成年後見は「うちには必要ない」という感覚
成年後見制度については、以前、紛争予防のためにも積極的に利用することを考えてほしい、ということを書きました。
また別の機会に詳しく書こうと思いますが、成年後見制度の大きな柱は「財産管理」と「身上監護」です。
財産管理は、判断能力が低下した方の代わりに財産をきちんと管理することです。
身上監護は、その人の意思をなるべく尊重して適切な介護その他の生活環境を整備することです。
前回に書いたとおり、現時点で何も揉めてもおらず、家族がしっかりと財産を管理してあげていて、適切な介護をしているというケースでは、その時点では確かに後見制度を利用するメリットはないといえるかもしれません。
しかし、将来の紛争予防という、今だけの利益だけではなく将来の利益まで考えた場合には、話は変わってくると思います。
要は、将来の利益というところにまで考えを張りめぐらせることができるのか、ということです。
個人の顧問弁護士
もう一つ、実は、成年後見制度を利用する大きなメリットがあります。
ただしこれは、弁護士などの職業後見人を選んでもらった場合に限ります。
それは、個人的に顧問弁護士などを雇っているようなものだということです。
先に述べたとおり、成年後見制度の大きな柱は「財産管理」と「身上監護」です。
後見人は、本人のために、適切な財産管理をしなければなりませんし、生活環境の整備をしなければなりません。
そのためには、本人の意思を確認しつつ、これまでの生活環境を調査し、現在の病状や要介護度などを把握し、本人にとって最もふさわしい生活環境を選択して、必要な介護サービスや施設などとの契約もしなければなりません。
本人の収入や資産をきちんと確認し、これを踏まえて適正な支出額を算出し、財産的な損失を出さないよう配慮しなければなりません。
このように、身上監護について配慮しつつ、財産的損失を出さないよう、また、本人に対する法律的な不利益も生じさせないように対応していくためには、弁護士などの専門家に委ねた方が、合理的であることはいうまでもありません。
つまり、こうした様々な知識が要求され、また適切な判断が要求される業務を、対価を支払って対応してもらえると考えれば、個人的に顧問弁護士を雇っているようなものだと考えるのがもっともわかりやすいのではないかと思います。
裁判所で選任される後見人の場合、裁判所が後見人の報酬額を定めることになっています。
裁判所は報酬の基準を公表していませんが、臨時の特別な対応は別として、概ね1か月当たり2~3万円くらいではないかといわれています。
ですから、月2~3万円で個人的な顧問弁護士を雇って、きちんとした財産管理と身上監護を依頼していると考えれば、それほど割高ではないと考えられるのではないかと思います。
こうした点も、成年後見制度の利用にあたって考えてみていただければと思います。