遺言に書くべき内容
相続にまつわる大きな落とし穴が、実は戸籍の手続にあるというケースをご紹介します。
預金が解約できない?
ある女性が亡くなりました。
お子さんは3名います。
ご主人は既に亡くなっていました。
家族の仲は決して悪いわけではなく、普通に交流ができていました。
お子さんたちは、3人でお母さんの遺産を均等に分ければよいと考えていました。
そして、長男にあたる方が代表して預金の解約などをしようとしたところ・・・何と、預金の解約を拒否されてしまったのです。
再婚と養子縁組
なぜこのようなことが起きてしまったか。
実は、このご主人はこの女性と再婚していて、上の2人の子どもは、ご主人と前妻との間の子どもだったのです。
そして、この女性と上の2人の子どもは、再婚の際に養子縁組をしていなかったのです。
再婚後、この女性と上の2人の子どもの関係が実の母子関係のように良好であったため、わざわざ養子縁組なんてする必要はないと考えたのかもしれません。
ですが、法律的には、再婚をしたというだけでは、再婚相手と連れ子との間には、親子関係は成立しません。
親子関係を成立させるには、養子縁組をしなければならないのです。
よって、先のケースでいえば、養子縁組をしないままでは、上の2人の子は、この女性から相続することはできないのです。
気付くことが難しい場合
さらに油断をしてしまう可能性があるのは、ご主人が先に亡くなっていることです。
ご主人は子どもたち3人の実の父親ですから、ご主人の相続のときには、子どもたち全員が相続人となります。
ですから、この時点で「お母さんのときもきっとそうなるはずだ」という勘違いをしやすいわけです。
話し合えば済むのか?
このケースの場合、この女性の相続人は一番下の子どもだけになります。
では、「仲が良いのであれば話し合いで3人で分ければいいのではないか」というと、なかなかそうもいきません。
それは贈与税がかかるからです。
このケースでも、養子縁組がきちんとなされていれば、相続税の計算で済みます。
ですが、養子縁組されていない以上、上の2人は相続人ではありませんから、一番下の子どもから上の2人に財産を分配すると、それは贈与に該当してしまうのです。
贈与税は相続税に比べてかなり税率が高いですから、このような分配をするとなると、かなり損をした気持ちになってしまう可能性があります。
実はこのケースは、私が作成したフィクションなので、実際にこうなったという結末はありません。
ですが、このような形になると、これできょうだいの仲が完全に決裂してしまうまでには至らないとしても、何となくギクシャクしてしまうことになりかねない・・・。
似たような話は、現実にいつ起きても不思議ではありません。
相続というと死亡したときの問題であると考えがちですが、実はこんなちょっとした戸籍の手続からも影響してしまうことがあるのです。