぜひ、直ちに「景気対策」と「雇用対策」を分離して、世論調査を行ってほしいと思います。