「減少症」という用語にとらわれないことが大切です
交通事故の後遺障害として、高次脳機能障害であると指摘されることがあります。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳の損傷により、知覚、記憶、言語、学習、思考、判断などの認知機能に生じる障害のことをいいます。
障害の程度や症状の出現の仕方は、人によってかなり差があるといわれています。
単純な記憶力低下や言語障害というだけでなく、複雑な思考過程を必要とする機能が低下したり、あるいは心理的な面で衝動が抑えにくくなったりすることもあるようです。
ちなみに、高次脳機能障害は、交通事故のときだけに起こるものではありません。転倒事故などで頭を打った場合や、脳外科の手術の際のミスなど医療事故で起こることもありえます。
高次脳機能障害の診断基準
高次脳機能障害か否かを判断する基準としては、医学的には、おおよそ次のような診断基準が示されています。
1 脳の病変の原因となる受傷や疾病の事実
2 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である
3 MRI、CTなどの画像あるいは診断書により認知障害の原因と考えられる脳の病変の存在が確認されている
交通事故の場合には、上記診断基準を参考に、次のような基準が求められることが多いです。
1 頭部画像上の脳の外傷所見
2 受傷直後の意識障害
3 認知障害を疑わせる一定の症状や傾向
基準に満たない障害もある
もっとも、これらに合致しなければ一切認められないかといえば、そんなことはありません。
特に画像所見については、脳の外傷がびまん性軸索損傷である場合など、画像上出血や損傷が明確に検出されるとは限らない場合があるからです。
よって、特に明確な画像所見が出ていないからといって、直ちに諦めてしまう必要はありません。
とはいえ、上記のうち2と3に該当しないとなると、なかなか厳しいものがあります。
医師ではない一般人にとっては、2と3の基準の方が分かりやすいと思います。
まずは、頭部外傷を伴う事故であったかどうか、受傷直後に意識障害があったかどうか、そして現在何らかの認知障害を疑わせるような一定の症状や傾向が出ているかどうかについて、おかしいなと思うところがあれば、高次脳機能障害を疑ってみて欲しいと思います。
そして、弁護士に、早めに相談してみてください。できれば、より交通事故に詳しい弁護士、より医学的な知識が豊富な弁護士に相談するのが好ましいと思います。