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「平均」のトリック

2014年12月15日 公開 / 2017年5月12日更新

テーマ:近況・雑感

コラムカテゴリ:法律関連

 「平均」という言葉は、よく使われると思います。
 この言葉自体が、何か問題があるわけではありません。
 ですが、気をつけていないと、思わぬ誤解をしてしまうことがあります。

平均=多数ではない

 私が憲法の授業のために高校に行ったとき、高校生からは必ずといっていいほど「弁護士さんの年収は?」と尋ねられます。
 正直には答えませんが(笑)、平均より多くないという言い方をします。
 このとき、私は「平均という言葉に騙されないようにしてください」という説明を必ずします。

 平均が一番イメージしやすいのは、学校のテストの点数ではないかと思います。
 例えば、100点満点のテストを行い、平均点が70点だったというとき、ほとんどの場合、点数分布で一番人数が多いのは平均点付近となると思います。

 よって、グラフで表すと、平均点付近に頂点が来るような山が出来上がります。
 この場合、平均値と多数分布が一致するので、「だいたい真ん中はこのへんだな」という感覚と合致することになります。

もし一人でも超高額年収がいたら?

 しかし、弁護士の収入は違います。
 それは、収入額に上限がないからです。

 弁護士の平均年収は、はっきりした統計数値は指摘しにくいのですが、概ね600万円~1200万円くらい、最新の統計では1100万円くらいと指摘されているものがあるようです。

 ですが、その分布を見ると、500万円~1000万円の間が一番多く、次が1000万円~1500万円、その次は100万円~500万円となっています。
 つまり、人数分布が一番多いグラフの山の頂点よりも金額が高い方に平均があるのです。

 これは、年収が5000万円や1億円、さらにそれ以上の超高額収入の弁護士がいることで、平均額が釣り上げられているからなのです。

 平均1100万円と聞けば、やはり弁護士は収入のよい職業と思われると思います。
 ですが、この数字は、上記のように年収1億円といったごく一部の高額収入の弁護士が押し上げているだけです。
 弁護士全体を見渡せば、年収1000万円未満がかなりの数存在していますから、弁護士はそこまで特別な存在とはいえないというのが実態なのです。

 このように、「平均」が意味するものは、必ずしも多数分布ということではありません。
 「平均」という言葉、よく注意して見聞きするようにしてください。

この記事を書いたプロ

川島英雄

交通事故・医療事故の被害者を守る法律のプロ

川島英雄(札幌おおぞら法律事務所)

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