客観的な証拠の重要性
以前にも、広報とコミュニケーションの関係や、詐欺と悪徳商法のことなどについては、コラムで書きました。
今回は、「実は広報と詐欺は紙一重である」ということを述べたいと思います。
人に影響を与えようとする工夫
広報や広告、アピールというものは、基本的に「自分の言いたい事や売り込みたいものを少しでも多くの人に伝達する」ことを目的としています。
ただ、「伝達する」といっても、ただ言葉が届けばそれでよいわけではありません。
伝えた上で、自分の言いたいことをきちんと理解してもらったり、売り込みたい商品の良さをきちんと知ってもらったりという結果まで求めたいと考えるのが普通です。
この「結果」を重視する気持ちが強くなると、伝え方をどんどん工夫するようになります。
わかりやすい伝え方、目につきやすい広告のデザイン、キャッチコピーの工夫といった形で、様々な工夫が考えられます。
こうして、「わかりやすい伝え方」が進んでくれれば、情報を受け取る人にとってもメリットは大きいと思います。
結果さえ出ればよい?
しかし、さらに結果を重視する気持ちが強くなると、「結果さえ出ればよい」という方向に向いてしまう可能性は否定できません。
こうなると、実は元の「自分の言いたい事や売り込みたいもの」の本当の姿を離れてしまい、「最終的に結果さえ出れば、相手には正確に伝わらなくてもよい」という、一体そもそもの目的は何だったのかという状態になってしまいます。
これが、広報から、誇大広告や不当表示へと進んだあたりの段階です。
実態がなくなればそれは詐欺
さらに進めば、「結果を出す方法がわかったから、そういう伝達方法で結果さえ出れば、そもそも中身なんていらない」ということになります。
ここまで来ればもう、中身がないのですから、その伝達方法は、詐欺であり、悪徳商法の不実告知です。
詐欺も広報も相手に伝える点では共通
このように、一生懸命相手に伝えたいという純粋な思いと、詐欺や悪徳商法というのは、「相手にいかにして伝えるか」という点では、実は根っこは同じなのです。
情報を発信する人間が善良な人間であると信じられれば、本来「相手にいかにして伝えるか」というのは、正しい広報戦略でしかないはずです。
ですが、現実はそうではありません。
人間には欲がありますから、どうしても悪いことをする人間というのは存在し続けてしまうのです。
騙されないようにするために
そう考えると、みなさんが自分の身を守るためには、単に詐欺や悪徳商法に注意していればよいということにはなりません。
詐欺や悪徳商法はお金の問題ですが、お金に限らず、自分の意見を貫こうとして言葉巧みな話し方をしたり、世論をうまく誘導しようとしたりするなど、お金以外の面で騙したりごまかしたりしようとしてくる人も、当然ながら世の中にはいるわけです。
ですから、こうしたお金以外の面でも、みなさんは、自己防衛のために、相手の伝え方に十分注意するべきなのです。
このコラムを見たみなさんは、普段の生活の中で騙されて損をすることのないよう、物事の本質を見るよう心がけてください。
相手のわかりやすい言い回し、企業や政治家、有名人などの妙に聞こえの良いうたい文句など、なんとなくいいことを話しているように聞こえるものほど、十分注意していただければと思います。