弁護士による成年後見人は顧問弁護士のようなもの
成年後見制度は、判断能力の低下した方の財産管理や身上監護を法定の代理人が行うという、ご本人のためにとても有用な制度です。
また、ご本人だけでなく、その家族にとっても、あとで「使い込みをした」とか「財産隠しをした」などという不当な言いがかりをつけられないために、とても役に立つ制度だと思います。
ですが、現在の日本では、後見人をつけた方がよいと思われるような方であっても、実際に後見開始の審判を受けている方の数はとても少ないと思います。なぜでしょうか。
後見制度が利用されない理由
実は、その理由は皆さんが一番わかっているのではないでしょうか。
実際に誰かと揉めているような状況でなければ、わざわざ裁判所に申立をしたいと思う人はあまりいないと思います。
裁判所に申し立てるということは、何か紛争があるのではないかと周りに思われるかもしれないからです。
また、裁判所に申し立てれば、当然費用がかかります。現在の裁判所の運用では、後見開始の決定にあたり医師への鑑定を求めることが多いと思いますので、最低でも数万円の費用がかかることになります。
こうして、「うちは平和だからわざわざ裁判所の世話にならなくても家族がきちんと管理できる」と考え、後見制度の利用は「うちには必要ない」と考える方が多いわけです。
紛争予防のため
こうした考え方は、現時点で紛争が生じていない場合には、確かにそうともいえるかもしれません。
ですが、将来の紛争予防という観点からは、全くお勧めできません。
後見人は裁判所への報告義務があるため、適切な財産管理とその管理状況の報告をしなければなりません。
しかしこのことによって、先に述べたとおりあとで「使い込みをした」とか「財産隠しをした」などという不当な言いがかりをつけられることを予防することにつながります。
もし後見人として選任されていなければ、きちんとした財産管理をしていたとしても使い込みなどを疑われて、身の潔白を証明するために自身で相当な労力を費やさなければならなくなるかもしれないわけです。
今必要ないからいらないと判断してしまうのか、それとも将来の紛争予防まで考えるのか、よく考えて判断していただきたいと思います。